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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 秘密基地の中を、僕は迷う事なく歩く。

 保安設備はまだ生きていて侵入者である僕を迎撃しようとするが、戦闘員なら兎も角、大首領である僕はその程度では止められない。

 正義の味方側であったとしても、秘密基地であるならば勝手知ったる場所である。

 僕自身が直接と言う訳ではなくとも、怪人を送り込む事で何度も正義の味方側の秘密基地は攻略して来た。

 目的の施設の場所だって、何となくの察しは付くのだ。


 この秘密基地の規模は、実に小さい。

 造ったばかりの基地に、ほんの少し施設を追加した程度だ。

 恐らくこの基地の所有者だったプレイヤーは、ポイントにも資源にも困窮していたのだろう。

 そもそも正義の味方側のプレイヤーは、悪の組織と戦わなければポイントが非常に稼ぎ辛い。


 これはゲームの中でも公平性に欠けると言われていた問題で、悪の組織は世界征服が目的なので、国、つまりNPCに対して攻撃を仕掛けるだけでポイントが稼げる。

 しかし正義の味方側は、世界征服を阻止する事が目的だから、悪の組織、プレイヤーと戦ってポイントを稼ぐしかない。

 すると正義の味方側のプレイヤーは、悪の組織側のプレイヤーに対して、どうしても受け身にならざるを得なかった。


 一応ゲームの中では、野良のNPCの怪人が定期的にポップして暴れていたけれど、この世界にそんな都合の良いポイントの種は存在しなかっただろう。

 それにどうもこの基地の所有者は、秘密基地をつくろうのベテランプレイヤーと言う訳じゃなかったらしい。

 見た限り内装等のカスタマイズ要素は殆ど弄られていなかった。

 多分秘密基地をつくろうを始めて、一つ目か二つ目の支部を作成した辺りでこの世界に飛ばされたんじゃないだろうか。


 ……確か学校や魔法少女と言った要素が秘密基地をつくろうに実装されたのは、ゲーム稼働後から一年位のアップデートだったから、丁度そのタイミングでゲームを始めたプレイヤーかも知れない。

 あの時は確かに、一気に正義の味方側のプレイヤーが増えた。

 彼等は皆一様に、真っ先に学校を設置するもんだから、町中に学校が溢れ返って違和感が物凄かった事を覚えてる。

 それから暫くは悪の組織側による学校狩りが大流行して、本部基地に学校は設置するなって常識が広まったのだ。

 いやはや、実に懐かしい。


 けれどもそんな一年前頃に始めたプレイヤーが、八百年前のこの世界に来ていたと言う事は、少し興味深かった。

 もしかしたら元の世界とこちらの世界では、時間の流れが違うのだろうか。

 だとしたら僕が元の世界に帰れたとしても、……学校を留年しなくて済むかも知れない。

 でも年を取ってから戻ったら、果たして家族は僕を分かってくれるだろうか?

 いやそもそも、ノアの身体は年を取るのか?


 中学生の僕を写し取ったノアの姿は、当たり前だが二歳年を取った僕とはズレた。

 それは当然ゲームだったからだけれども、ノアの姿が変わると言う事が、僕にはどうにも想像できない。


 ……だが今はさて置こう。

 今の僕には思い悩むよりも、為すべき事がある。

 それにどうせこれは考えたってわからないし、答えも出ない。 

 僕は首を振って思考を中断し、辿り着いた目的地、司令室へと足を踏み入れた。



 保安設備が迎撃を行って来た以上、主を失ってもこの秘密基地は生きている。

 僕は誰も抵抗する者が居ない司令室の中で、

「占拠」

 そう宣言しながら床に手を突く。

 すると中空にディスプレイが出現し、その中で三十分のカウントダウンが始まった。


 全くゲームの中と同じ様に進行している、敵対陣営基地の占拠。

 これは悪の組織側のみ可能な、攻め落とした本部以外の秘密基地の乗っ取り行為だ。

 正義の味方側は占拠を宣言する事は出来ず、溜め込んだ資源の接収や、秘密基地の完全破壊のみが行える。


 但しその条件は些か厳しく、秘密基地の占拠には三十分の待機時間が掛かり、仮に待機時間中に基地の所有者が司令室にユニットを送り込んだ場合、占拠は失敗して一からやり直しとなってしまう。

 また前にも言った気はするが、位置情報のバレてしまった秘密基地は敵対陣営からの草刈り場とされてしまうだけなので、占拠にはその言葉の響きから期待する程のメリットはない。

 でも悪の陣営側が学校施設を、つまり魔法少女を手に入れる手段はこの占拠を使うしか方法がなく、悪堕ち魔法少女を手に入れる為、多くの悪の組織側プレイヤーが躍起になってた。

 尤も僕は、魔法少女はちょっとジャンルが違うんじゃないかって派だったので、あまり食指は動かなかったけれども。


『ホゥホゥ、こちらシノビオウル。聖王の身柄は確保しましたぞ。ミヅガネの成り代わりも成功しました。あれなら露見する恐れはありますまい』

『こちらカミツキガメリウス。目ぼしい宝は既に集め終わっております』

『ノア様、カラミティ・クィーンです。目標物の奪取に成功しました。どうか次のご指示を』


 僕が秘密基地の占拠を待っていると、三体の上級怪人から通信が入る。

 どうやら彼等の仕事は無事に済んだらしい。

 後はまぁ、僕の占拠が終われば全ての作戦目標が達成だ。

 光の杖の所在も、もう既にわかってた。


 恐らく聖神教の聖女とやらは、NPCを失って建物だけとなってしまった学校に踏み入り、資質ありと判断されて杖を与えられた魔法少女だろう。

 そしてその時に与えられた杖が光の杖であり、持ち主の聖女が死んだ際に、この基地の倉庫に戻ってる。

 つまり聖神教は大聖堂の地下に光の杖を保管していたのではなく、基地に戻ってしまった光の杖を取り出せなかったと言うのが正しい。

 まぁその辺りは手に入れた禁書を調べたり、聖王の口伝を聞き出せばハッキリする筈。


『こちらは持ち主を失った秘密基地を発見したよ。占拠が終われば転送装置が使えるから、カミツキガメリウスとカラミティ・クィーンはもう少しの間暴れてて。シノビオウルはくれぐれも見つからない様にね』

 僕の言葉に、三体の上級怪人が驚いた様に息を飲むのが、通信機越しにもわかった。

 でも彼等は僕の言葉を疑わず、直ぐに了解の声を返して来る。


 この基地の占拠完了に必要な時間は、後十分。

 それさえ終われば配下達を回収し、その後はこの基地に繋がる地下通路を崩して埋めてしまおう。

 そうすればこの秘密基地に手出しをする事は不可能となるし、僕等の出入りは転送機を使えば良い。

 敵国の本拠地の真下に秘密基地を構えれるなんて、僥倖以外の何物でもなかった。

 元々のこの秘密基地の所有者、勇者と呼ばれたプレイヤーが聖神教をどう思っていたのかは知らないけれど、僕はこの基地をルードリム聖教国の間接支配に役立てる。


 占拠完了まで、後七分。

 その時を待ち遠しく感じる僕には、カウントダウンがやけにゆっくりと感じられた。




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