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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 ともあれ、金森博士の怪人は見せて貰った。

 彼のブラックワイヴァーンは僕の想像を超える性能だったが、それは嬉しい誤算である。

 何ら問題ある事じゃない。

 寧ろ楽しくなって来た。

 果たして技術者であるアキが作成した怪人は、あのブラックワイヴァーンを越える事が出来るだろうか?


 真剣な眼差しでブラックワイヴァーンを見詰めていたアキだったが、その登場が終わり、周囲の視線が自分に向くとコクリと一つ頷いた。

「流石は金森のお爺ちゃんね。でもアタシの子も面白いから! 来て、アタシのミヅガネ!」

 そう言って、アキは手を翳して怪人を呼ぶ。


 ……しかしふと思ったのだけれど、何で金森博士もアキも、ポーズを付けて怪人を呼ぶんだろうか。

 別に事前に怪人を配置して呼び出さなくても、普通に転送装置で出してくれて良いのだけれども。

 ちょっと首を傾げてしまうが、金森博士もアキも真剣な顔で演出するので、少し突っ込みづらい。

 まぁ、良いか。

 この場に居るのがスコルの者達、身内だけなら過剰な演出だけれども、客である竜のロゴスがその演出に喜んでいるみたいだし、今回はこう言う催しだと思おう。


 アキの声に応えたのは、彼女の所持するバックパックから溢れ出した銀色の液体だった。

 地に落ちてみるみる間に広がって行く銀色の水溜りは、しゅるっと姿を変えて人型を成す。

 これはまた、僕の予想外の怪人が出て来た。

 僕の勝手なイメージだが、機械系の怪人は良く言えばハズレが少ないが、悪く言えば当りの少ない、所謂無難な物が多いと思ってる。

 重装甲、重武装、パワーに富むとか、或いは機械だからこそ成し得る超高速の動きとか、大体パターンが決まっているのだ。

 勿論製作者によっては尖った性能の機械系怪人も居なくはないが、亜人型の様に意表を突かれる性能をしている事は滅多にない。


 けれどもアキの作ったミヅガネは、ちょっと性能の予想が付かなかった。

「ほほぅ、ミヅガネ。つまり水銀、……だと芸がないからアマルガムでしょうな。しかし一体どんな合金にしたのか」

 金森博士がフムフムと頷きながら、興味深げにミヅガネを見る。

 アマルガムとは、水銀と別の金属の合金を言うらしい。

 水銀は常温で液状の金属だが、合わせる金属によってはその常温で液状の性質を維持するんだとか。


 アキは金森博士の言葉に不敵な笑みを浮かべ、

「ミヅガネ、アタシを真似て」

 そんな風に指示を下すと、驚いた事にミヅガネはアキと全く見分けが付かない姿になった。

 服装は勿論、肌の色や質感にも違和感がない。


「質感も再現出来てるんだけど、恥ずかしいから触らないでね。この子の欠点は、強力な衝撃を受けたらナノマシン同士の結合が緩んで、液状に戻ってしまう事。後、強い熱にも弱いの」

 成る程。

 外見からは想像の出来ないミヅガネの欠点を、アキは自ら説明してくれる。

 つまりこのミヅガネは、戦闘用の怪人ではないらしい。


「勿論、並の人間相手なら、問題なく蹴散らせるわよ。一応は怪人だもの。でもこの子の本領は潜入工作と、もう一つよ」

 アキの言葉に起きた変化は、ロゴス基地内からの転送だった。

 僕等が見守る中、基地から転送して来たのは、僕が採取した資源を倉庫へ運ぶ為に培養した、三百五十体の下級戦闘員。

 その下級戦闘員達の前に立ったミヅガネは、アキの姿から元の、銀色の人型に戻ると、ぶるりと身体を震わせて体色を金色へと変えた。


 すると下級戦闘員達は、一糸乱れぬとしか言いようのない動きで整列し、そこから構え、攻撃、散開、突撃等の戦闘行動をやはり乱れなく見せる。

「ミヅガネのもう一つの機能は、水銀に合わせたこの世界の金属、オレイカルコスの特徴である共振、精神への感応を活かした、指揮官としての働きよ」

 良く見ると、下級戦闘員達は皆、腕に今のミヅガネと同じ色、金色の腕輪を付けていた。

 どうやらあのミヅガネとあの腕輪の間には繋がりが存在し、装着者はミヅガネからの指令をタイムラグなく受けれる様子。

 これは結構、いやかなり使える機能だろう。


 対象の姿を写し取っての潜入工作の機能は、今のスコルに間違いなく大きな助けになる物だ。

 またミルクトセイラ国やその他の国と、スコルが大規模な戦争を起こす可能性も高いから、戦闘員の能力を高めてくれる指揮官と言うのは実に有り難い。



 ……但し、怪人としての完成度で言うならば、軍配が上がるのは金森博士のブラックワイヴァーンか。

「凄く、凄く惜しいんだけどね。どうしても優劣を付けるなら、ブラックワイヴァーンの方が完成度が高いよ」

 全く方向性の違う二体の怪人を比較する事はとても難しかったが、僕は金森博士とアキに向かってそう告げる。

 今の秘密結社スコルが必要としてる怪人の方向性としてはミヅガネに軍配が上がるのだけれど、……残念ながらミヅガネには明確な欠点があった。


「ミヅガネ、凄く良いんだけどね。でもね、潜入工作を行う怪人に必要なのは、指揮能力じゃなくて単体での戦闘力、と言うか状況を打破する力だよ」

 そりゃあ勿論、見付からないに越した事はないけれど、仮に敵地で発見されてしまった場合、必要なのはその場を脱出する能力や力だ。

 液状になって移動出来るミヅガネにその力がないとは言わないが、指揮能力に割く容量があるなら、もっとその移動力を強化すべきだろう。

 今のミヅガネは、冷蔵庫に掃除機の機能が付いてしまってる様な物だった。


 そもそも戦闘員達は、潜入を行う敵地には連れて行けないのだし。

 指揮官として見るなら、敵地に単身で突っ込むなんて論外である。


 がっくりと肩を落とすアキに、気の毒そうな様子の金森博士。

 金森博士も、アキのミヅガネが持つ機能は、どちらも惜しいと思っているのだろう。

 と言うか本当に惜しい。

 思い付いた機能を強引に詰め込んでしまってコンセプトにぶれが生じたのはアキのミスだが、彼女にそうさせたのは秘密結社スコルの現状だった。

 今のスコルには足りない物が多過ぎるから、アキは張り切り過ぎたのだ。


「と言う訳で今回の比べ合いは金森博士の勝利だね。博士にはもう一体、今度は陸戦型の怪人の作成を頼むよ」

 僕の言葉に、金森博士は恭しく頭を下げた。

 彼には微妙にスッキリ出来ない思いをさせてしまって、本当に申し訳なく思う。

 だがブラックワイヴァーンの出来は確かに素晴らしかったし、異世界の生物であっても全く問題なく扱う金森博士なら、次の怪人も期待が持てる。


「それからアキには、ミヅガネを潜入工作用の怪人として特化させて欲しい。それが終わったら、指揮官型の怪人もお願いするから」

 そう言った僕に、やはりアキは少し悔しそうだったけれど、頭を下げて頷く。

 ふと見れば、竜であるロゴスが僕等のやり取りを実に楽しそうに眺めてる。

 人ならぬ竜の目に、僕等の姿は一体どんな風に映っているのか。


「ンンッ、今日は良い日だ。組織に優秀な怪人が、新たに二体も加わった。戦闘パターンの調整は、後日ゆっくり行おう。秘密結社スコルに栄光あれ!」

 いずれにしても客、部外者の目がある以上、終わりは綺麗に〆ねばならない。

 僕は咳払い一つして、手を振り上げて組織を称える。

 その言葉を、博士にアキ、カミツキガメリウスが唱和した。


 ゲームと違って、ちゃんと首領をやるのは難しい。

 怪人達が意思を持った今、AIのカスタマイズは出来なくなってしまったかと思ったが、学習装置の教導プログラムとやらでちゃんとその要素は残ってた。

 僕の特技で新怪人作成の最大の楽しみであるAIのカスタマイズは、後でゆっくり楽しもうと思う。



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