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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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「え、何、冒険者? ……へぇ、そんなのこの世界に居たんだね」

 まだまだ寒さが続く冬のある日、僕は報告に来たカラミティ・クィーンの口から出た如何にもと言った単語に、思わず笑いを溢してしまう。

 カラミティ・クィーンはそんな僕の反応にも気を悪くした様子はなく、真面目な顔で頷く。


「はい、ミルクトセイラ国の様に力のある国にはあまり関係はありませんが、小国家群の国々の様に国力の低い小国では、魔物に対策する兵力が足りず、民間で組織された自警団や冒険者を雇って対処する事が多いそうです」

 ははぁ、成る程。

 彼女の言葉に、僕は納得する。

 要するに維持にコストがかかる正規雇用の兵士よりも、一時的な報酬のみで安くで済ませられる派遣の戦力が冒険者と言う訳か。


 実にこう、世知辛い話だった。

 異世界と言えば冒険者で、冒険者はもっとこう、ロマンに溢れる職業だと思っていたのだけれども。


「つまり国力のあるミルクトセイラ国に併合されると、冒険者の仕事がなくなるって、そのパラストゥーリア?って小国が併合に反対してるんだね」

 そのパラストゥーリアと言う国は、冒険者の国とも呼ばれる位に冒険者の立場が強く、また数も多いらしい。

 何でも小国家群中に冒険者を派遣する組織、冒険者組合の本部があるのも、そのパラストゥーリアと言う国なんだとか。


 成る程、これは少しばかり面倒臭くなりそうな話だった。

 前回の戦争にもパラストゥーリアは中立の立場を守って、ミルクトセイラ国を攻める兵は出さなかったらしい。

 故に攻めて来て敗北した他の国々と違って、併合される筋合いはないと言われれば確かにそうだ。

 でも冒険者達の働きが小国家群の治安を維持し、その結果として他の小国が戦争に回す兵力を抽出したのだが、その辺りは一体どう考えるんだろう?


 この問題を解決する最も簡単な手段は、パラストゥーリアのみを無視して他の小国家を併合してしまう事。

 他の小国がミルクトセイラ国の一部となってしまえば、正規雇用の兵士が魔物を倒す為、冒険者を雇う必要はなくなる。

 そうなると大量の冒険者を抱えるパラストゥーリアと冒険者組合は、自国の冒険者に仕事を与える事が出来ずに干上がるだろう。


 ただ兵糧攻めは時間が掛かるし、僕に冒険者を虐めて遊ぼうと言う意図はない。

 やっぱり異世界と言えば冒険者だし、安易に潰してしまうのも惜しく感じるのだ。 

「一応聞くけれども、冒険者を兵士として雇用しますよ。……じゃ駄目なんだね?」

 僕の問い掛けに、カラミティ・クィーンは頷く。

 彼女もこの問題に関しては、少し面倒に思っているのだろう。

「冒険者は確かに単なる人間としては能力が高い人材が多いのですが、その反面協調性に欠け、また冒険者として生きるより他になかった訳アリの者も多いのです」

 少し困った顔でそう言った。


 つまり安易に干上がらせると、治安を脅かす盗賊に成り代わる可能性も高いと言う事だ。

 実に困った連中である。

 単なる盗賊になった場合は何の憂いもなく殲滅して終わりだが、略奪対象を選別し、得た利を周囲に還元して義賊っぽく振る舞われると厄介な事になるだろう。

 小国家群内での地の利は冒険者にあるし、フットワークも軽いから捕縛が難しい。


 だから仮に潰すならパラストゥーリア国や冒険者組合と言う頭があって纏まっている今だし、潰さないのなら骨を折って甘やかして受け入れるしかなかった。

 中途半端な対応が一番恨みを後に残す。


「……要するに、併合されても冒険者の仕事がなくならず、寧ろ併合される事でメリットが出る様にすれば、良いんだね?」

 暫く悩んだ後、僕が出した結論は懐柔。

 大きな、大きな飴玉を一つ用意しよう。


 この先、僕等が段階的に技術を流布すれば、物の流れは著しく激しくなって行く。

 すると当然ながら、街道を行き来する商人の数も倍増どころでなく増加する。

 これはもう確定路線だ。

 しかし街道利用者が多くなれば、それを狙う賊や魔物も増えるだろう。

 これまでミルクトセイラ国では、街道の治安は領主が兵士を巡回させる事で維持して来た。

 尤も以前は手抜きをしていた領主も居たが、今はもう居ない。


 だが小国家群を併合して国土が倍近くにも広がれば、兵士の巡回だけでは間に合わない場合も増える筈。

 故に商人達には護衛として冒険者を雇わせ、その分だけ関の税を減じよう。

 これなら冒険者の活躍の場も大きく広がり、場合によっては兵士が間に合わない時の魔物退治を依頼される事もあるかも知れない。


 けれどもこの方法にも穴はあった。

 例えば商人が、荷運びや御者を冒険者として登録させ、関の税を減らそうとする等、僕の意図と違った使い方をする輩は必ず現れる。

 だからこの案を正しく運用するには、冒険者組合の協力は必須だろう。


「そう言う訳で、大切なのは最初に冒険者組合の首根っこを抑えて、僕等に逆らえない様にする事だ」

 僕がそう言えば、カラミティ・クィーンは全てを察してくれる。

 そう、つまりは、

「ではすぐに動ける怪人を集めます。今回は案内役として、私も同行させて戴きたいのですが、構わないでしょうか?」

 今から冒険者組合に強襲を掛けよう。

 勿論彼女の同行は歓迎だ。


 冒険者達をなぎ倒し、冒険者組合の本部を半壊させて、それから彼等の口に手土産の飴玉を放り込む。

 それで僕等と彼等はとても仲良しになれるだろう。


 頷く僕にカラミティ・クィーンは笑みを浮かべて、胸に手を当て一礼する。




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