少年は異世界へ。
不定期でボチボチやっていきます。
退屈だ…
寝て、起きて、学校行って、勉強して、帰って、ゲームして、寝て、起きる。何事も起こりようの無い日々がまた過ぎていく。
俺の名前は江ケ崎 愁弥。周りの奴からは影でエロ崎と呼ばれている。高校三年になったばかりだ。なんで影でかって?そら、表で友達が居ないからに決まってんだろ。俺は孤高で良いんだよ、自分の世界にいれればそれでいいんだ。泣いてねぇよ…
うっすら分かってるとは思うが俺は大のヲタクで、特に異世界ものとかが大好物だ。そんなで友達が居なかったりするんだが…いや違うぞ?その程度で人を軽蔑するような奴はこっちから願い下げだ!つ…強がってねぇよ!
そんなことを言っときながらでなんだが、別に誰とも喋れない訳では無い。それを言い出すと知り合いと友達の境界について議論しなくてはならなくなるので置いておこう。
また一日が始まる。今日も何事も無く過ぎるだろう。いや、正確には俺が教室に入ると一悶着あるのだが…
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ガラガラガラと古い扉を開くと、いつも通りの教室にいつも通りのメンツがいつも通りに駄弁っている。そして、俺はいつも通り静かに自分の席に着く、するといつも通りに俺に話しかけてくる奴がいる。
「おはよう、江ケ崎。変わりないか?」
「あぁ、おはよう剣翁。特に変わりは無いよ。」
「そうか、ならいい。」
そう。彼女が数少ない俺の話せる人間、剣翁 瑞月。彼女の家は、いつぞやの武家様を代々受け継いだ剣道一家といった所で、何でも国宝の刀"瑞月"の管理を一任されてるとか。そんな彼女もちゃんとその一家の一員な訳で、剣道少女、それも剣翁流の免許皆伝らしい。知らんけど。そして、とてつもない美人であり、スタイルも素晴らしい。すりすりしたい。凛々しい性格と相まって、エビ高の双璧と呼ばれる人気者だ。あ、エビ高ってのは、俺の通ってる高校の略称で、ほんとは、枝隅B高校という。ちなみにAは無い。
それと、双璧というのにはもう一つの意味もあって、剣翁は…その…とてつもなく壁なのだ。何が、とは言わないけどな。俺は壁でも大好きだぜ。でも、そんなことを口にしたら切られちまう。まだヴォル〇モートと言う方がマシだ。
お?気付いた?双璧なんだからもう一人いるだろって?もちろんだよ。そろそろ来るぞ?
「瑞月ちゃん。エロ崎なんてほっといて、こっち行こ。」
「ああ、直ぐに行く。それではな江ケ崎。」
このナチュラルに俺の事をディスってくるのがエビ高の双璧のもう一人の方、光大路 愛珠音である。俺が影でなんて呼ばれてるか知ったのはこいつのおかげだ。喜べないけど。ただ、顔だけは超絶可愛い、なんというか…ふわふわほわほわというか…ゆるゆるしてるんだ。うん、可愛い。あと、こっちは壁じゃない、とてつもない存在感を放っている。何が、とは言わないよ。俺はこっちも好きだぜ。まぁ性格は終わってるがな。陰口は陰で言って始めて陰口なんだよ!本人の前で言う奴があるか!お前らを見比べて、揉んだら気持ちいだろうなって考えてたからそんなアダ名が付いたんだよ。つまり、お前らが悪い!……すいません。
あ、お前今そんな美少女達に絡まれて幸せじゃねえか!とか思ったろ?違うんだな、剣翁が俺に恋心を…みたいなのなら全然いいんだよ?俺も。でも、剣翁は、クラスで完全に浮いている俺を哀れんで声を掛けてるだけ。何たって、これ以降は一切関わらないからな。それに、こっからがいつものルーティーンでも理不尽としか言えないところなんだよな。ほら来たぞ。
「やぁ江ノ崎君おはよう。今日もいい天気だね。それに、剣翁さんとは相変わらず仲がいいんだね?」
「おぃ、江ノ崎、瑞月には話しかけるなっていつも言ってんだろが!」
俺の名前は江ケ崎だ!片方はまだ良い。こいつは、榊皇輝斗、クラス委員長で、一言で言うと正義のヒーローって所か。恒例のスーパーモテ男君だよ。こいつは、素でこんな事を言って来やがるから質が悪い。取られるとでも思ってんのかね?
で、隣に引っ付いて意味の分からない事を言っているのが金剛 鉄也、剣翁の事が好きなのか、毎度の如く絡んでくる。それに、言い聞かせるように下の名前で呼んだりしてるし…てか、誰がどう見ても俺は悪く無いだろ。挨拶すっ飛ばして言うことか?それ。
この二人は別に仲が良い訳では無い。というか、金剛はただの金魚のフンで榊のカリスマの恩恵を授かってるだけ。榊には親友の善井熱志がいる。アイツは不良なんだけど、筋を通すタイプの不良で、曲がった事が嫌いな榊とは、何だかんだで合うとかなんとかで割と一緒にいる。善井なのに不良かよ!?とか言っちゃダメだよ?一年の時、そんな事を言った金剛は殴り飛ばされてたし。
「っておい、聞いてんのか!無視してんじゃねぇよ!」
おっとまだ何か言ってたのか、どうせいつもの俺の瑞月に手を出すなだろ?もう聞き飽きたよ。
適当に流していると、二人は立ち去って双璧と集ってお話し出した。
これでやっと自分の世界に入れる。
まだ、HRまで30分近くある。この時間は、俺の大切なラノベの時間なのだ。誰にも邪魔させんぞ!
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気付けばHRも終わって、授業が始まっていた。いかんいかん、自分の世界に入り込み過ぎたみたいだ。
そうして今日も学校が終わり俺は帰路に付く。途中でラノベを買って帰らねば。今日はついつい最後まで読んでしまったぜぇ。
本屋に入ると即座にラノベコーナーへと進む。あらかた読んでしまったのが悩みだな。これは俺の物語が始まるフラグじゃねぇのか!?とか呑気に考えてるとふと目に入った紙を取る。ん?
明日、貴方達は異世界に招待されます。お気を付けて。とても素敵な女神より。
何これ?あれ?消えた?え?今の何?気のせい?俺ついにヤバくなった!?ばっ、バカなこの俺が遂に精神科へと誘われるのか!?
何してんだか…気のせいだろ。実際に紙は無いんだし。現実だったとしてもそれはそれでウェルカムじゃねぇか。帰ってsay of dutyでもしよ。
いつも通りの日常が幕を閉じるとは、この時は思っても見なかったよ。
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昨日の事はすっかり忘れて、と言うか本屋から出た地点でもう頭には無かったけど。とにかく、今日も学校に向かう。
そして、いつものルーティーンを済ませて自分の世界に入っていると、ガラガラドンッと乱暴に扉が開けられ、善井が入って来た。珍しいな。今日は全員出席か。中々無いぞ?高校生の一クラスが全員揃うとか。何か不吉な事の前兆じゃねぇのか?と考えたが、時間が無駄だと思い直し、再び自分の世界に入っていると、周りの連中がざわつき出した。何事かと思って時計を見ると、もう授業時間を十分間もオーバーしているのに、先生が来ないのだ。
「皆、静かにしてくれ。何かあったのかもしれないから僕が職員室に行ってくるよ。」
そう言って榊が教室から出ようとドアに手を掛けたが開こうとしない。ぼんやり見ていると急にパントマイムをしだした。なんだ?アイツもなんだかんだ言って、授業時間が潰れるのが嬉しいんじゃねぇか?それで、あんな時間潰しをしてんのか、何か見直したわ。
「な、何故だ?開かない!」
いや、そういうのは良いよ。さっき善井が思いっ切り開けた所だろ。すると今度は善井がパントマイムをしだした。うん、お前はそうするだろうな。分かってたよ、俺は。だが何か様子がおかしい。何と善井が扉を蹴飛ばし始めたではないか。それはマズかろ?壊れたらどうすんだ?というか、壊そうとしてないか?うわー、凄い殴るな。扉のガラスってあんな頑丈なの?いや流石にそれは無い。防弾ガラスでも無い限り、あんなに殴ったら割れるだろ。そう思っていると、ふと地面に目が行く。
は?魔法陣じゃん?気づいた時には既に遅かった。眩い光が視界を覆う。
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「はじめまして。愛しい我が身…おっと愛しい我が子よ。」
真っ白な空間に、一人の女性、と言うにはやや小さめの人物が佇んでいた。
何故かその空間に対を成すかのような漆黒のローブを纏っている。
「そして、ごめんなさい。私の力では、貴方達を助ける事が出来ないの。だって、力を使い過ぎると、一時的に老けてしまうの。」
え?何言ってんの?こいつ。
「まぁ、こんな可愛い女神様にこいつとは。失礼しちゃうわ。」
え?え?考えが読まれた!?不味い!俺の宝庫が、昨日の晩、剣翁を脳内で弄んだ事がバレてしまう!
てか素が出てるぞ。
「んんッ…男の子ですから、仕方ないですよ。それよりも、貴方達は今から異世界に召喚されてしまいます。それで、放置するのは流石に可哀想かなと思いまして、皆さんにこの女神様から、プレゼントを差し上げています。これならあまり力を使わなくて済むので。本当はこんな事滅多にしないんですよ?でも女神なので。」
えぇ…やたら女神様推すなぁ。何か急に取り繕ってるし。もうどこに突っ込めば良いのか分からんよ。俺はやはり前派だな、後ろも全然行けるが。下ネタです。ごめんなさい。
「それで、あなたには自由自在を差し上げましょう。自由自在は、三つだけ好き力を異世界に持って行ける能力です。」
三つかー、一つなら想定していたが、三つかー。これは想定外だが、問題外だぜ!何せこの俺は常に、自分が能力を手にしたら、と言う永遠の課題について考えてるからな!
「よし!とりあえず、鑑定だ!」
「鑑定ですね。分かりました。あと二つです。」
そうだなー。やっぱ異世界に行くなら最強にならんとな。決めたぜ。
「二つ目は、能力をパクるやつで!」
「吸収ですね。分かりました。では、あと一つ。」
これはもう決めてるんだな。ズバリ、想像を具現化する能力だ。だって考えて見てくれよ?山を二つに割ることを想像するだけで、山が割れたり、無敵になる事の想像をするだけで、無敵になれる。これは、どう考えても最強の能力と言わざるを得ないだろう?
「最後は、想像を具現化する能力で!」
「創造ですね?分かりました。」
ん?何か違った様な…まぁ、いいか。
この短絡思考を後で死ぬほど後悔するとは今の俺は知らないんだな。
「あ、愁弥さんがモタモタしているせいで、ほかの皆さんは行ってしまわれました。ゲートも閉じてしまったので、皆さんと同じ所には行けなくなってしまいましたねぇ。なので、私が適当に飛ばしますね。」
え?ちょ!?まぁあぁー
そして、再び光に包まれた。
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「うわッ。目がぁ、目がぁ〜〜あ゛あ゛あ゛ぁ゛~~~……あ?ここは?」
どうやら洞窟のような所に出た様だ。んー、何もねぇな。まぁ、どうやら、異世界に来たみたいだし、全力でたのしむぞぃ!とりあえず最初の目標は、奴隷ちゃんとうはうはする事だー!
そうして、俺の異世界生活が幕を開けた。