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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 叫び声が聞こえる。

 湖上に並んだ多くの軍船、喫水の浅いガレー船の上で、鎧兜に身を固めた兵士が空を指差し叫ぶ。

「奴がまた来る!」

 ……と。

 でもそんな事はもうその船に、否、その場に居る誰もがわかってた。


 ソイツは竜。

 少しだけ人に近しい姿をした、竜だ。

 黒い鱗に身体が包まれ、大きな翼を持ったソイツは、足でマストを蹴り折り、口から灼熱のブレスを吐いては船を大火事にする。

 飛竜対策に積んで居たバリスタの矢を軽々と躱して飛来するソイツは、正に手の付けようがなかった。


 だが脅威は空の上だけでなく、湖の中にも。

 或いは後者の脅威の方が、ずっとずっと恐ろしい。

 何せ空より飛来する竜は、恐ろしい相手であると見てわかる。

 なのに水中の脅威は、水中に何かが存在する事はわかっても、気付けば船に大穴が開いて沈められてしまうのだ。


 最初は水底に大きな岩が複数あり、それに運悪くそれにぶつかってしまったのかとも考えた。

 だが案内役に雇った地元の船乗りが、こんな場所に船に大穴を開けてしまう様な岩場はないと断言する。

 そもそも岩にぶつかっただけにしては、破壊の痕跡があまりに大きい。


 敵だと断じ、その正体を見破る為に船団の前進を止めて待ち構え、チラリと見えた何かの影に幾本もの銛を撃ち込んだ。

 しかしその直後、やはり一隻の船が大穴を開けられ沈没を始めた。


 どうしようもない。

 あぁ、竜が来た。

 けれどもその前に、足場が衝撃に大きく揺れる。

 船に穴が開いたのだろう。

 竜に燃やされるまでもなく、この船は沈み行く。



 ……。



 突撃命令に地を駆けるは、騎士だけでなく馬までもが鉄の鎧で身を固めた、重装騎兵。

 そしてそれよりも先に、魔術師達が年月をかけて量産、蓄積し続けた石の巨像、ゴーレム部隊が突っ込んで居る。

 弓を物ともせぬ石の身体を持ち、されど死を恐れる心を持たないゴーレムを先行させて敵に圧力を加えた後、重装騎兵の突撃力で蹂躙して行く。

 ルードリム聖教国の誇る盾と槍を使った王道戦術だ。

 それが破られる事なんてあり得ない、……筈だった。


 なのに爆発と共に数体のゴーレムが粉々に吹き飛び、突撃した重装騎兵が穴だらけになって死に絶える。

 何が起きているのか、わからない。

 爆発は止む事なく、ゴーレムを瓦礫に変え続け、重装騎兵は逃走すら叶わずに全滅してしまった。


 魔術なんかじゃ、ないだろう。

 あんな爆発を起こす方法は魔術以外に存在しないが、あんなに無尽蔵に連続して魔術を放てる数の魔術師なんて、存在しえる筈がないから。

 常識が崩れる。

 判断が付かなかった。


 本当にあの爆発が無限に続くなら、逃げるより他にない。

 逃げれるかどうかもわからないが。

 しかし無限に続く攻撃なんて存在し得ない筈なのだ。

 もしかしたら次の瞬間にも敵の攻撃は止み、そのまま突撃すれば我が方が勝利を治めるかも知れなかった。

 だとしたら敵の攻撃の枯渇を待たずに逃げ出せば、無能の誹りは免れないだろう。

 敵の過小評価はいけないが、敵の過大評価もいけない。

 この状況で敵を過大評価して逃げ帰り、その報告を行えば、ミルクトセイラ国の軍隊は無敵だとの誤った認識が蔓延してしまう。


 そればかりは避けねばならない。

 勝てる筈だ。

 勝てるのだ。

 まだまだ兵力は万を遥かに越している。

 退けよう筈がなかった。


 ゴーレムを砕いて、兵を血肉の塊に変えながら、何かが物凄い勢いで駆けてくる。

 銀色の人型?

 鋼のゴーレムか?

 いや、あんなに早く、流麗に動くゴーレムは居ない。


 その銀色の人型は花びらでも千切るかの様な気安さで軍を真っ二つに切り裂いて、本陣に迫って、目の前に迫って回転する何かを振り上げて、切り裂いた。

 


 ……。



 報告用の映像を停止して、僕は大きく大きく溜息を吐く。

 思ったよりも、グロかった。

 主に最後の機人グラールの活躍が、グロかった。


 見る前は配下の活躍を楽しみにもしてたのだけれど、何と言うか、そう、戦争なんて楽しい物じゃないなって想いが強い。

 僕はやっぱり、ヒーローと戦う位の方が向いている。

 まぁこの世界にヒーローが来たら、それはそれで困るのだけれど。


 さてテンションは下がったが、それでも僕は配下の働きを評価しなければならない。

 ミルクトセイラ国と周辺国家の戦争は、僕等の予想を一歩たりともはみ出ずに、ミルクトセイラ国側が勝利を収める。

 勿論それは秘密結社スコルの力あってこそだが、ミルクトセイラ国の軍も自国を守ろうと奮戦していた。

 兵士や騎士が個別に立てた手柄には、ミルクトセイラ国からの恩賞が出るだろう。

 だから僕からは奮戦した全ての兵、送り出した民等に対して、……戦勝記念の派手なお祭りでもやろうか。

 食料にも大分と余裕はあるし、派手に消費するのも良いかも知れない。

 ついでにそれに併せて奴隷解放も進めれば、お祭り気分が多少は後押ししてくれる。


 配下の怪人の関しては、ホオジロ男と機人グラールの上級改修の決定だ。

 彼等は元の世界から連れて来た怪人でもあるし、それぞれの戦線で最も活躍していた。

 反対意見も出ないだろう。

 ブラックワイヴァーンや指揮官タイプの機人であるコガネも悪くない働きをしてくれたけど、ホオジロ男やグラールには一歩も二歩も劣る。

 同じ中級怪人であるのに生まれたこの差は、経験か、それとも手柄を立てる事への貪欲さか。


 さて置き、ホオジロ男と機人グラールを改修する為のポイントは、ルードリム聖教国の征服と大規模戦闘での勝利で合計百三十万程が手に入った。

 どうやら国の指導者に成り代わっての間接支配でも、征服したと見なされるらしい。


 全ては順調に進んでる。

 小国家群の併合も開始されるし、それがある程度進めば、やはりまた地域の征服完了のポイントが得られる筈だ。

 使い切れない程と言う訳ではないけれど、やはり征服完了のポイントは大きい。

 怪人の数を増やしても良いし、手に入れたルードリム聖教国の大聖堂の下にある基地を拡張しても良いし、新たな秘密基地を造るのも良いだろう。


 ……けれども全てが順調に進んでいるからこそ、そろそろ僕にとって何か重たい出来事が起きるかも知れない。

 そんな予感を、僕は覚えていた。



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