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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 僕等がこの世界にやって来て、三十日が経つ。

 そう言えばミズガルズオムワールドとの言葉に含まれる、ミズガルズとは、世界樹ユグドラシルの中央付近に位置する世界らしい。

 だから何だって話なのだが、特に深い意味はない。

 まだオムの意味も不明だし。


 さてそれなりの時間も経過した事で資源採掘も進み、秘密基地のアップグレードも順調に進んでる。

 王都の秘密基地、正式につけた名称は7-1、中央支部って名前だけれど、そこでは主に怪人関係の施設を増やす。

 まずは怪人部屋を五から十まで数を増やし、怪人作成装置・亜人型と怪人作成装置・機械型も設置し、lv2までアップグレード済みだ。


 因みに怪人作成装置はその名の通り、lv1で下級怪人、lv2で中級怪人の作成、改修が可能となる設備である。

 作成したい怪人のタイプごとに設置、アップグレードを行わなければならないし、技能を持つ博士や技術者の存在がなければ稼働しなかった。

 それから博士や技術者の持つ能力、組織の技術力が足りなければ、やはり装置のレベルが高くても無駄になってしまう。


 まぁ幸いゲーム開始当初から活動してる僕の組織、秘密結社スコルの技術力、所属する博士や技術者の能力は充分に高い。

 秘密基地7-2、ロゴス基地にも同様にlv2の研究室と怪人作成装置の二種は設置したので、これで何時でも怪人の数を増やす事が出来る。


 また情報入手作戦の際に王都の市民を拉致した事で、『小さな事件を起こす/day。100p取得』と、僅かではあるがポイントも得られた。

 十日で1000pと、得られたポイントは誤差の様な物だが、この世界でも活動の結果ポイントが得られると判明したのは僥倖だ。

 ポイントと資源、両方を得られる手段があるのなら、スコルは枯渇を恐れずに拡張を続ける事が出来るだろう。


 それから、そう、技術者アキの手で、言語の翻訳機も完成してる。

 ヘッドセットタイプだったり、怪人用に首輪タイプだったり腕輪タイプだったりするけれど、日本語を聞けば現地の言葉に、現地の言葉を聞けば日本語にほぼ同時通訳してくれる優れ物だ。

 僕の知る翻訳機はボタンを押してる間は音声を受け付け、別のボタンを押すと翻訳して発すると言うタイプだけど、今回のはボタンを押してる間だけ翻訳しない。

 機人グラールは翻訳機を必要とせず、自分の中で言語変換を行う機能が追加された。

 そしてそれ等の制作者であるアキも、開発の過程で現地の言葉を習得したと言う。


 ……正直、優秀過ぎて驚く。

 そう、怪人が作れます!と言われても、凄いって事はわかっても、いまいちピンと来ないけれども、数週間で他国の言語を完全に習得しましたって言われたら、学生だった秋津・明の僕にはその凄さがとてもリアルに感じられてしまうのだ。

 ノアとして報告を受けたから多少驚く程度で平然としていたが、もしも学生の秋津・明としてそれを言われたら、驚く前にドン引きして居たかも知れない。

 相手があまりに自分と隔絶して上に居る存在だと、わかり合うのは難しいし、嫉妬すら湧かない。


 勿論そんな感情は、アキの前では決して表には出ないけれども、そう出来るのもノアが僕の中に居るからだ。

 腕力であれ知力であれ、他の何か特殊な力であれ、他者と隔絶した物を持つ者は、畏れや排斥の感情を受ける。

 そうして悪の組織に流れて来る者もいるのだから、その首領であるノアは他人の優秀さの前に気圧される事はない。

 つまりは、僕はノアに比べて本当に凡人なんだなと、そう思う一件だった。


 兎も角、一ヶ月と言う準備期間を終え、秘密結社スコルは今日、大きな作戦を実行に移す。

 カラミティ・クィーンが率いるホオジロ男と二十の上級戦闘員が、市民街と貴族街を隔てる中心から二番目の城壁の一部を破壊し、秘密結社スコルの名とこの国に対して征服活動を行うと宣言するのだ。

 大きな作戦と言う割に小さいと感じるかも知れないが、この作戦にはもっと派手な仕掛けを用意してる。

 ミルクトセイラ国の王が膝を屈したくなる様に、心を圧し折る派手な仕掛けが。


 そろそろ日は中天に昇る。

 作戦決行の、時間だった。



 城壁の破壊が、失敗する事はないだろう。

 何せ送り込んだ戦力は、そのまま王城を攻め落とすに足る。

 ましてやそれを率いるカラミティ・クィーンは戦闘員以下から上級怪人並の力を得るまで、戦闘経験を積んで来た歴戦の幹部だ。

 失敗する余地がない。


 けれども僕は、基地のモニターで彼女達の活動を黙って見守りはしなかった。

 僕には今日、僕にしか出来ない役割があった。

 耳に付けた通信機から聞こえて来る作戦の進行状況を聞きながら、僕は今、シノビオウルの足に抱えられて、王都の遥か上空を飛んでいる。

「うぅん、……ちょっと寒いね」

 本当は寒いどころじゃなくて、バナナで釘が打てる気温だ。

 酸素も薄くて、呼吸が充分に行えない。


 でもまぁその辺りはサイキックバリアで何とかしてる。

 超能力は実に万能だ。

 ノアを創る時、折角レアな物を選べるんだからと超能力者にして、本当に良かった。

 正直、あの時は悪の宇宙人とどちらにするかで少し迷ったのだけれど、丁度その頃は外国のスーパーヒーロー物を少し見てたので、超能力者を選んだのだ。


「私も、この高度まで飛ぶ事は中々ありませんから貴重な経験ですな」

 ホゥホゥと笑うシノビオウルに、僕も笑い声を出す。

 通信機から聞こえる進行状況から察するに、そろそろ出番だ。


 城壁を破壊したカラミティ・クィーンが王都の民に宣告する。

『我等は秘密結社スコル。この世界の太陽を喰らう者。この国は我等の征服活動の第一歩に選ばれた。まずは偉大なる我等が主の力の一端を見、首を垂れるか否かを決めるが良い!』

 よし、来た。

 今、きっと彼女は地上から空を、太陽を指で示してる筈。


 だから僕は、基地から次々に転送されてくる厚さ1cm、縦横1m四方の石板を、サイコキネシスで浮かべて繋ぎ合わせ、大きな大きな壁を中空に形成して行く。

 そう、王都に降り注ぐ太陽の光を遮る壁を。

 この石板は、機人グラールが準備期間中に切り出した物だ。

 ピタリと合わせればまるで元から一枚だったかの様に隙間を作らず、光を漏らす事はない。

 地上から見れば、まるで太陽が蚕食されて行く様に見えるだろう。


 人は古来から、太陽に特別な何かを見て来た。

 太陽の光は地に降り注ぐ恵みであり、偉大な存在からの大いなる加護を思わせる。

 それ故に、日食は不吉な物として恐れられたと言う。

 僕等の名乗るスコルとは、北欧神話でとても有名な巨狼、フェンリルの子だ。

 スコルは太陽の女神であるソールを追い掛け、これを捕らえる。

 また同じくフェンリルの子であるハティは、月の女神であるマーニを追い掛け、これを捕らえる。

 これが日食と月食の起きる理由だとされ、終末の日には太陽と月は、スコルとハティに飲み込まれてしまうらしい。


 この地の人々が信仰するのは、北欧神話ではなく聖神教とやらだけれど、崇められてる光の聖神とやらはやはり太陽を象徴としていた。

 それが喰われる様を見て、王都の民は何を思うか。

 少なくとも僕が居た日本の民衆の様に、天体ショーだと大喜びする事はないだろう。


 ミルクトセイラ国の王の心を折る為に、僕等が行う作戦とは、そう、所謂一つの神殺しだった。

 城壁を破壊されて押し寄せた衛兵は、闇に染まって行く世界に怯え戦いを放棄する。

 その隙に、カラミティ・クィーン達は包囲を蹴散らし、撤退を完了するだろう。

 大切なのはスピードだ。

 サッとスコルの恐ろしさを印象付け、速やかに引く。

 でなければ、太陽を隠せる程に大きな壁を支える僕が、とてもとても大変だから。


 天を支える巨神と言われるアトラスの苦痛は、もしかしたらこんな感じなんだろうか?

 僕は重みに耐えながら、カラミティ・クィーンからの撤退完了の声を、ひたすらに待つ。

『ノア様、襲撃隊各員、全員無事に撤退完了しました』

 そして聞こえて来た、労わるような彼女の声に、僕は背負った荷物を一纏めにし、地上に向かって放り出す。


 そう、僕等の神殺しは、太陽を隠しただけでは終わらない。

 人は喉元過ぎれば熱さを忘れる生き物だ。

 だからこそ忘れられない、目に見えて残る大きな傷が必要だった。

 壁を形成していた石板が一塊となって落ちて行く先は、王都ハラウオンで王城に次ぐ巨大な建造物、貴族街にある聖神教の大聖堂。


 それから王都ハラウオンは、否、ミルクトセイラ国全土が、二つの意味で激震する。

 巨大な石塊が地に落下した振動と、スコルと言う悪の組織が出現した衝撃に。



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