三匹の豚め
「三匹の子豚の話なんだけど、ずっと疑問に思っていることがあるのよ」
「あ、また何かダメな話だな、これ?」
「どうして三匹目の豚は、煉瓦の家が狼に対して有効だと知っていたのかしら」
「いや、童話なんだから気にしなくても。言ってることは分からないでもないけど」
「つまりこれは、あらかじめ三匹目の豚だけが、狼に関する情報をどこかで得ていたということよ。いったい彼? 彼女? はどこからその情報を仕入れてきたのかしら」
「知らないよ。勝手に妄想してくれよ。いや、やっぱりするな」
「私が思うに、狼に関する情報と言うと、狩人か、狼自身から得るしかない。でもこの話に狩人はいないから、やはり狼から直接聞きだした、とするのが妥当よね」
「理屈としては通ってるね。前提が不自然さしかないけど」
「そうなると、三匹目の豚はあらかじめ狼とつながりがあった……そして他の二匹の豚は何も知らずに家を建て、狼によって食べられてしまった」
「黒い話に聞こえてきたな」
「最終的に狼は三匹目の手によって熱湯に沈められる」
「あれ? 暖炉の火で燃やされるんじゃなかったっけ?」
「そこはいいから。ともかくこう見ると三匹目がいかにひどい豚か分かるわ」
「うん、まあそこまで穿って見ればね」
「お話はここからが肝心よ。では豚はどうやって狼から前もって情報を得たか。ただ会って話をするんじゃ食われてオシマイだから、何らかの策を使ったのよ」
「へー、どんな策」
「男女の関係よ」
「何言ってんだ、お前」
「実は豚はキャバクラに勤めており、狼はそこの客だった……化粧をしているから狼には彼女が豚だと分からない。そして酔った勢いと気心の知れたトークによりまんまと狼から情報をせしめた。……これが事件の真相よ」
「すいません、救急車を一台」
「怒り狂った狼の叫びが今にも聞こえてきそうだわ。自分を罠にはめた相手への怨嗟の声が……『おのれ! 三匹の豚め!』」
「作者に謝れ」