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僕と彼の異世界征服活動記  作者: らる鳥


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 突然仕掛けられた基地への襲撃に、僕は大首領としての戦闘装備、軍服をモチーフとした特殊スーツ、黒の指揮杖とマントを身に付けて、迎撃の為に飛び出した。

 それにしても驚きだ。

 秘密基地をつくろうのゲームでだって、こんな短時間で基地が発見されて攻撃を仕掛けられた事なんてない。


 攻撃を受けている基地の入り口へと転送した僕を出迎えたのは、空に浮かぶ体長30m程の爬虫類?

 ……そう、ドラゴンだった。

 大きな翼をバッサバッサと動かして空中に留まり、現れた僕を睥睨するその竜の瞳には、明らかな知性の色が宿ってる。


 山の周囲が竜の類が飛び交う魔境じゃなければ大丈夫だなんて僕が考えてしまったから、この竜はわざわざ出て来てくれたんだろうか。

 これがフラグが立つって事なのか。

 何て馬鹿な事を考えてしまう位に、あまりにその竜の出現はタイミングが良かった。


 しかしでもこんな常識外の存在を目の前にしても、そんな風に考える余裕があるのは、きっと僕の中に居るノアの御蔭だ。

 何せ秘密基地をつくろうでは巨大化怪人、怪獣や、ヒーロー側のロボットの戦いも行っていたから、こう言っては何だが慣れている。

 実際、元の世界の第八支部では、秘密結社スコルも怪獣を保有していたし。

 と言うか怪獣を保有する為の施設が第八支部だった。


 だから僕は知っている。

 大首領であるノア、今の僕は、怪獣や巨大ロボとだってまともに戦える実力がある事を。

 故にこの位は、そんなに怖くない。



 見つめ合う事暫く、不意に竜は地上に降り、口を動かし、音を発した。

 攻撃的な爆音ではなく、まるでこちらに語り掛けるかの様な、そう、言葉だ。

 しかし僕にはその言葉を理解するだけの言語知識はない。

 竜がわざわざ人間の言葉を話していたのだとしても、まだまだこちらの世界の言葉は解析中だった。


 でも対話の意思があるのなら、交渉の余地はあり、僕なら手段も持っている。

 ここに居たのが僕で、竜の襲撃が今日で良かった。

 もし仮に竜の襲撃が明日以降だったなら、対話の手段がないカミツキガメリウスと竜は、問答無用で戦わざるを得なかっただろう。


『巨大な竜よ。君は何故攻撃を仕掛ける?』

 僕は竜に向かい意思を発する。

 後は向こうが言葉ではなく、こちらに向かって意思を発すれば、僕等はテレパシーの超能力による対話が可能だ。


『まさか、心の声だと? 人間、……否、人間か? 貴様は一体何者だ。この地は我が棲み処。人の王達はこの地に人を立ち入らせぬと盟約を立てた筈であろう』

 驚き、戸惑いながらも、意思を返して来る竜。

 成る程、つまりここは侵入してはならない場所だったらしい。

 そう言えばこの辺りは、ミルクトセイラ国と隣国であるフォウン帝国の国境地帯だったっけ。

 その国の王達がお互いにこの地に立ち入らぬと竜に誓ったからこそ、ここで国境線が引かれたのか。


 ……まぁ僕には、秘密結社スコルには、全く関係のない話だが。

『僕は秘密結社スコルの大首領、ノア。僕こそがスコルの王であり、誰に従う事もない。その人の王達とやらと、僕は全くの無関係だよ』

 つまり単なる迷い人であり、竜がそう判断するなら侵入者だ。

 それは誤魔化しようのない事実だから、どうしようもない。

 けれどももしここで、ミルクトセイラ国やらフォウン帝国の指示だと僕が言ったら、竜はその国を焼きに行ったのだろうか?


『……この地は我が棲み処である。スコルの王、ノアよ。速やかに立ち去るが良い』

 意思を返す竜は、どうやら困っている様だった。

 僕は会話しながらも竜の強さを測っていたが、どうやら向こうも同じだったらしい。

 彼の実力は、恐らく僕の知る巨大怪人や怪獣よりも低かった。

 そりゃあサイズが半分以下なのだから、それも仕方ないだろう。


『ごめんね。勝手に侵入しておいて酷い言い草だとは思うけれど、僕はこの基地を造るのに手持ちの資源を大分消費してしまったんだ。今更基地の放棄は出来ない』

 だから僕は強気に、彼の退去要請を拒絶する。

 多分竜の実力は、上級怪人と同程度か、或いは少し強い位だ。

 カミツキガメリウスだと相性が悪いから勝ち目はなさそうだが、カラミティ・クィーンなら少なくとも一方的には負けやしない。

 要するに僕なら勝てる相手なのだ。


 非はこちらにあった。

『地中に突然巨大な何かが現れたのも、ノア、貴様の力か……』

 向こうが攻撃を仕掛けて来たのも、無理はない

 そりゃあ自分の敷地内に他人が大きな家を建てたら怒るだろう。

 知らなかったで許される範囲は超えていた。


 だが残念ながら、実力的に有利なのはこちらだと、双方が認識してしまってる。

 僕に引く心算はない。

 非がこちらにあるとわかってるだけに後味は悪いが、例え竜を殺す事になったとしてもだ。


『仕方ない。腹立たしいが、貴様には勝てる目算が立たぬ。力ある者が得るのは理よ。貴様にこの地は譲るとしよう』

 僕が引かず、また僕に勝てない事を悟ったのだろう。

 竜はそう、僕に告げた。


 けれども、実はそれはそれで困るのだ。

 この地から竜が居なくなると、どうやら不都合が出てしまう。

 なのでここからが交渉のしどころである。

 僕が今日、竜と出会い、交渉の余地を持てたのは紛れもなく幸運だった。


『いや、待って欲しい。非は確かにこちらにあるんだ。君を追い出すなんて真似は出来る筈がないよ』

 竜が不在となったなら、ミルクトセイラ国とフォウン帝国の間を遮る障害がなくなる。

 すぐにとは言わずとも、この地に人が踏み入る様にもなるだろう。

 折角人が入って来ない土地があるのに、そんな勿体ない真似はしたくない。


『僕等に出て行けと言われても困るし、出て行く心算はない。でも君の生活を脅かそうとも思ってないよ。僕等はそう、ただ間借りさせてくれれば良い』

 両手を広げて敵意がない事を示しながら、僕は言葉、意思を連ねる。

 この竜は、このロゴス山と言う土地の大きな資産だ。


『間借り?』

 巨大な体で長い首を捻る竜の仕草はどこかコミカルで、僕の目に可愛らしく映った。

 交渉中にそれは、ちょっとズルいと思う。

 軒を貸して母屋を取られるって諺があるけれど、そんな事をする心算は少しもない。

 僕等に必要なのは、地中から採掘できる資源と、魔物と言う名の素材である。


 また人よりも長く生きてそうで、尚且つ高い知能も兼ね備えた竜なら、色んな知識も蓄えているだろう。

 情報源としても貴重な存在だ。

『そう、間借り。居候でも良いけれどね。勿論適正だと判断出来る対価は支払うよ。君が何を欲するのかはわからないけれど、僕は色々出来るから』

 そして何より、最悪の場合はぶつかり合っても僕が勝てると言うのが大きい。

 秘密結社スコルの総力を結集して挑まなければならない様な相手なら何が何でも抹殺するが、この竜は友好関係を結ぶのに、実に手頃な相手だった。



 少し、竜は悩んでいる様だった。

 多分竜には、実力に勝る僕が譲歩する理由がわからないのだろう。

 でもそれを逐一説明する心算は、僕にはない。

 まぁもう竜には、僕の手を取る以外に選択肢はないのだけれども。


 竜がもっと強ければ、話は別だった。

 竜がもっと高慢で、頭が悪くても話は別だった。

 だからこの出会いは、そう、運命的である。


『強者にそこまで言葉と礼を尽くされては、我に返さぬ道理なし。我はグランドリア大陸、央のドラゴンロード、ロゴス。ノアよ、宜しく頼む』

 竜、ロゴスはそう言って、僕の差し出した手にゆっくり静かに頭を寄せた。

 頭がデカくて、ちょっとビビる。

 ロゴス基地の支部長になるカミツキガメリウスには、本当に苦労を掛けるなぁと、思う。





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