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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 僕等が太陽を隠し、大聖堂を破壊してから十日が過ぎた。

 秘密結社スコルの存在と、その圧倒的な力を知る事となったミルクトセイラ国は、今、大いに揺れている。

 具体的に言えばこの国の支配者層が、素直に頭を下げよう派と、具体的な方策はないけれど未だ負けてないんだから徹底抗戦しよう派に別れて争っているらしい。

 つまり今のこの国は、収穫し頃になる様に自ら熟れて行ってくれてる果実の様な物だった。


 勿論より美味しく熟れる様に、密かに手は出している。

 征服後、支配に使えそうな能ある人材にはあまり数を減らされても困ってしまう。

 かと言ってこちらの手を噛みそうな犬は不要だし、例え従順であっても、怠惰に利を貪るばかりで肥え太るばかりの犬も同じく不要だ。

 まぁある程度の数は間引き、征服後は奴隷から解放された獣人等の亜人から代表を選び、代わりに据えるのがベターだろうか。

 長らく奴隷として扱われていた亜人の中に、知識層が存在するのかどうかが問題となるけれども。


 尤もその辺りは、僕の意を汲んだカラミティ・クィーンがシノビオウルを使って動いているので、僕が手を出す余地はない。

 また征服後に民を支配する為の法案も、やっぱり僕の意を汲んだカラミティ・クィーンが作成中だ。

 ついでに聖神教を禁じた後、代わりに拠り所として広める宗教も、これまた僕の意を汲んだカラミティ・クィーンが以下略だった。


 少しカラミティ・クィーンに仕事をさせ過ぎな気はするのだけれど、下手に僕が上から口を出すよりも、彼女が纏めた方が効率が良いと言うのだからどうしようもない。

 金森博士や技術者アキ等の知識層は、カラミティ・クィーンを手伝って色々と動いてくれてるらしいが、彼等には他にもやる事がある。

 大きな負担を抱えながらも、文句も言わずにこなしてくれてるカラミティ・クィーンには、何かの形で労わなければならないだろう。



 さてミルクトセイラ国に対しての活動はそんな所だが、当然ながら組織の拡張に関しては続けてる。

 大きな事件を起こし、国家の治安を著しく低下させ、重要な宗教施設を破壊した事で、二十万と少しのポイントが手に入った。

 以前から保有するポイントも合わせると、ジェネレーターや研究室、怪人作成装置をlv3に上昇させ、上級怪人の作成や改修も可能だ。

 しかし現状でそれを行ってしまうと、必然的に活躍の機会が多かったシノビオウルが選ばれる事となり、ホオジロ男や機人グラールは不満を溜めるかも知れない。

 だから、そう、まだ時期尚早であると思うのだ。


 もしもミルクトセイラ国がこのまま秘密結社スコルに降伏したなら、流石にシノビオウルの功績は大きいと、上級怪人への改修は行うだろう。

 だがその場合は近隣諸国、特にルードリム聖教国とフォウン帝国の二大国が何らかの行動を起こすだろうから、防衛戦等でホオジロ男と機人グラールにも活躍の機会は訪れる。

 自分達にもチャンスが与えられるとわかっていれば彼等も不満を溜める事もないだろうから、上級怪人への改修タイミングは、もう暫く先だった。


 なので今、戦力を拡充する為に秘密結社スコルが行うのは、新たな怪人の作成だ。

 そう、お楽しみの時間である。

 勿論この新怪人の作成を楽しみにしていたのは僕だけじゃなく、金森博士に技術者アキも同様だった。

 ロゴス基地を得た事で、魔物や未知の鉱物と言う素材を得た彼等は、新しい怪人を作成したくて堪らなかったらしい。


 けれども当たり前の話だが、怪人を無尽蔵に作らせる訳には当然いかなかった。

 怪人を待機させる部屋にも、作成に割り当てられるポイントにも、限りはある。

 故に手始めに金森博士と技術者アキはこの十日間で一体ずつの中級怪人を作成し、それから性能テストとお披露目を行う。

 その結果、新しい怪人の強みを把握したり問題点を洗い出したり、彼等が何体ずつ新しい怪人を作成するかの割り当てを決めようと言う話だった。


 そしてそのお披露目は、今からロゴス基地の外、要するにロゴス山で行われようとしている。

 基地内でも性能テストは出来なくもなかったのだが、やはり外の方が気兼ねなく全力を出せるし、言語翻訳機で会話が可能になった竜のロゴスがカミツキガメリウスから新しい怪人の話を聞き、そのお披露目に何故か参加したがったのだ。

 僕等は竜であるロゴスの縄張りに場所を借りてる形になるので、彼……、多分彼?とは友好関係を築いておいて損はない。

 怪人のお披露目に参加させる位で大家の機嫌が取れるなら、実に安い物だろう。



 強い風の吹くロゴス山の中腹に、僕と技術者のアキ、金森博士にカミツキガメリウス、それから竜であるロゴスがドンと並ぶ。

 金森博士はお披露目よりもロゴスに興味津々で、何とか調べに行こうとするのをカミツキガメリウスが阻止してた。

 まぁ研究心の旺盛な金森博士も、竜であるロゴスとの友好関係の重要性は理解しているだろうし、妙な真似はしない筈。

 万一の場合でも、カミツキガメリウスが傍に居れば、流石に怪人のガードを生身の博士がすり抜けられる道理はない。


「だから金森博士、そろそろお披露目してくれないかな? 未知に惹かれる気持ちは理解しなくもないけれど、皆が待ってるからね」

 僕はそう言って、金森博士に新しい怪人のお披露目を促す。

 金森博士は未練がましい視線を竜であるロゴスに向けるが、しかし大きく息を一つ吐き、両手を広げてそれを呼ぶ。

「よろしい、では皆様ご覧あれ。来い、儂のブラックワイヴァーン!」

 声を聞き付けて、わざわざ上空に待機させていたのか、急降下で一体の怪人が飛来した。

 その姿は全身が黒光りする鱗に包まれ、頭部は竜、腕は被膜を備えた巨大な翼を成し、二本の足の他に大きく太い尻尾を持つ。

 更にその尻尾の先端には、剣の様な太く長い棘が生えている。


 名前から察する事が出来る通り、素材にはワイヴァーンを使ったらしい。

 この世界に来た当初から金森博士が興味を示していたワイヴァーンは、このロゴス山の近くで捕獲が出来た。

 多分金森博士はファンタジー世界を意識したのだろう。

 半人半竜の姿ではあるけれど、このブラックワイヴァーンは並の怪人よりも生物感が強い。

 僕の好みからは少しずれるが、実に強そうな姿だった。


 急降下して来たブラックワイヴァーンはカッと口を開いたかと思うと炎を吐き、地表を舐めるように燃やしながら再び空へと上昇をする。

 良い飛行性能だ。

 同じ飛行型のシノビオウルに比べても、速度は少し上回るだろう。

 だが旋回性能、動きの細やかさはシノビオウルが上か。


 それからブラックワイヴァーンはもう一度降下して、次は尻尾を地面に叩き付けて岩場を砕き、地に降り立つ。

 これは本当に、中々良い怪人だった。

 鱗に包まれた身体はそれなりに防御力もあるだろうし、手の代わりに尻尾を使えば近接戦闘も不得手ではなさそうだ。


『ほぅ……、あの紛い物を使った割には、強いな。下位の竜にも匹敵しかねん。怪人とは実に面白い物だ』

 そんな言葉を発したのは、ゲストである竜のロゴス。

 ロゴスは四足に翼を持つドラゴンだが、ワイヴァーンは前脚が翼を成す亜竜で、ロゴスの言葉を借りれば紛い物の竜らしい。

 だからこそロゴスは、ブラックワイヴァーンの示した性能に大いに興味をそそられた様だった。


 尤も、素材となった生物の強さと怪人の性能は、実はそんなに関係がない。

 大切なのはその生物の特徴を捉え、如何に長所を活かして怪人とするかだ。


 例えばの話だが、バッタをモチーフとした改造を受けたヒーローは、獅子を素にした怪人をキック一発で倒してしまう。

 当たり前だが、本来のバッタは獅子に遠く及ばぬ生き物である。

 けれどもバッタは人間サイズであれば一回のジャンプでビルを跳び越すとも言われる脚力を持つ。

 ならば人間サイズである怪人や改造されたヒーローが、本当にバッタの脚力を再現出来たなら、そのキック力は途轍もない威力を秘めるのだ。


 だから正直な所、僕はここまで完成度の高い怪人が出て来るとは思ってなかった。

 だって異世界の生物、それも魔物なんて存在に関しての知識は僕等には殆どないのだし、その特徴を上手く活かし切るなんて不可能だと思ってたから。

 金森博士の研究に対する熱意なら次第に怪人の質も向上するだろうが、少なくとも今回は不利だろう。

 そんな風に考えていたのに。

 どうやら僕は、金森博士を少し甘く見ていたらしい。




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