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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 春が終わり、夏が来る。

 小国家群の併合は進み、幾つかの国は秘密結社スコルが用意した品種の作付けと指導が間に合った。

 併合が遅れた国は肥料を配布するのみとなるけれども、それでも秋の実りは幾らか増える筈。

 尤も秘密結社スコルが用意した品種の作付けが間にあった地域に比べると、収穫量と品質の差は大きいだろうから、無駄に併合を引き延ばした国の上層部は酷く恨まれるだろう。

 まぁでもそれは僕の知った事ではない。


 だが一口に小国家群と言っても実に特色豊かで、画一的な対応で併合が進められなくて実に面倒臭かった。

 例えば鍛冶の国。

 この国は小国家群にある山地の国だが、その地の住人の七割はドワーフの奴隷だ。


 これまで獣人やエルフの奴隷は見たけれど、ドワーフの奴隷を全く見掛けなかったのは、グランドリア大陸中央部のドワーフは殆どがこの鍛冶の国に集まっていたかららしい。

 そして幸いと言うべきか、クソ面倒臭いと言うべきか、この地のドワーフ達は奴隷であっても、他の亜人達の様に殊更に虐げられて居る訳じゃなかった。

 何故なら彼等は食事と酒、それから鍛冶仕事さえ出来れば他の事には興味を持たず、黙って金属を打ち続けるから。

 ドワーフ達は自分達の作った金属製品が、一体幾らで取引されているかにすら、興味はなかった。

 黙って作り、良い物が出来れば仲間内に自慢するだけで満足する。


 故に人間達は何も言わずとも富を生み出すドワーフを、それなりに丁重に管理したのだろう。

 つまりドワーフ達にとって奴隷からの解放は、余計なお世話になる可能性が高いのだ。

 何せ搾取さえ気にしなければ食事と酒を運んで来て鍛冶仕事に専念させてくれていたのに、下手に自立すれば製品を売って金に換え、それで食事や酒を手に入れると言う手間がかかる様になる。


 お互いに幸せなら正直放って置きたい気もするが、ミルクトセイラ国では奴隷の所持は違法になった。

 だから鍛冶の国を併合するなら、ドワーフの奴隷の存在も決して認められる物じゃない。

 ドワーフ達には、僕等の都合で解放されてもらわなければ困るのだ。

 個人的には、ドワーフ達は一旦国で保護し、国家公認鍛冶師と言う資格を設け、国で雇う形にするしかないと思ってる。



 また同じ種族ばかりが固まって暮らしているのも、あまり好ましい事じゃない。

 トラブルを避けると言う意味では、寧ろそうやって一ヵ所に纏めた方が管理は楽だし、人間と亜人の衝突も少なくなるだろう。

 けれども亜人同士の付き合いで生活が完結する環境を作ってしまえば、融和の難易度は極端に上がる。

 同じ種族ばかりが固まる亜人街の存在を許せば、やがてはそれを種族が治める自治都市にしようとする動きも出て来てしまう。


 困難に当たった時、自分と同じ種族に頼るのは自然の流れだ。

 人は一人で生きられないが、隣人とするなら分かり合い易い者が良い。

 つまり同じ種族で集まり、亜人街を作ると言うのは、ごく自然な事である。


 それを否定する気はないのだけれど、そうやって近しい者達同士で固まれば、相手を知らぬままに敵対、迫害の流れは必ず生まれるだろう。

 この世界の神が去った後、種族同士で争いが起きた様に、僕等が無理矢理押さえつける事を止めれば、似た争いは再び起きる。

 人間も亜人も変わらず、人とは愚かな、互いに分かり合えない生き物だから。

 故に近くで生活させ、理解出来ずとも互いを知った気にして、納得させる事が重要なのだ。



 ……とまぁ、たった一国を例に挙げても、こんなにクソ面倒臭い。

 そして今日、僕が征服の為に直接訪れる事にしたのは、魔術都市ルナルド。

 小国家群の国々が、ミルクトセイラ国やルードリム聖教国、フォウン帝国に魔術技術で後れを取らぬ様、資金を出し合って運営してる中立の自治都市だ。

 何でも大国が所有する魔術研究機関、魔術師育成機関とは違い、国家の意思に左右され難い分、広い分野の魔術技術を保有するんだとか。


 人間の魔術への適性は、神代以降、少しずつ低下し続けてると言われるが、それでも魔術は大きな力だ。

 本来ならば魔術都市ルナルドはミルクトセイラ国が小国家群を併合した後、解体して魔術技術を吸い上げる予定だったと言う。

 だがその流れに待ったを掛けたのが、我が秘密結社スコルが誇る技術者、アキだった。

 どうやら魔術都市ルナルドには、彼女の欲する技術が存在してる可能性があるらしい。


 その情報は、この世界で秘密結社スコルに加わり金森博士の助手となったエルフ、ラキラから齎された物。

 彼女が奴隷として娼婦をしていた時に取った客の一人が魔術師で、興が乗ったのか自慢げに色々と語った話が、その情報の出所だと言う。

 ラキラにその手の知識がなければ、魔術師の話も意味不明な自慢話だと聞き流してお終いだったのだろうが、幸いな事に彼女は仲間のエルフからも賢者と呼ばれる程の知恵者だった。


 とは言え寝物語が情報の出所とはいまいち信憑性に欠けるが、アキが魔術都市ルナルドでの技術探しに乗り気になってしまったのだから仕方ない。

 技術者であるアキは、秘密結社スコルにとって欠かす事の出来ない人材だ。

 彼女とて自衛の手段は色々と用意しているけれども、魔術の使い手が多いこの魔術都市ルナルドでは予測できない万一が起こりえると判断し、それなら僕が護衛するのが一番確実だと思って付いて来た。

 すると今度は僕の護衛として複数の怪人が付けられる事になったので、……それならもういっそ力尽くで都市の防衛戦力を蹴散らして支配下に置いてしまう事に決める。


 そもそも複数の国々が資金を出して成り立つ魔術都市ルナルドは、その出資国のどれもが完全に決定権を握る訳じゃないから、併合する為の交渉相手が分散していてややこしいのだ。

 その一つ一つと話し合う位なら、力尽くで征服、実効支配した方が圧倒的に早いだろう。



 そんな僕の短絡的な判断により、魔術都市ルナルドはアキの率いる機械型の怪人、機人部隊に襲撃を受けてる。

「撃て~」

 どこか楽し気なアキの言葉に応じる様に、機人達は銃の引き金を引く。

 とは言え、発射される銃弾はゴム弾だったり、テイザー銃の電極だ。


 この魔術都市ルナルドの防衛戦力は魔術師達であり、つまりは彼等自身が技術の保持者だった。

 どちらかと言えば征服よりも技術探しが主目的なのだから、うっかり技術の保持者を殺してしまっては意味がないだろう。

 技術が本の形に纏められているのか、それとも誰かの頭の中にしか存在していないかも不明である。

 犠牲者は、皆無で征服を済ませたい。


「ぎぃやっ!?」

「ガッ」

 ゴム弾を喰らって痛みにのたうち回る者、テイザー銃の電撃に倒れ伏す者、どちらにしても戦闘の意思は圧し折れて行く。

 アキはそんな彼等に両手を合わせて軽く頭を下げながらも、やっぱりどこか楽しそうで、そう、機嫌が良かった。


「随分と機嫌が良いけれど、そんなに欲しい物があったの? それとも機人の活躍が嬉しい?」

 ふと気になって、僕はアキに問う。

 熱心に研究しているであろう魔術師達には悪いけれども、既に高度な技術を保持してるアキの足しになる様な何かが、この場所にあるとはどうしても考え難かったから。


「えっ、うーん。確かに欲しい物はあるんだけれど、アタシの機嫌が良いとしたら、ノア様とのお出かけなんて滅多に出来ないからだよ。わざわざノア様が護衛をするって付いて来てくれるなんて、思ってなかったしね」

 そう言って、アキは笑みを浮かべる。

 うん、まぁ確かに、彼女と出掛ける事なんて滅多にない事だ。

 秘密結社スコルの力の源と言って良い金森博士とアキは、基地の外をあまり自由に出歩かない。

 それは基地の外に出るのが面倒だからって訳じゃなく、彼等が自重してくれているからだろう。


 その反面、僕はかなり自由にあちらこちらを、ミルクトセイラ国の民衆を掌握する為とは言え飛び回ってる。

 流石に少し、罪悪感も湧く。

「じゃあ今度は、一緒に村を回ってみる? 多分あんまり面白い物はないけれど、気晴らしにはなるかも知れないし」

 遠くから放たれた炎の玉を手を振って払い落し、僕はアキを遠出に誘った。

 ミルクトセイラ国の町や村には、まだあまり見て楽しい物はないけれど、少なくともこんな風に攻め込むよりも穏やかな時間が過ごせるだろう。


「あっ、嬉しい。でもここで目的の物が見つかったら、研究に掛かり切りになると思うし、悩むぅ」

 するとアキは、腕を組んで唸り出す。

 どうやら彼女には、本当にこの場所で欲しい物があるらしい。


 暫く悩んだアキだったが、機人部隊が周囲の防衛戦力を完全に沈黙させる頃には顔を上げ、

「じゃあアタシがここで、金属を軽量化する技術を見付けて、それから研究して飛行石を完成させたら、どこか連れてって、……欲しいです」

 何故か躊躇う様にそう言った。

 しかしそれにしても、飛行石か。

 飛行石の作成はゲームである秘密基地をつくろうでも取得出来る技術の一つだったけれど、僕は、と言うか大半のプレイヤーは無駄だと判断して切り捨てる類の物だ。


 でもアキは飛行石の研究がしたかったらしく、少しずつ空いた時間で自分なりに研究をしていたんだとか。

 ……成る程。

 僕はわかった気になっていたけれど、彼女の事を知らなかったんだなと、そう思う。

 そして多分それは、金森博士やカラミティ・クィーン、他の怪人達に対してもそうなのだ。


「良いよ。僕が行ける範囲なら、どこにでも連れてってあげる。……じゃあ彼等も待たせているし、そろそろ制圧しちゃおうか」

 嬉しそうに笑うアキと一緒に歩きながら、僕は設営されたバリケードを念動力で叩き潰して、機人部隊を突入させる。




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