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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 秘密基地内に設けられた訓練施設。

 広い空間と、周囲に被害を通さない為の防御壁に囲まれたその部屋で、僕はカラミティ・クィーンと向かい合う。

 これより行われるのは、僕と彼女の戦闘訓練だ。


 つい先日、僕はミルクトセイラ国の陥落にはシノビオウルの功績が大きかったとして、彼の上級怪人への改修を指示したけれど、カラミティ・クィーンの貢献もそれに勝る物だ。

 と言うよりも、組織の統括と指揮を一手に担うカラミティ・クィーンの存在こそが、今の秘密結社スコルを支えていると言っても過言ではないのだから、彼女の功労が誰よりも大きいのは皆が納得する所だろう。

 故に僕はカラミティ・クィーンに対し、彼女の望みを問うた。

 以前にカラミティ・クィーンは、望みは僕の傍に侍る事だと言ったけれど、勿論それとは別にと言う意味で。


 すると彼女は暫く悩んだ後、

「では直接の戦闘訓練、指導をお願いします。よりノア様のお役に立てるよう、私も一歩前に進みたく思いますので」

 ……なんて風に言う。

 それがカラミティ・クィーンへの褒美になるのかどうかは、少し首を傾げざる得なかったが、彼女がそう口にした以上は僕はそれを叶えねばならない。



 互いに向かい合い、右手を相手に向けて力を放出する。

 これは出力の確認作業だった。

 経験を積んだりポイントを消費する事で緩やかな成長は可能だが、基本的にハイエンドである最上級ユニット、大首領としての実力を持つ僕が全力を出せば、カラミティ・クィーンの訓練には全くならないだろう。

 だからこうして彼女の出力を確かめて、僕も同じ出力にセーブを掛けるのだ。


 思えばこんな風にカラミティ・クィーンを育てようとするのは、随分と久しぶりかも知れない。

 出力制限を調節しながら、僕は少し心が浮き立つのを感じてる。

 手塩に掛けるって言葉があるけれど、そう表現する以外にない位、僕は彼女の育成に力を注いだ。

 僕はスコルの怪人には大抵何らかの思い入れがあるけれど、その中でもカラミティ・クィーンは特別な存在だった。


 ぶつけ合った力が、押しも押されもせずに釣り合う。

 ならばそろそろ、始めるとしようか。


 僕は頷き、中空に指で円を描く。

 するとカラミティ・クィーンの周囲にはリング状の力場が発生し、一気にぎゅっと縮んで彼女を捕らえようとした。

 だがカラミティ・クィーンはその捕縛攻撃に対し、念動力を用いて中空に足場を作って駆け上がり、大きく宙を飛んで回避する。

 小手調べの心算だったが、最小限の力の使用で切り抜けられてしまったから、今のやり取りは僕の負けだ。

 それにしても彼女の動きには切れがあった。

 仕事に忙殺されていた筈なのだけれど、それでも日頃の訓練は合間合間に続けていたのだろう。

 その真面目さには、頭が下がる。

 ならば次は、もう少し手数を増やしてみようか。


 次の力場は、リング状じゃなくて球状に。

 これで先程の様に飛んで逃げる事は不可能だ。

 僕がギュッと手を握ると同時に、球状の力場がカラミティ・クィーンを押し潰さんと縮まる。

 ……けれども彼女は潰される事なく、斬と力場を断ち切った。

 その手に握られているのは、力場で生み出した剣、サイコソード。


 出力が全く同じであるなら、僕の力場をカラミティ・クィーンのサイコソードが押し留める事はあっても、断ち切れる事はない。

 しかしそれを可能とせしめたのは、彼女がサイコソードを剣として振るったからだ。

 優れた戦士が鉄の剣で鉄の兜を切るが如く、カラミティ・クィーンは同じ出力の超能力を、自らの身体能力をプラスする事で打ち破った。

 今回のやり取りも、彼女の勝ちと言えるだろう。

 では次の攻撃だ。


 僕は次から次に手を変えて多彩な攻撃をカラミティ・クィーンに浴びせ掛ける。

 彼女は僕の攻撃を冷静に見切り、一手一手確実に処理を続けた。

 まぁ出力を同じに調整している以上、意思を持って動くカラミティ・クィーンには、僕はあまり勝ち目がない。

 僕は技を編み出したり、戦い方を構築する事は得意だが、戦い自体はあまり得手としないのだ。


 以前に戦ったヒーローのプレイヤーに、僕はこんな風に評された。

「少年首領は物凄く巧いけれど、巧さの割りには強くない」

 その評価には、自覚がある。

 戦い方を考えたり、戦い方を組む事は好きだし楽しいが、実際の戦いは然程に楽しいと思えない。

 個人的な戦いの勝ち負けには、ゲーム時代はあまり拘りもなかったのだ。

 勿論スコルが負ける事は嫌だったが。


 今は僕だけじゃなく、僕の中にはノアが居るから、負けられない戦いならば得手だの不得手だのは関係ない。

 どんな手を使ってでも、必ず勝利するだろう。

 だけど今の戦闘訓練には、ノアは関わる気がなさそうだ。

 だったら僕はカラミティ・クィーンに追い詰められる前に、一つでも多くの技を彼女に見せるとしようか。



 万能とまでは言わずとも、広い対応力を持つ超能力は、とても強力な力だ。

 でも秘密基地をつくろうがゲームだった以上、多少の有利不利はあれど、バランスが崩壊するほどの差は存在しない。

 例えば超能力者は広域に及ぼせる力の総量は大きいが、一点に集中して発揮される出力は強化人間に及ばなかった。

 要するに僕は以前に基地を襲撃して来た正義の味方側の最上級ユニットであるレジェンドヒーロー、ブレイカーのキックを念動力で押し留められないし、サイキックバリアも突き破られる。

 カラミティ・クィーンは同じ上級怪人のカミツキガメリウスの前進を止められない。


 だからこそ超能力者の生命線は力を操る精度と、その技の多彩さだった。

 僕が仮にブレイカーと戦う事になったなら、攻撃に対して正面から力をぶつけたり受け止めるのではなく、思わぬ方向から力を加えて体勢を崩して隙を作るべきだろう。

 尤も、あのブレイカーのプレイヤーは武道を嗜んでそうだったから、結局対応されて負ける可能性が高いのだけれど。

 しかしカラミティ・クィーンは未だ自らの超能力に出力を上昇させる余地がまだあるだけに、出力を活かす事ばかりに傾倒していて、制御は甘く技も少ない。

 実際に向かい合って力をぶつけ合えば、彼女の欠点が良く見えた。


 他にも、彼女は背後に向けて、視界外に対しての超能力の行使も、少し苦手としている様子。

 悪の組織と言う立場上、これまで戦う相手は大抵が正面から向かって来るヒーロー達だったので、これも止むを得ないか。

 故に僕は、多方向からの複数攻撃を織り交ぜる事で戦況を五分に保ち、カラミティ・クィーンに彼女の欠点を指摘する。


 だが指摘を受ければ、直ぐにでもその欠点を克服しようと足掻くのが、カラミティ・クィーンの真面目さであり美点だろう。

 徐々に多方向からの攻撃にも対応し始め、状況は再び彼女の有利へと傾いて行く。


 最終的な決着は、僕が風を念動力で掴んで渦巻かせ、超能力で発生させた竜巻を、カラミティ・クィーンはバリアを纏って強引に突破した事で付いた。

 間近に迫った彼女のサイコソードが、僕の喉元に突き付けられる。

 この状態からでは、僕が傷を負わずに状況をひっくり返す手立てはない。

 但し喉元にサイコソードを突き付けられながらも、僕にはまだまだ余力があり、一方のカラミティ・クィーンは疲労で今にも膝を突きそうな状態だ。


 何故なら、超能力の使用回数は僕の方が多いけれども、彼女はそれに加えて体裁きを多用している。

 一歩も動かずに超能力のみで戦った僕に比べ、体力の消耗度合いは遥かに大きい。

 カラミティ・クィーンの戦い方は正解ではあったけれども、完成度はまだまだ低かった。

 どうせなら自らの身体も、脱力した上で超能力で動かしてしまった方が手っ取り早いし、消耗も少なくて済むのに。


 けれども聡明な彼女に、これ以上の指摘は不要だろう。

 自らの欠点は既に把握しているだろうし、改善の方法も自分で見付ける。

 なので僕がするべきは、以前と比べてずっと巧みに戦う様になったカラミティ・クィーンの成長にこそ目を向けて、彼女を褒め称える事だった。


「強くなったね。本当に」

 その言葉に、嘘はない。

 僕の技の殆どに彼女は冷静に対処したし、勝負どころを見逃さずに強引に前に出て勝利を掴む力強さも見せている。

 欠点、弱点が幾つか見受けられたとしても、カラミティ・クィーンの成長には疑いを挟む余地はなかった。


 サイコソードを消してへたり込んでしまった彼女の頭に手を置き、その髪を撫でる。

 まるで子供に対してする様な褒め方だけれど、他に思い付かなかったのだ。

 まぁ彼女の育成に対して掛けた手間暇を思えば、我が子の様に特別な存在と言っても過言ではないし、まぁ良いだろう。

「クィーン、次も楽しみにしてるよ」

 僕がそう言えば、カラミティ・クィーンは僅かに頬を上気させて、一つ頷く。


 今回の訓練は、これで終わりだ。

 でも今回は寧ろ僕が楽しんで、次回まで楽しみにしてると言うのに、これが彼女への褒美で本当に良いのか、やはり首を傾げざるを得なかった。




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