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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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「成る程、それは確かに惜しいね」

 カラミティ・クィーンからの報告を受けながら、僕はそう呟く。


 王都で太陽を隠してから、大聖堂を破壊してから30日、つまり僕等がこの世界に来てから二ヶ月が過ぎた。

 基地の中に居るとわかり難いが、外の気温は随分と下がり、もう直ぐ冬が訪れるそうだ。

 ミルクトセイラ国と言う果実を収穫する頃合いは、もう間近に迫ってる。


 互いに相争った結果、王都の貴族達で秘密結社スコルに対して徹底抗戦を唱える者は、随分と減ったらしい。

 だがまだ強固に意見を譲らず、国内でも名の知れた武人を集めてスコルに対抗しようとしてる貴族が居ると言う。

 それが無能な貴族であったらサッと闇に消えて貰って終わりにすれば良いのだけれど、困った事にその彼は随分と能のある人材なんだとか。

 徹底抗戦派が数を減らして行く中で、それでも意見を変えないのは、後ろ暗い利権に絡み過ぎてそれを手放せない者だったり、凝り固まった価値観を変えられない目を閉じた頑固者や、或いは本当に国を憂う国士だったりだ。

 つまりは玉石混合って事なのだけれど、クズ石を処分する前に玉だけは拾っておきたいのが、人情である。


「王都の東部に大きな領地を持つアタイラ侯爵は、知能、人格、影響力のどれをとっても、征服後の支配に間違いなく有用な人材です。ですので彼を屈服させる為に、集めた武人とやらに怪人をぶつける心算なのですが……」

 そこまで言って、カラミティ・クィーンは珍しく困った様に息を吐く。

 あぁ、何となくわかってしまった。


「相手を屈服させる為に正面から戦うなら、……そうだね。今居る怪人の中なら、ホオジロになるのかな」

 シノビオウルの戦い方はどうしても相手に卑劣な印象を与えるだろうし、機人グラールだと広範囲を纏めて薙ぎ払ってしまう。

 ホオジロ男の本領は水中での戦いだけれど、地上でも並の中級怪人程度には戦える。

 本当は一番向いてるのはカミツキガメリウスなんだけれど、ロゴス基地の支部長である彼はそんなに安易に動かせない。

 故に選ばれるのは、必然的にホオジロ男になった。

 そしてそれはカラミティ・クィーンも同じ結論だったらしく、一つ頷く。


「ですがホオジロ男の場合、相手が仮に短慮な発言を……、スコルやノア様に対して否定的な言葉を発した場合、相手を殺してしまう可能性は高いでしょう」

 続くカラミティ・クィーンの言葉に、今度は僕が頷いた。

 もしもそのアタイラ侯爵が僕を悪しざまに言ったなら、ホオジロ男は間違いなく激昂して相手を殺してしまう。

 ホオジロ男は怪人としての性能も中々だし、僕に対しての忠誠心も高い可愛い奴なのだけれど、短絡的過ぎるのが悪い所だ。

 だから僕にとっては使い易い怪人であるホオジロ男も、カラミティ・クィーンからすると扱い難い駒なのだろう。


「そうだね。うん、言いたい事はわかった。良いよ、その件は任せて。君が必要だと言うその男は、僕が手に入れて来てあげる」

 だったら話は簡単だ。

 ホオジロ男はどんなに激昂しても僕の言葉には逆らわない。

 僕が手綱を握っていれば、ホオジロ男は優秀な忠犬……、忠鮫?である。

 

 カラミティ・クィーンは安堵と申し訳なさの入り混じった顔をしているが、この位は別に構わなかった。

 寧ろ彼女が自ら動けないのは、僕の代わりに色々と仕事を抱え過ぎだからなので、何かしないとこちらが申し訳なくて堪らない。

 鮫の手綱を握りながら、少し散歩に出て来よう。



 薄曇りの空に、冷たい風が吹いている。

「んー、散歩日和とは、行かないね」

 僕は冬が近い寒空の下を歩きながら、隣のホオジロ男に声を掛けた。

 悲鳴が上がり、僕等の姿を見た使用人らしき女性が、必死に走って逃げて行く。


「ノア様、俺がそっちに立ちやしょう。この図体なら、少しは風避けになりやすよ」

 そんな風に言って、ホオジロ男は僕の左側、冷たい風が吹いて来る方に立つ。

 あぁ、確かに風が和らいだ。

 これで散歩も楽しくなるだろう。


 僕とホオジロ男が白昼堂々と歩くのは、第二の城壁に守られた貴族街。

 尤もその第二の城壁は、一ヶ月前にカラミティ・クィーンとホオジロ男に一部を破壊され、未だに修復されていない。

 その一件で目立って居たからだろう。

 貴族街を歩く僕達に、出会う人々の反応は劇的だった。


「ホオジロは気が利くね。後はその気遣いを、他にも少し回せたら言う事はないんだけれど、ね」

 僕はそう言い彼の肩……、には届かないので、軽く腰の辺りを叩く。

 全く以って本当に、僕以外にもそんな風に気を回せたら、色々と単独任務も任せられるのだけれども。

「うっす」

 頷くホオジロ男は、多分言葉の意味をあまり理解してはいない。


 まぁ、仕方ないか。

 人には、怪人にも向き不向きはある。

 僕にとって大切なのは、僕がホオジロ男を気に入ってると言う一点だけだ。

 騒ぎは次第に大きくなり、駆け付けた衛兵達が僕を遠巻きに取り囲む。

 てっきり弓矢の一つでも射掛けて来るかと思ったが、彼等は包囲を続けるだけで、僕等の歩みを止めようとすらしない。


 僕等が進めば、衛兵達は下がる。

 傍から見ると、これはとても滑稽な光景だろう。

 だがそれも止む得まい。

 彼等はスコルに手出しをして良いのかどうかの判断が付かないのだ。


 今この国が、スコルへ降伏する方向に傾いている事は、どうやら衛兵達も知っているらしい。

 だから僕等に手を出してスコルの不興を買い、万が一にも降伏の話を潰してしまう訳には行かないと言う訳だった。

 でも彼等の職務的には僕等は決して見逃せない相手なので、この様に遠巻きに囲んで監視の体裁だけは取っている。


 きっと衛兵達は、無様で屈辱的だと感じているだろう。

 けれども彼等の判断は無難な物だ。

 衛兵達の印象は、僕には然程悪くない。

 駆け付けて来るのも、それなりにではあるけれど早かった。

 今頃はすっ飛んで行った伝令が、上司に指示を仰いでる辺りか。

 そこから更に王城に話が伝わって、果たしてどんな動きを見せるだろうか?


 少し興味はあるのだけれど、目的地はそろそろだ。

「ノア様、一つ聞いてもよろしいですかい?」

 ホオジロ男の問い掛けに、僕は頷く。

 今の僕は急いでないし、機嫌が悪い訳でもない。

 自らの配下の疑問に応える位は、幾らでもしよう。


「何で、わざわざ歩いて来たんです?」

 貴族街にある屋敷の中でも、ひときわ大きな一つ。

 アタイラ侯爵が王都に滞在する時に使う屋敷の前で、ホオジロ男は僕に問う。

 成る程。

 道中、ホオジロ男の口数が少なかったのは、僕の行動の意味を考えていたからか。

 自ら考え、疑問を抱くのは、今の彼にとって良い事だ。


「それはね、ホラ、相手にも準備が要るかなと思ってね。今から叩き潰す訳だけれど、どうせなら相手も全力を出した上で負けたいだろうし」

 僕は、そう言い放つ。

 だってほら、アタイラ侯爵を屈服させるには、言い訳のしようがない敗北を与えるのが一番早い。

 故に僕は貴族街を歩いて騒ぎを起こし、自らの存在を大っぴらに喧伝しながらここまで来たのだ。


 屋敷の中からは、殺意と戦意が溢れんばかりに伝わって来る。

 相手の準備は、すっかり整っている様子。

「さぁ行くよ。ホオジロ、君の活躍を、僕に見せて欲しい」

 念動力で門扉をグシャリと握り潰して、僕とホオジロは屋敷の敷地内へと踏み込む。

 そしてホオジロ男は、「オオッ!」と一声雄叫びを上げた。


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