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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 およそ千五百年前、この世界から神々が姿を消した。

 所謂神代の終わりだ。

 それまで神の下に秩序を保っていたそれぞれの種族は、纏まりの要を失った事で時に争う様になってしまう。


 そして一千年前、この世界に聖神教は誕生する。

 その目的は、人間種族の救済。

 身体能力で獣人に劣り、魔術の扱いでエルフに劣る人間は、その最大の強みである数の多さを、内輪揉めによって活かす事が出来ていなかった。

 故に聖神教は人間が意思を統一し、他種族に対して優位に立つ為に生み出された宗教なのだ。


 だが人間にばかり都合よく神の存在と言葉を解釈した聖神教は、他種族からは排斥され、同じ人間にも広くは受け入れられなかったらしい。

 一部の過激な思想の持ち主が信仰するカルト宗教として、裏の世界に潜んで力を蓄える聖神教。

 その状況に大きな変化があったのは、聖神教の誕生から二百年後、つまり八百年前。

 人間の国であったルードリム王国の国王、暴君と呼ばれ恐れられた男が、聖神教の人間に都合の良い教えを気に入り、信者となった事が切っ掛けだった。


 聖神教は公的権力の後ろ盾を得た状態を恒常的な物にしたいと思い、それを計画する。

 また自分の思い通りにならない世界に苛立ちを募らせていた暴君も、聖神教の計画を熱心に後押ししたそうだ。

 その計画こそが、居なくなってしまった神に代わる力ある存在を別の世界から招く事。


 勿論そんな荒唐無稽を現実とするには、莫大な力が必要だった。

 必要とされた力は魔力。

 この世界で魔術を行使する際に使用される、生物がその身に秘めたる力らしい。

 別の世界から力ある存在を招く為に、古代から伝わる秘法、才能はあれどまだ未熟な魔術師達が大量に消費されたと言う。

 そう、消費だ。

 桁外れの力を確保する為に、若い魔術師達は命ごと磨り潰して魔力に変えられた。


 聖神教の目的は人間種族の救済。

 これは二百年の不遇を経験しても尚、変わりはしなかった。

 暴君の目的はこの世界の変革。

 何もかもつまらぬこの世が、伝承のみに伝わる神代の様に変われば良いと、そんな風に考えた。


 もしもその招きにやって来たのが本当に神の如き存在だったなら、彼等はそれに満足しただろう。

 しかし呼び出されたのは神の如き力を身に秘めながらも、彼等と変わらぬ人だった。

 その事が、彼等の欲望に火を付けてしまう。

 如何なる力を持っていても同じ人であるならば、それを自分達が御せると、そう思ってしまったのだ。


 この世界に招かれてしまった者の名は、九重・結菜(ここのえ・ゆいな)

 またの名を、カリーナ。

 その名前は秘密基地をつくろうの古参プレイヤーで、何時の頃からか姿を消してしまった妖姫と仇名された有名人と同じ者だった。

 彼女の率いた組織、ナイトメア財団は悪の組織側のランキングでTOPを取った事もある。

 ……けれどもそんなカリーナも、ゲームを離れればその心は唯の女性で、騙され、弄ばれ、欲望に晒され、支配されて都合良く使われ、やがて心に魔を宿してしまう。


 カリーナの力を使い、勢力を拡大したルードリム王国と聖神教。

 しかし彼女が逃げだし、全ての人間に対して敵対を開始した事で、それに対抗出来る新たな異世界人を欲した。

 そして再びの大量消費と共に呼び出されたのが、筒路・壮士(つつじ・そうし)

 この世界での彼は壮士として行動したので、キャラクターネームは伝わっていない。

 聖神教はカリーナの扱いに関しての失敗から、壮士には女を宛がい、勇者として扱う事でコントロールを行った。


 その壮士に宛がわれた女が、光の杖に選ばれて魔法少女の力を得た、聖女だ。

 彼女は勇者との絆によって、光の杖に選ばれたらしい。

 実に皮肉な話だろう。

 聖女との間に絆があると思っていたのは、勇者の側だけなのだから。

 まぁシステム的な話をすれば、対象に資質とやらが存在すれば、ユニットとして選ぶのはプレイヤーである勇者なのだから、彼がどう思うかで全ては決まるのは当然なのだが。


 戦力的な話をすれば、壮士とカリーナでは多分比べ物にもならなかっただろう。

 カリーナだって秘密基地をつくろうで築いた全てをこの世界に持ち込んだ訳ではないだろうが、全てがカツカツだった壮士に比べれば恵まれていただろうし、そもそもこの世界での活動期間も長い。

 にも拘らずカリーナが壮士に懐まで攻め込まれたのは、同じ世界から来たプレイヤーを、しかも騙されているだけの彼を、殺したくなかったからだろう。


 けれども聖女に心を奪われ、聖神教を信じてしまった壮士にはカリーナの言葉は通じず、結局返り討ちとなる。

 だけど最後の瞬間まで言葉を重ね続けたカリーナも、壮士の剣に貫かれた。

 そんなカリーナに止めを刺したのが、その場に居た聖女だ。


 但し、恐らくその時まで聖女は知らなかったのだろう。

 魔法少女と言うユニットは、実は敵の殺害が行えない。

 だって魔法少女とは本来は少女がなる物だ。

 少女に何かを殺させるなんて、色々と問題がマッハでヤバイ。


 故に魔法少女が倒した相手は浄化されるか、封印されるかがセオリーだ。

 何かが生物に寄生して化け物になったのを浄化して元に戻し、寄生していた何かは封印するみたいな感じに。

 ごく一部、肉体言語にて語ったり、重火器をぶっ放したり、残虐無双する魔法少女も居るけれど、それはあくまで例外である。


 そもそもゲームである秘密基地をつくろうでは怪人を倒しても再生槽行きとなるだけなのであまり関係はなかったが、この世界ではその魔法少女の特性が如実に発揮されてしまう。

 そう、カリーナは殺される事なく、聖女によって封印されたのだ。


 ……その後、聖神教は魔王を封印した聖女の威光を以って、人間を纏め上げる。

 秘密を共有する共犯者であった暴君は密かに始末され、ルードリム王国はルードリム聖教国と名前を変えて聖神教の物となった。

 聖神教の指導者、聖王は代々口伝でこの秘密を八百年間、伝え残して来た。


 その理由は唯一つ。

 聖女の行った封印は永遠不変の物でなく、時を重ねるごとに脆く薄くなって行き、やがては切っ掛け一つで破れてしまうだろうから。

 その時に備えよと、聖王は秘密を後世に伝え続けた。


 尤も秘密を伝えてはいても、備えは大してしていなかったらしく、秘密結社スコルにあっさりと掌握されてしまったけれども。

 八百年の時は、人間から更に魔術の才を奪い、今では再び別の世界から力ある存在を招く事は、もう不可能だろう。



 そして恐らく、魔王を復活させるきっかけを握るのは僕だ。

 lv3となった司令室でシステムメニューを開けば、フレンドリストのほぼ全てが非ログイン状態として名前が薄暗くなっているのに、唯一つ一番上に、カリーナの名前が白く光ってる。

 そう、ゲームである秘密基地をつくろうでは、僕とカリーナは親交があった。

 どちらかと言えば古めの特撮作品の怪人が好みの僕に対し、彼女は顔の良い俳優が多く出て来る新しい作品を好むと言う違いはあったが、割と親しい関係にあったと思う。

 勿論本名は知らなかったし、相手は幾らか年上だろうから、一歩引いた付き合いではあったけれども、別れの言葉もなしにカリーナが消えてしまった時は少しだけ寂しくも感じた。


 この世界に僕とノアがやって来た原因が、偶然なのか彼女に呼ばれたからなのかは、わからない。

 でも僕等がここで成すべき事が、これだと言うのは納得が出来る。


 まだ、押さない。

 ゲームではTOPにすら君臨したカリーナに、今の僕は勝てるだけの準備が整っていないから。

 僕もノアも、彼女と戦う可能性を否定し切れなかった。

 故に心苦しく、申し訳ないけれど、後少しだけ時間が欲しい。


 その後なら、僕とカリーナが遊んだ秘密基地をつくろうが、彼女が居なくなって一年でどんな風になったのかを、きっと見せる事が出来るだろう。



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