俺は暴力を許された者・・怖い存在だ・・なのに・・何故こんな事になってんだ?
ヤクザ1「何じゃわりゃあ?」
?「圧殺」 30代前半男性 (見た目は20代前半)、黒髪普通、前髪長い、身長169cm、体型普通より筋肉質寄り。
黒いジャケットに、黒いチーパン、菊華紋章が付いた仮面。
ヤクザ2「はああ?」
飲み屋でヤクザが暴れている所をパトロール中に通りかかったようだ。
?「圧殺局です、皆様に迷惑かけるなら圧殺します、今から10秒以内に着席しない場合、実力行使します、その場合、限りなく周囲に迷惑がかからないよう、最短で死刑制度により処刑します」
周囲『クスクスクス・・』
ヤクザ3「はあ?・・ぎゃ~っはっはっはっは、お前みたいなヒョロイガキに殺られる訳ねえだろお?」
ヤクザ4「んひんひんひっひ~っひっひっひっひ、もももう少しまともな嘘つけよくっくっく」
ヤクザ5「おう!おう!兄ちゃん、嘘はよくねえなあ?俺達素人じゃないんだぜえ?圧殺の事は知ってるが、身体的規則ってのがあってだな?お前みたいなヒョロさだと試験にすら受けさせて貰えねえよ・・ばあか!!〈ブウン〉」 殴りかかる。
?「〈スカ〉ではカウント開始します、10」
ヤクザ達『「なんじゃわりゃあ!」「死ねやボケエエ!!」』
?「〈スカスカ〉9、8、7」
ヤクザ達『ぶっ殺せえ!!』
?「〈スカスカスカ〉6、5、4、3、2」
ヤクザ1「うら死ね!!〈ボ!〉(当たるー)」 顎にアッパー。
?「・・〈スカ〉」
ヤクザ1「(な!?嘘?)」
?「・・ゼロ〈シュ〉」 真っ黒な中型内の小型寄りナイフ。
ヤクザ1「うらあ!」 拳。
躱し、後ろ越しに〈ドスドスドス〉腹、胸、喉を刺した。
ヤクザ1「あっが〈ドサア〉」
ヤクザ3「こんガキ・・やりやがった!!てめえらあ!やんぞおお!!」
ヤクザ達『おお!!《シュカカカカラン》』 小刀を次々抜く。
?「・・ふしゅー・・」
ヤクザ2「おおらあ!〈ヒュン〉」
?「〈キン、クン、ドスドスドス〉」右ナイフをナイフを持った逆手右手で払い、右に流し、敵の右肩を左手で抑えながら、脇腹3箇所刺し。
ヤクザ2「あぎゃぐう!?」
次々倒されていくヤクザ達。
一気に3人。
ヤクザ3人『うらあああ』
?「・・〈トン〉」 低い、敵の足元へ。
ヤクザ4「うお!?」一気に下の為、反応が遅れる。
一番前の敵の足を刺し、倒れる敵を肩で突き飛ばし、もう一人にぶつけ、2人倒れる。
ヤクザ5「うお?邪魔!?」
ヤクザ6「しゅ!」ナイフ。
倒れた2人の方へ追撃。
6のナイフを躱す。
倒れた2人の上の一人を先に〈ドスドス〉胸を2回刺し4死亡。
下敷き5のナイフの腕を切りつけた。
5「あっぐう!?」 ナイフを落とす。
6が追撃、5の頭の上に踏みつけ、逃げ、6のナイフを躱す。
5「痛!」
ついでに5の口の中に〈ドス〉ナイフを突っ込む。
5「あが!?」 死亡。
6「てめえええ!!」追撃。
3「っち・・」 逃げる。
6「うらー〈ヒュ〈ボヒュ!〉(うらうらうらうらあら?)」連撃をするつもりだったが、右手首から切り落とされた。
6「ぎゃおおおふううおおお!?〈ボチャチャチャ・・〉」
?「お静かに〈ドスドスドスドス〉」 腹、胸、喉、こめかみを刺した。
3「〈バタアン〉はあ、はあ、はあ、はあ」 裏口から出てきた。
3「んだアイツはあ、はあ、ふざけやがって!!はあ、はあ」
?「〈チャキ、パン〉」銃を撃った。
3「〈ボ〉あ!?〈ドサア、ジワアア〉ひ!?な、何で?」
?「逃げないでください、貴方が逃げたらまた皆様にご迷惑が掛かるじゃないですか・・」
3「お、おまえええ!?銃あったんなら何でえええ?」
?「え?・・ああ・・当然でしょう?煩いじゃないですか?それに臭いし、皆様にご迷惑が掛かるじゃないですか」
3「じゃじゃあ、何で今使ったんだよお?」
?「え?だって逃げようとしたでしょ?逃げられたら圧殺局の汚名になりますし・・それに〈ガ、グイ〉」
3「あっぐ」 3の髪を掴み、引き上げる。
?「逃げてんじゃねえよ・・ゴキブリが逃げたら気分悪いだろ?」
3「う、うう・・助け・・助け・・」
?「・・助かりたいか?」
3「え」
?「助かりたいか?」
3「ええ?た、助かるのか?」
?「ああ、D地区の労働者・・農業やるか?そういう制度がある事も知ってるだろう?心を入れ替えるならー」
3「やる!やる!やるからあ!」
?「そうか・・〈ッピピピ〉・・はい・・俺です・・はい・・そうです・・志願者です・・はい」
?「〈ピ〉・・良かったな・・直ぐにパトカーがここに来る〈プス〉止血剤だ」
3「は・・はは・・」
?「じゃあな・・」 銃を置き忘れる。
3「!!・・・・(死・・死ねえ)〈チャカ〉」
?「・・」 歩き続ける。
3「〈カチ〉!?・・〈カチカチ〉はあ?」
?「ここくらいかな・・」 20m離れた位置で止まり、振り返る。
3「お前・・お前ええ!!」
?「いいですね、いい顔です、では投げナイフでさようなら」
3「パパパパトカーは?」
?「は?んなモン呼ぶ必要ねえだろ?どうせお前らに、心を入れ替えるなんて無理なんだかんよ?」
3「て、てめええええ!!」
?「んじゃあ・・さいなら〈スウウ〉」 8本の串型細いナイフを両手に。
3「待ったああ!ややっぱり心を入れ替えてえええ!」
?「あもう無理〈ビュュオ〉」
3「死ねや糞ボケカスがああ!!お前も人殺しじゃね〈ドスススススススス〉・・」〈ドサア〉
?「・・共食いだよ・・許可がある方が強い・・当然だろ?ナイフ・・返してね?〈ズボズボズボ・・〉じゃあな・・」
正月。
神社。
彼「・・」パトロール中。
高級スーツ「ああ!?もう一度言ってみろコラアア!」 茶長髪の色男。長身。
スタッフ「で・・ですから・・他のお客様のご迷惑となりますので、大勢でのそのようなご参拝は〈ドゴオ〉あぐっは!?ああうう・・」
下っ端が殴る。
黒服達が大勢でご参拝。
高級スーツ「ああん?普通の家族はいいのに、こいつらは駄目だってか?ああ?筋が通らねえなあ?」
スタッフ「・・ごほごほ・・はあ、はあ、す、すいませ・・ごほごほ」
彼「はいはい、すいませんね~」
高級スーツ「は?」
彼「私圧殺です~、今から10秒以内にここから立ち去りなさい、さもなくば強制死刑を実行します」
高級スーツ「・・ああ?圧殺だあ?」
彼「カウント開始しま~す、10」
高級スーツ「っふっふっふ・・確か・・殺したら、見逃されんだろ?」
彼「9・・はいそうですね、8、7」
高級スーツ「野郎共!殺っちまえ!〈ババッ〉」 皆懐に手を伸ばす。
彼〈ドドドドドドドドドドドドドンキキキンコロロ・・〉なら直ぐ死ね」 カトラス早撃ち。
高級スーツのみを残しー。
周りの敵『あ・・ぐ・・が・・』《ドドサアア》 全員倒れた。
野次馬『キャアアアアアアアアアア、ワアアアアアアアアアアア』 逃げ惑う人々。
少女1「あ・・お父さん・・」
妹1「なあにあれ?」
妹2「お姉ちゃん?あれなあに?」
トイレから帰って来た3人の娘。
振袖姿。
高級スーツ「あ・・ま・・参った・・はは・・み・・見逃して・・〈カチャン〉」銃を落とす。
彼「生きたいか?」
高級スーツ「!!ああ!生きたい!だからー」
彼「ならばD地区で農業に従事するか?」
高級スーツ「ああやるやる!」
彼「分かった〈ス、ピピピ〉少し待て、ああ・・俺です・・はい・・志願者です・・はい・・」
高級スーツ「・・〈スウウ〉」 背中腰から拳銃をゆっくり取り出した。
彼「・・はい・・ではお待ちー」
高級スーツ「はは!〈チャキ〉死ね〈ドドン〉あっがふ!?」〈ドサア〉
彼「はい・・そうです死体袋12・・はい・・ああ今のも含めてです・・はい・・ではお待ち〈お父さああああん〉
彼「!?」
少女「お父さん!?お父さああん!?しっかりしてえ!?あ”あ”あ”あ”あ”」 中学生?
妹1「うびゃあああああ」 小学生低学年。
妹2「う・・ううう・・うぎゃあああああ」 もっと小さい。
3姉妹が父親の胸で泣く。
彼「・・〈どうしました?もしもし?〉・・ああ・・いえ・・娘と一緒だったようで・・その・・今泣いてまして・・」
〈そうですか・・それはお気の毒に〉
彼「え?」
〈引き取り手がなければ施設行きですね〉
彼「・・」
〈貴方が責任を感じる事はありません、仕方ない事です、治安の為に〉
彼「ええ・・そうですね」
〈では、直ぐにその娘さんの迎えもご用意致します〉
彼「・・はい・・頼みます〈プ〉」
少女「どうしてええ?ひっぐひっぐ、どうして殺したのおお?」
彼「・・彼らは注意した人に向かって暴力をし、特権である俺に銃を向けた、死刑強制執行だ・・知ってるだろう?」
少女「・・うう・・ううっぐ・・ひっぐ」
彼「今から迎えが来る・・施設に入る事になるからそのつもりでー」
少女「責任とれ・・」〈オオオオオオオ〉
彼「・・は?」
少女「あんたが殺したんだろ!?うちらの将来滅茶苦茶やし!どうしてくれるん!?」責任とれよクズがあ!!」
彼「・・いや・・しかし・・元はと言えばー」
少女「お父さんのした事は私らには何も関係ない!高校も、大学も!もう行けない!軍隊に入るか、野たれ死ぬか二つに一つやん!!そんなの嫌だあ!!普通に暮らしたい!今まで通りに普通にいいい!!」
彼「・・いや・・俺は仕事をしただけでー」
少女「そんなん知らん!責任とって何とかしなさいよおおお!!あ”あ”あ”あ”あ”」 座り込む。
彼「・・え~っと・・」
少女「あ”あ”あ”あ”あ”」
妹1、2『あびゃあああああああ』
彼「〈ピピピ〉」 電話をかける。
〈それは貴方が親代わりになるしかありませんね〉
彼「は!?はあああ!?」
〈それしか道はありません〉
彼「いやいや、だって・・ほら、もっとまともな親戚とか・・」
〈今調べましたが、その子達には親戚はいません〉
彼「え」
〈完全に孤立無援ってやつですね、その子もそれを分かってて、貴方にそんな事を言ったんでしょう〉
彼「・・どうすれば」
〈だから親代わり〉
彼「いやいやそれ以外で!」
〈ないです、戸籍上、貴方の養子とします、それ以外にー〉
彼「・・」 泣いている子供達を見る。
〈彼女達を施設以外での生活から救う方法はないです〉
彼「・・はは・・俺に子育てなんか・・」
〈でしょうね、だから言ってるじゃないですか、貴方が罪悪感を抱く必要はないと〉
彼「・・」
〈それではもうソロソロ施設へのお迎えが来ます、切りますよ?暇ではないので〉
彼「・・」
少女は立ち上がり、言う。
少女「お父さんは悪者だったから殺したんでしょ?だったら私達は?」
彼「え・・」
少女「私達を殺す理由は?」
彼「・・いや・・施設に」
少女「施設なんか死んだも同じじゃない!!」
彼「ハ!?」 自分の過去がフラッシュバック。
少女「ねえ・・何で?・・どうして・・私達が・・施設に入らなきゃいけないの?・・ねえったらあ!!」
彼「う・・っく」
少女「返してよおお、返してよおお、生活を返してよおお〈グイグイ〉」服を引っ張る。
彼「・・」
迎えが到着した。
?1「ああ、この子達ですね?」 男。
彼「・・はい」
?2「さあ、おいで、さ?」
少女「ひ!?」
?3、4『はあい、乗ろうねえ?』
妹1、2も乗せられる。
妹1「お姉ちゃん?っひっぐっひっぐ」
妹2「お姉ちゃあんうっぐうう」
少女「・・全部あんたのせいよ」 乗った。
〈ブロロロオオオ〉 連れて行かれた。
死体処理班が片付けていく中、彼は・・俯いたまま立ち尽くしていた。
夜。
ボロアパート。
〈プルルルルル〉
彼のスマホに電話。
彼「はい・・」
〈起きてました?〉
彼「・・何か?」
〈手続き済ませときましたから〉
彼「・・?・・何を?」
〈え?やだなあ・・親代わりの件ですよ?〉
彼「・・は?」
〈いや・・は?・・じゃなくて〉
彼「いやいや・・ちょっと待ってください?何の話しです?」
〈だって貴方あんなにションボリしていたじゃないですか?〉
彼「はああ!?いやいや!あの・・ええ?」 立ち上がり、歩き回る。
〈それではお父さん!頑張って子育てお願いします、家はあの子達の家を使ってください、売りに出される所を貴方の給料前借りで支払っておきました、地図はスマホで確認してください、鍵は娘さんらが・・ではそういう事で〉
彼「ちょっちょ待ってください!」
〈この件はもう上にも知らせてあります、許可は降りていますから・・というか・・それは貴方の責任だなという事で上の方でも意見が一致したようです〉
彼「いやいやいやいや」
〈という訳です、それとも・・・・白紙にしましょうか?〉
彼「〈ピク〉」
〈どうします?〉
彼「・・ずるいぞ・・てめえ・・つか・・面白がってるだろ」
〈ア~ッハッハッハッハッハッハッハ〉
彼「・・」 空中を睨む。
〈貴方が子育て!?傑作です!!アハハハハハ出来るモノならしてみなさい!せいぜい仇を取られないように気をつけて・・では・・プーー〉
彼「・・糞ってれの性癖女が・・何であんな奴が組織に・・それにしても・・はあ・・どうすっか・・」
翌日。
地図の通りに進む。
彼「・・着いた・・無駄に広すぎだろ・・」
庭が広い。
噴水がある。
豪華な庭師の仕事。
洋館風な家。
彼「・・はあ・・〈ガチャン〉まだ・・来てないのか・・」 門は閉まっていた。
横のスピーカーから声〈ザザ・・どちら様?〉
彼「って居るのかよ!?」
〈ああ・・この声・・あんたか・・へえ・・そんな顔だったんだ・・昨日入った〉
彼「・・そか・・んで・・早く開けろ?」
〈やだ〉
彼「・・・・?」
彼「は?」
〈ここはあたし達の家だ、人殺しは入れない〉
彼「はあ?いやいや、俺が親にならなきゃお前ら施設に逆戻りなんだぞ!?」
〈頼んでないし〉
彼「いやいや頼んだだろ?」
〈あれは・・何とかしてって言っただけで・・一緒に住むなんて言ってないし〉
彼「ああそか・・って、じゃなくて!ここは俺が買ったんだってば!」
〈・・それは聞いてる、けど、あんたが住まなくてもいいじゃん、別にアパート借りれば?〉
彼「いやいや、この家のローンでいっぱいいっぱいだっての!給料6割だぞ!?そんな余裕ねえよ!」
〈・・ッチ・・〉
彼「・・(ええ~)」
〈分かった・・あんたが死んだら・・私達また施設だもんね・・仕方ないから入れてあげるブツ〉
彼「(何でこんな偉そうなんだ?、そして何故俺は何も言い返せないんだ?)」
〈ガチャコン・・ギイイイイ・・〉 自動らしい。
彼「・・ふう・・先が思いやられる・・」 玄関に向かい歩き出す。
〈ガチャ〉向こうで玄関が開き、中から3姉妹が出てきた。
彼「ん?」
少女「あんたの家はそっち」 大きい別家の車庫を指差す。
彼「はああ?」
少女「煩い!これは罰なんだかんね!?お父さん殺した罰罰ば~つ!!」
妹1「そうだそうだ!」
妹2「しょうだ!」
彼「いやいや・・一緒に住まないと、会社の財産?だっけ?それ狙ってる奴らがお前らの命を狙ってるかもしれないんだぞ?今は代理って奴が運営してるみたいだが・・会社の金庫の金塊はお前らにも権利があるんだぞ?だから、その金塊を狙ってー」
少女「煩い!それもこれもみんなあんたのせいでしょ!?」
彼「掃除、洗濯、料理、そいつらの世話、全部お前がするつもりなのか?受験もあるのに?」
少女「煩い、煩い、煩い、煩い、煩あああああい!!」
彼「・・ああそうかい!!んじゃあ勝手にするんだな!俺はあの車庫でせいぜい楽させて貰うぜ!」
車庫に向かう。
少女「・・ふん!!」〈バタアン〉
車庫にはベッド、布団が用意されていた。
彼「・・あ?〈さわさわ〉新しい・・買ってくれたのか?・・ふん!俺の家なのに・・糞ったれ〈ギシ〉」
その夜。
少女「お父さん・・」
妹2人『スピースピー』
黒いバンが1台少し離れた場所に停まった。
忍者みたいな部隊がこそこそと降りる。
リーダー「いいか、敵はたった一人だ、奴が死んでも国は動かない、圧殺は死んでもいい奴しかなれないからな」
皆 《コクン》
リーダー「絶対油断するな、これだけの人数なのにも関わらず失敗したら・・分かってるな?・・お前らは子供を殺せ、俺らは奴を殺す、ゴーゴー」
《ザザザザザザ》
敵の一人が地雷式のセンサーに引っ掛かった。
〈ブブブブ〉 彼のスマホがバイブ。
彼「んん”~・・はあ・・うるせえな~・・ふぁああ」
何もトラップはない。
リーダー「・・殺気もない・・おかしい・・まあいい・・行くぞ」
車庫に忍び込んだ。
布団が盛り上がっている。
リーダー「撃て」
《プシュシュシュシュシュシュ》 サイレンサー。
リーダー「ベッドの下もだ」
《プシュシュシュシュシュシュシュ》
リーダー「・・死んだか?・・確かめろ」
部下の一人が布団をめくった。
〈ポンポポポン〉 四隅のゴミ箱から4つ、飛散型のクレイモアが空中へ飛び出した。
リーダー「っく!?〈ガガ〉」2人の部下の襟首を掴んだ。
《ドバババアアアアアアア》 BB弾並みの小さな玉が爆発により、飛散。
その頃、少女部屋に行く為の唯一の廊下。
スーツ鞄を持った彼が座っていた。
部下1「お、お前は!?」
部下2「おいコイツって」
部下3「ああ、隊長が殺りに行った奴だ!〈チャカ〉」
部下4~7『早く殺っちまおう!《チャカ》』
《プシュプシュプシュプシュプシュ・・》
部隊の後ろから射撃。
部下達『あっがっぐが!?』 一人を残し全員死亡。
部下7「ば・・馬鹿な・・何処に・・じゃあ・・あれは・・」
彼「そ、ただの人形 《プシュプシュ》」
隊長「応答しろ!〈ガガ・・ザザ・・〉どうした?誰か応答をー」 庭を歩く。
隊長の後ろにピッタリな影。
隊長「誰か〈ガ〉むぐ!?」 口を塞がれ、首に光るナイフ。
彼「お静かに」
隊長「~~~~~~~!?」
彼「雇い主は俺が目的か?それともー・・金塊の権利?金塊だったら2回頷け」
隊長「〈コクコク〉」
彼「・・そうか・・分かった〈ビシュ〉」
隊長「あっはぐ〈ビシュウウウウ〉」 口を押さえたまま。
彼「お静かに、子供が寝たなら騒がない、常識ですよ?ししししーー・・」
隊長「っは・・は・・は・・っ・・」〈サアアアア・・〉
月夜に木々が騒ぐ。
彼「・・やれやれ・・死体処理班に手伝って貰うか・・」
その後、キチンと手続きをとり、法的にも付け入る隙がない事を弁護士と一緒に示した。
姉妹が成人するまでは、一時的に彼が権利を有する事となった。
3日後。
朝。
彼「・・ぐう~・・スピ~」
少女「い、一応・・死なれたら困るだけなんだから!」車庫の玄関前に保冷ボックス。
食事らしい。
少女が学校行っている間、妹達が起きてきた。
台所。
冷蔵庫に大きな紙。
ひらがなは読めるらしい。
妹1「ごはんたべたら、くるまのひとと、あそんでもらいなさい」
妹2「あいちゅのとこやあ」
妹1「そうだよね、あたしもいや、じゃあやっつけに行こう?」
妹2「やっちゅえう?」
妹1「そうだよ!わたしたちでやっつけるの!」
妹2「やっちゅえう!」
妹1「いくぞお!」
妹2「おうう!」
彼「誰をやっつけるって?〈ゴクゴク〉」 牛乳。
妹1「〈ビックウウ〉・・」 恐る恐る振り向く。
妹2「あ・・」
彼「・・プハ」
妹1「う・・うう・・ぷぎゃああああああ、バレちゃったあああああああ」
妹2「う・・うう・・うぎゃあああああああああああ」
彼「でゅええええ!?煩ええ!!こりゃたまらん!」 適当にお菓子、ジュースを持って、2階の窓から飛び降りた。
妹1、2『《ピタ》』
妹1「やった・・たいじした・・かった・・」
妹2「かった?」
妹1「かったあ!きゃふふ、かったかったかったあ!」
妹2「やったやったあ」
彼「あ~・・〈ボリボリ〉しんど・・何やってんだ俺・・あ!・・洗濯とか・・どうしよっかな・・う~ん・・皿洗いとかなら・・文句言えないだろ・・洗濯は変態扱いされそうだしな・・と・・そうと決まったら・・〈トトトン〉」家の壁を駆け上がる。
彼「・・」 窓から様子見。
妹1「ごはん、たべよう」
妹2「うん」
妹1「まずはあたためます」
妹2「あたたたたたたう」
彼「(北斗神拳かよ・・ん?)」
妹1「こうして・・〈ガチャン、ピピピピ〉こう、んで・・んで・・こう!〈ブブン、ン”--〉」電子レンジ起動、強で10分・・殻ごと卵。
彼「ぶふぉおお」お菓子を吹いた。
妹2「お姉ちゃんすごおい〈キラキラ〉」
妹1「えっへん、女はおりょうりできないとだめよ?」
妹2「お姉ちゃんじょうずう〈キラキラ〉
彼「ああ”~・・ゴホン・・〈ガラガラ〉」
妹1「う・・う”う”~~」
妹2「う・・う”う”」
彼「待った!待ったあ!美味しい朝ごはん用意すっから!だから泣かないでくれ!頼む!な?」
妹1、2『・・』 顔を見合わせる。
妹1「・・はやくね?」
妹2「ややくね?」
彼「はいはい・・つか・・これだけで足りねえの?」 テーブルには牛乳と、食パン、お菓子、バナナ。
妹1「たまごやき」
妹2「たややごやき」
彼「・・はいはい、分かった分かった、でも取りあえず、この爆弾製造機は止めてっと・・〈ピ〉」
妹1「あ”~!?なにすんのお!?」
妹2「あ~?」
彼「はあ・・そうだな・・危ないとこ見せた方がいいか・・分かった・・〈ピピ、ブヴーー〉」
食後、広い風呂場。
彼「いいか?離れて見てろ?」
妹1「・・」
妹2「・・」
卵2個。
熱い為、手袋、ゴーグル。
姉妹は透明なカーテン。
彼「・・ほい〈ヒュ〉」〈パアアアン〉 壁にぶつかった瞬間爆発。
妹1「うひゃお!?」
妹2「ぶうっぼ!?」
彼「・・ほい〈ヒュ〉」〈パアアアン〉
妹1「うっほほい!?」
妹2「・・う・・う”~・・」
彼「どうだ?ははは危ないだろ~だからー」
妹2「うびゃあああああああああ、お姉ちゃんのばかあああああ、ぜんぜんじょうずじゃなあああああ」
妹1「にゃ・・にゃにゅよう~・・りりのばかあああああああ、うあ”あ”あ”あ”~~~」
彼「どっはああああ、たまらん!ほら!朝飯食べたしもうソロソロ眠くなるだろ?な?寝よ寝よ?つか寝てくれ!」
妹1「やだあああ、眠くないも”お”お”ん”」
リリ「お姉ちゃんのおりょうりもうやだあああ」
彼「だあ、分かった、分かりましたああ、何か・・そう!かくれんぼすっか?な?」
リリ「ひっぐ・・かくれんぼ?」
妹1「あたしかくれんぼしたい!」
リリ「かくれんぼやる!」
彼「はは・・泣き止んだ・・」
リリ「あたし隠れる」
妹1「あたしも」
彼「分かった、俺が鬼な?じゃあ、ルールはこの家から出たら駄目だ、分かった?」
妹1、リリ『分かった』
彼「んじゃあ、数えるぞ~、100までな・・1、2、3・・」
妹1、リリ『クスクス』 風呂場から出て行った気配。
彼「7、8~(何やってんだ俺・・)11~、12~」
その後、缶蹴り、鬼ごっこ、お馬さんごっこ、おままごと、子供の体力は底なしだと思い知らされた。
妹1「高い高いして~」
リリ「あたしも~あたしも~んね~あたしも~」
彼「ぜえ、ぜえ・・はいはい」
リビング。
疲れ果て、眠った子供達。
彼「・・ったく・・やっと寝やがった・・」
ベッドに運ぶ。
妹1、リリ『スウ・・スウ・・』
彼「・・俺のせい・・か・・言うなれば・・仕事のせい・・っていう事なのにな・・でかい借金までして・・何故俺は・・」
妹1、リリ『スウ・・スウ・・お・・お父さん・・』 寝ながら泣いている。
彼「・・せめて・・高校を卒業するまでだ・・それまで・・俺が(本当に?)・・分かんねえよ・糞・・」
〈ギシシ・・〉出て行こうとベッドからー・・。
妹1、リリ『まっ・ん・いかないで・・』
彼「・・〈ピタ〉」
妹1、リリ『待って・・お父さん・・行かないで・・」
彼「・・分かった」
3時間後。
少女「ただいま~・・リリ~?エミ~?寝てるの~?」 2階に上がる。
〈ガチャ〉
少女「ああ・・ここに居た・・〈チュ、チュ〉・・ふふ・・なあにい?その大きいぬいぐるみ、どこから引っ張り出したの?ふふ・・じゃあ・・おやすみ〈ガチャ、バタン〉」
エミ、リリ『スウ・・スウウ・・』 間に大きな熊のぬいぐるみ。
車庫。
彼「・・」 武器の手入れ。
〈コンコン〉 ノック。
彼「・・何だ?」
少女「・・ありがと、面倒みてくれて、あと・・皿洗いも」
彼「ああ・・いいよ・・別に・・」
少女「あんたさ」
彼「あ?」
少女「優しいのに・・何でそんな仕事してるの?」
彼「・・俺は・・優しくなんか・・ない」
少女「・・これからどうすんの?まさか本当に高校卒業まで面倒見る気?あの子達大きくなったらあんたを嫌うかもよ?お父さんの仇だもん」
彼「・・ああ・・そうだな・・まあ・・そん時は・・消えるさ」
少女「無責任」
彼「ああ?んじゃどうしろってー」
少女「知らないわよ!自分で考えたら?ふん!じゃね!晩御飯置いとくから!」 気配が消えた。
彼「・・ああ?おい?・・おい?・・・・・・ったく・・ご飯か・・はあ・・俺は・・どうしたいんだ・・糞・・」
翌朝。
またチビ達の世話。
繰り返しの日々。
2ヶ月後。
世間は夏休み。
〈ジ~ワ、ジ~ワジーー・・〉
車庫は暑い。
彼「死ぬ~~暑い~エアコン壊れてるし~」
少女「嘉月 (かづき)~?嘉月ったら!?」
窓から少女が呼ぶ。
嘉月「ああ?んだよ、蘇亞羅 (ソアラ)・・こっちは今にも死にそうなんだが?ご主人様、会社の金を使って、エアコン直して良いと許可くださいませんか?」
ソアラ「そんな事どうでもいいの!あのね?明日友達と山に行くことになってね?友達の親達全員来れなくって、だから誰か代わりの親が要るの!」
嘉月「・・ええ~・・それが俺?」
ソアラ「よろしく!」
嘉月「嫌だと言ったら?」
ソアラ「ご飯作ってあげない、エアコンも修理しない、お風呂もなし」
嘉月「おいおい!?全部じゃねえか!?」
ソアラ「友達に任せなさいって言っちゃったの!仕方ないでしょ!」
嘉月「・・はあ・・分かりました糞お嬢」
ソアラ「あっそ!そんな事言うならアイスあげない」
嘉月「ソアラお嬢様あああああ!!」
ソアラ「あらなあに?糞お嬢じゃなかったの?」
嘉月「大変お美しいお嬢様です、海のように神々しく、山のように気高く、そして天使のように優しい」
ソアラ「うふふ、大変よろしい」
嘉月「ではでは」 手を伸ばす。
ソアラ「?何?この手?」
嘉月「へ?アイスは?」
ソアラ「ない」
嘉月「・・」
ソアラ「ほ~っほっほ、いや~知らなかったわあ、あんたがそこまで私に心酔してたなんてね~お~っほっほ」 去って行った。
嘉月「・・暑い・・〈グッタリ〉」
玄関〈コンコン〉
エリ「ツッキーアイス要る~?」
リリ「アイスいる~?」
嘉月「ああ・・天使はお前らだったか・・〈ガチャ〉」
エリと書かれた人形。
リリと書かれた人形。
その真ん中にカセットコンロでぐつぐつ煮える鍋料理。
レコーダー〈コンコン、ツッキーアイス要る~?ツッキーアイスいる~?〉
嘉月「・・」
翌日。
エミ「ふん!、行くぞ妹よ!冒険だあ!」虫かご、虫網。
リリ「お姉ちゃんカッコいい〈キラキラ〉」
嘉月「はいはい、そこのキラリン2人、早く車に乗ってね~レンタカーにね~」
?1「ソアラちゃんのお父さん面白いね~」
?2「うんうん」
?3「何かカッコいいし!」
?4「私のお父さんなんか・・はあ・・だめ、言いたくないわ」
?5「あ~っはっはっは、分かる~」
?6「はげ、デブ、臭い、脂凄い、そして何より~」
?1~6、ソアラ『偉そう!・・っぷ・・ぎゃ~っはっはっはっはっはっは』
8人乗りのバンの中は女子だけで大騒ぎ。
エミ「ん~ん?ツキはね~パパじゃないんだよ~?」
皆「え・・」
リリ「パパはね~バンバンされてね~、しんじゃった~」
ソアラ「・・」
?2「え・・ソアラ?・・ホント?」
ソアラ「・・うん・・ほら家って結構やば系だったじゃん?だからツケが来たんだよ、きっと・・はは」
?4「え・・じゃあ・・あの人は?」 運転席を指差す。
ソアラ「あの人はお父さんの知り合いの人で、今は・・まあ、お父さんの代理みたいな・・感じ、あ!でも安心して?知り合いって言ってもソッチ系の人じゃないから!むしろ真面目系?っての?あ、あははは」
皆『・・「何かごめん」「うん」「ごめんね?」「ごめん」』
ソアラ「いいっていいって、そんな事より今楽しもう!川滑りするんでしょ?水着持ってきた?」
皆『持ってきましたあ!やっほおおお』
嘉月「・・(やれやれ)」
エミとリリは交代交代で抱っこされている。
山に着いた。
管理小屋に挨拶し、ペンションにチェックインした後、出発。
ペンション主「ここら辺は猿が時々出ますから、もし出たら、騒がずに、喧嘩を売らないようお願いします」
沢が長い長い滑り台になっている。
?1、エリ『きゃふううううう《バシャアアアアアアア》』 抱っこされ滑り降りるエリとリリ。
ソアラも無邪気に遊んでいる。
嘉月「・・ふう・・」
猿が一匹木の上にいた。
嘉月「・・」 嘉月と目が合った。
猿「・・グルルルル・・シャアアアア・・」
皆「え?・・え?え?」 異様な雰囲気に静かになる。
嘉月「・・はあ」すくっと立ち上がった。
猿1、2、3『あっきゃあ、うっきゃああ、うっきゃああ』 木の枝を激しく揺らす。いつの間にか3匹。
嘉月「・・あいつか・・」
皆の後ろに視線を移す嘉月。
皆「・・え・・」 振り返ろうとー。
嘉月「見るな!」
皆『ええ・・』 固まる。
ソアラ「だ・・大丈夫、おじさん強いから」
皆『ひっぐ、ひっぐ、グス』
皆の上の岩。
そこには完全に立ち上がった2足歩行の猿。
身長は1.5m、体重は見た目よりはずっと重い筈であるが、それでもかなりのガタイ。
ボス猿「シュルルル、シュッルルル」 凄い剣幕で嘉月を威嚇している。
嘉月「・・お前ら目を瞑れ・・」
皆『ええ・・』
嘉月「早くしろ」
ソアラ「皆目を瞑って、早く」
皆『・・』 目を瞑った。その瞬間。《ゾ!》
皆『ひいう!?《ゾゾアアア・・》』 言い知れぬ寒気が襲った。
普通の喧嘩の気配ではない、野生の殺し合いの中に巻き込まれたという恐怖。
嘉月「・・〈スウウ〉」脱力し、悠々と、〈バチャバチャ〉歩き、ボス猿に近づく為に川の中を歩く。
ボス猿「シュルルルル、グルルルルルルル」 唸り声が変わった。
嘉月「・・〈バチャバチャ〉」無表情で、目を見開き、普通に間合いを詰めて行く。
腰から〈シュカ〉黒い中型ナイフ。
ボス猿「グルルルルル」
嘉月「・・〈バチャバチャ〉」
ボス猿「グウルル・・グルル・・ル・」
残り5m。
ボス猿「・・!?」
嘉月「・・〈バチャバチャ〉」〈オオオオオオオオオオオオオオオオオオ〉
ボス猿「!?」大きな虎?が自分の頭の上で涎を垂れ、もう少しで食えると、歓喜の目のイメージがー。
ボス猿「〈ゾ!!〉」
ボス猿「ギッヒイイ!?ギヒャハハ!ビシシャハ!」
他の猿『ギイギイウキャキャカ!』
ボス猿、他の猿共々逃げて行った。
嘉月「あ!?・・(ッチ・・出しすぎた?・・手加減したのに・・感がいい奴だ、もう少し手加減すれば逃げなかったかも、惜しい・・まあ・・子供達に手を出さないように威嚇の意味が大きかったからいいか)」
嘉月「ああ・・もういいぞ、逃げたよ、遊べ~」
皆『〈パアア〉やったあ!やっほおお、おじさん強いですね~!?』
嘉月「おじさん!?・・はは・・おじさんか・・〈ショボーン〉(知らなかった、30代はおじさんなのか)」
その夜。
ペンション主「ええええ!?山の主に会ったんですか?」
嘉月「ああ、いや・・山の主かどうかまでは・・」
ペンション主「いやいや!このくらいの大きい猿でしょう?横にでかい?」
嘉月「ああ・・じゃあ・・それです」
ペンション主「どえええ、それ以前プロレスラーの人の腕を噛み千切って持っていった奴ですよ!」
皆『えええ?おじさんすごおい!?』
嘉月「い、いやあ・・偶然ですよ、あははは」
ペンション主「でもおかしいですねえ・・喧嘩好きな奴で、相手が強そうな程、食ってかかる筈なんですが・・」 首をかしげる。
嘉月「た、偶々でしょうあははははは(俺の方からかかったなんて言えねえな)」
その深夜。
嘉月「・・」〈ギシ〉起き上がった。
防刀ライダースーツ。
その上から鉄のガード仕込みがしてある腕甲冑 (肘までガード)と、足首、ブーツ、を取り出す。
ブーツの先は尖った鉄の塊。
嘉月「熊用だったんだが・・まあいい」
森の岩場。
窪地。
大勢の猿達の中を歩く。
ボス猿「グルルルルル」
嘉月「殺気で誘いやがって・・いいぜ?来いよ」
ボス猿「ウボオオオオオオ」
猿達「アギャアアアアアア、ウギャウギャアアアアア《ブワ!》」 ボス猿の合図で一勢に飛び掛る猿達。
両手には黒い中型ナイフ、腰にはもう2本予備。
嘉月「・・(久々の現場だぜ)ニッ」
翌朝。
嘉月「ありがとうございました」
ペンション主「いやいや、またいつでもいらしてくださいよ、ははは」
嘉月「ははは」
ペンション主「猿達の危険がなきゃもっと人気が出ると思うんですがね、はははは」
嘉月「そうですか、それは良かった」
ペンション主「へ?」
嘉月「それでは失礼します」
ペンション主「ああ・・はい・・さいなら・・」
去った。
ペンション主「さって・・山菜でも採ってくるかなあ、猿に会いませんように〈パンパン〉・・よし!」
お祈りしてから山を登る。
1時間後。
ペンション主「さって・・次は大岩付近の山菜を取るかな?」
10分後。
ペンション主「あ・・何か臭い?・・おえ?何だこの匂いは?おえええ!?くせえ!?一体何のー・・」
目の前、一匹の猿が木の枝に絡まって死んでいた。
ペンション主「!?うっひゃあ!?な?なんじゃあ・・猿かいな・・しかし何でまたそんな所でー・・」
下の大きな窪地に目を落とす。
ペンション主「あ・・あ・・うう嘘だろ・・こ・・こりゃあ・・たまげたあ・・一体何が暴れたんじゃあ」
そこには、50匹以上の猿が死んでいた。
ペンション主「あ!ありゃあ主かや?」
大岩前の巨木の根っこ、もたれ掛かるように、大猿が死んでいた。
その頭は歪に切り取られ、変な形になっていて、脳みそが見え、無数の刺し傷があった。
ペンション主「山の神様が怒ってくださったんじゃあ、こりゃあ、村に知らせねばやあ!!」駆け下りた。
クリスマス。
昼間。
雪は降ってない。
ソアラの家では家族だけでやるらしい。
嘉月「・・何のプレゼントがいいのかな?」
ソアラ「さあ?んな事より・・ん」 外を指差す。
嘉月「・・?」 見ると向かいの家が飾りつけをしている。
嘉月「ああ!飾りつけをプレゼントすればいいのか!」
ソアラ「はああ?んな訳あるか!あれをやらないと始まらないの!」
嘉月「・・え・・って事は・・別?」
ソアラ「当たり前でしょ?バッカじゃないの?」
嘉月「・・」
翌朝。
エリとリリはまだ寝てる。
ソアラは学校。
とりあえず飾り道具を買ってきた。
嘉月「よ、ようし・・まずは・・クリスマスツリーを・・」 庭に生えてるモミの木。
だが、雑草が生い茂り、木々は荒れ放題。
嘉月「・・いいか・・適当・・で・・」
{バッカじゃないの?}
嘉月「~~~~~~あ”あ”もう!分かりました、え~え~、分かりましたとも、やればいいんだろ?やりゃあよ!ったくだいたい何で俺が・・ブツブツ・・」
{無責任}
嘉月「~~~~~あ”あ”はいはい!うっせええなあ!」 梯子をモミの木に掛け、無駄な枝を電動のこぎりで切っていく。
座椅子草刈り機もあまりに伸びていたら意味がない。
立ち仕事の草刈り機。
嘉月「・・ふう・・結構疲れるなコレ・・」
落ち葉や、散らかった草を片付ける。
嘉月「ようやくか・・」 飾りつけ開始。
図面を最初に書いていたがー・・。
嘉月「ん?あれ?コレってこうか?それとも・・こうか?逆か?あ”あ”もう!誰か見てくれる奴がいないと・・やりにくいなあ・・」
試行錯誤。
屋根に登っては降り、登っては降りー・・。
嘉月「ぜえ、ぜえ、やっと・・やっと屋根とモミの木完成・・次は・・下の部分」
もう夕方だ。
嘉月「やっべ早くしないとソアラが帰って来る!絶対驚かせて、ギャフンと言わせてやる!」
2時間後。
エリ、リリ『おなかすいたあ』 起きて、庭に出てきた。
嘉月「あ”あ”あ”馬鹿お前ら!まだ出てくんな!」モミの木の細かな飾りつけ中。
エリ「ふぁああ・・んん”~〈コシコシ〉」
リリ「お菓子は~?ふぁああ・・〈コシコシ〉」
嘉月「台所に適当にあんだろ?好きなの食べていいから!あ!ケーキ以外だぞ!分かってるな?〈バタン〉」
エリ、リリ『はあい』
嘉月「〈ガチャ〉ああ!それからな!冷蔵庫の奥のプリンは俺のだからな!〈バタン〉」
エリ、リリ『《ニヤア》はあい』
嘉月「〈ガチャ〉ビター味だから苦いぞ~〈バタン〉」
エリ、リリ『ええ~』
嘉月「〈ガチャ〉戸棚の引き出しにあるミルクチョコレートはソアラのだから食っていいぞ~〈バタン〉」
エリ「やった!」
リリ「早く早く!私あそこ届かないの!」
エリ「馬鹿ね、そんな時の為に使うんじゃないの、あんたが乗らないあの室内バイク」
リリ「お~、お姉ちゃん頭いい、あのバイクまじダサくて使い道ないと思ってたのに」
せっせと飾りつけ。
嘉月「後は・・家の一部屋と、玄関内だけだな・・ふう・・」 庭は終了したようだ。
もういつ帰ってきてもおかしくない。
ソアラ「ふんふ~ん、らら~ら~・・ん?・・お~・・」 庭の飾りを見る。
ソアラ「結構・・お~・・トナカイだ~・・お~・・サンタさんだあ・・お~・・本格じゃん!」
玄関を開ける。
セロハンで貼ってある飾り。
だがー・・頑張った感が伝わってくる。
赤色が映えるミニクリスマスツリーや、リース。
ソアラ「おお~・・ふんふ~ん・・らら~ら~・・」
リビングにはまだ開けるなの張り紙が。
ソアラ「・・ッチ・・まだ終わってねえのかよ・・でも・・」ドアノブを握った。
ソアラ「・・ま!今日は許してやりますか!」 離した。
ソアラ「んん~らら~ら~」 自分の部屋に行った。
リビングでは嘉月が本格的なモミの木の枝を切った中から、室内で使えそうな枝を選び、とっておいたモノに飾りつけの最中。
室内に入れてから、バケツの中に立て、土を入れた後、水をかけ、固めたのだ。
バケツにはクリスマスの飾りつけで余ったゴミで飾りつけ。
壁や、天井にも、飾りつけ。
もう作ってある飾りが売ってあった為、壁の飾りは楽だった。
後は・・。
嘉月「・・ケーキと・・チキンと・・ジュースと・・ええっと・・それからええっと・・」
ウロウロ。
嘉月「あ・・蝋燭がない・・お向かいさん・・分けてくれないかな?」
お向かいさんに行った。
〈ジリリン〉
?〈は~い?〈キャッキャ〉〉綺麗な女性の声の後ろで、はしゃぐ子供達の声。
嘉月「あの・・向かいの家の者ですが・・その・・蝋燭がなくて・・その、もし良かったら・・分けて貰えませんか?お金は払いますので」
?〈ああ!お向かいさん!ああ、・・ええっと・・ちょっとお待ちください?〉
嘉月「ああ、はい、すいません」
〈ガチャン〉 玄関が開き、綺麗な女性が出てきた。
?「はい、どうぞ」 差し出された袋には、沢山の蝋燭が。
嘉月「え?あの・・こんなに!?」
?「可愛いお子さん達が居るんですもの、雰囲気作りに蝋燭はかかせません、どうぞ、お使いになってください、我が家は買いすぎちゃって・・てへへ・・」
嘉月「〈ドキン〉あ・・そ・・そうですか・・あの・・それで・・御代は?」
?「そんなの要りません」 少し怒る。
嘉月「え?しかし」
?「要らないったら要らないんです、じゃあ私、子供達が待ってるので・・」
嘉月「あ・・はい・・ありがとうございます〈ペコリ〉」
?「ふふ、はあい」
〈ガチャ、バタン〉
嘉月「・・よし・・これで雰囲気はバッチリだ」
ソアラ「皆~、やっと、準備が終わったってよ~」
リリ「やっと~?」
エリ「もうお菓子食べちゃっていいの~?」
ソアラ「だ~め!ご飯入らなくなるでしょ?しっかり食べてあげなきゃ可愛そうでしょ?ツッキーが」
リリ、エリ『はあい』
ソアラ「ほらほら、行くわよ!」 皆で下の階へ。
リビングのドアを開けた。
暗い?
その時、センサー式のライトが〈パ〉
ドア付近の上だけ、一個のライトが点いた。
ドアには糸が結んであり、ある程度引っ張った瞬間、〈パパパン!〉クラッカーが、ドア付近で発破。
エリ、リリ、ソアラ『うびゃお!?』
〈パ〉〈パ〉〈パ〉
ピタゴラはまだ続いていて、ビー玉がコロコロと転がって行く、そのビー玉が転がるとセンサーが感知し、上の小さいライトが次々光っていく。
法則を見る時間的余裕があるように、4・5秒もの間、ただ転がる。
子供達はじっとビー玉を見る。
次々作動していく仕掛け達。
倒れ、動く人形達。
仕掛けの小さな旗には「元気?」「ハロー」「エリちゃん」「リリちゃん」「ソアラちゃん」という文字が連動しながら倒れはためいていく。
〈パ〉プロジェクターでタワーコップにクリスマスツリーの映像が映る。
仕掛けで上のサイダーのペットボトルが倒れ、タワーコップの頂上から〈シュオオオオ〉注がれていく。
エリ、リリ、ソアラ『・・・・』 驚きのあまり声が・・。
次の仕掛けは大きな熊のぬいぐるみが天井から落ちてきた。
そのタイミングでボイスレコーダーから、嘉月の「ハハーようこそー」の声。
そして、最後は安い磁石を使ったトリック。
大きな一枚板が〈パ〉と照らされた。
ビー玉が落ち、糸を切ると、ギリギリでひっくり返らないようにしていた糸達が一気に切られていく。
〈パタパタパタパタパタパタ・・〉 次々に斜めだった紙達が真正面になっていく。
ソアラ、エリ、リリ、メ リ ー ク リ ス マ ス ! !
〈パ〉板の隣の室内クリスマスツリーを上の大き目のセンサーライトが照らす。
子供達『・・』
その2秒後。
〈パパン!〉 室内ツリーの下からクラッカー発破。
子供達『・・』
〈パパ〉部屋の全体の明かりが点いた。
見ると、隣に嘉月の姿。
嘉月「・・ど・・どう?・・良かった・・か?」
リリ「・・」 何も言わず腰に抱きつく。
嘉月「お!?おい?」
エリ「・・」 何も言わず腰に抱きつく。
嘉月「おい?・・お~い?良かったって聞いてるんだが・・」
ソアラ「・・」 ソアラまで何も言わずに肩に抱きつく。
嘉月「・・・・(あれ?これって良いのか?)ああ~まあ・・ほら・・あれだ・・食べて飲もう?な?」
その後、部屋の明かりを薄暗くし、蝋燭を窓辺や、キッチン、雰囲気が出る所に灯し、皆で食べて、飲んだ。
エリも、リリも・・ソアラも・・嘉月の傍を離れようとしなかった。
ソアラ「・・はい・・」 ケーキをあ~ん。
嘉月「(えええええ)・・あ・・はい〈パク、モグモグ〉(何か・・やりづらい)」
エリ「あ~ずるい!エリも!〈ドス〉はい、あ~ん」 デカイ。
嘉月「あ、あの~」
ソアラ「ぶふぉお!」吹く。
エリ「あ~ん〈ズズイ〉」
嘉月「あ・・あ~ん・・〈バク!モキュモキュ〉んぐぐ」 噛めない。
エリ「おいしい?ツ・・ぱ・・パパ」
嘉月「!?」
ソアラ「・・」
リリ「パパあたしも~あ~ん」 小さい。
嘉月「んふ~んふ~」ちょっと待ってと手で合図。
ソアラ「何泣いてんの?はは・・」
嘉月「(え)」 手で目を触る。
濡れていた。
嘉月「・・(俺が・・こんな事で?)」
リリ「ね~あ~んまだ~?」
嘉月「・・ひっぐ・・ぐ・・ぐぐうう・・うぐうう・・」 肩を震わせる。
エリ「パパ泣いてるの~?よしよし、よしよし」
リリ「りりもやる~パパはいい子、いい子」
ソアラ「・・っぐ・・う・・」席を立って、部屋を出た。
嘉月「・・うう・・ぐうう~~~・・・うぐうう~~~~・・グス・・ぐぐうううう~~~」
翌朝。
嘉月の姿は無かった。
テーブルには書類一式のダンボール。
ソアラ「はあ、はあ、はあ、はあ嘉月いい!はあ、はあ、嘉月いい!」
ソアラ「アイツ・・まさか・・」
エリ「ねえ、パパは~?」
リリ「パパは~?」
ソアラ「・・すぐ、帰ってくるわよ・・」
エリ「ホント?」
リリ「ホント~?」
ソアラ「ええホントよ・・だからお家に入ってなさい?風邪引くわ」
エリ「うん」
リリ「分かった」
〈バタン〉
ソアラ「・・きっと・・」
その夜、ライトアップされた庭の飾りつけを見て、3人で泣いた。
2日。
3日。
4日。
帰ってこなくなってから一週間が過ぎた。
晩御飯。
エリ「・・」
リリ「・・」
ソアラ「どうしたの2人共?全く食べないじゃない?お腹痛いの?」
エリ「つまんない・・」
リリ「パパがいないとつまんない」
ソアラ「・・からかって遊んでたもんね・・」
エリ「パパもう帰って来ないの?」
リリ「来ないの?どこか元のお家帰っちゃったの?」
ソアラ「・・」 限界だった。
ソアラ「・・前のパパと・・今のパパ・・どっちが好き?」
エリ「え?・・う~んとね~・・前のパパも好き~、だけど・・怒ると凄く怖かったから・・今のパパは怒らないし、面白いから好き~」
リリ「リリも~」
ソアラ「・・前のパパを殺したのが・・今のパパでも?」
エリ「え」
リリ「そうなの?」
ソアラ「〈コクン〉」
エリ「・・じゃあなんでお姉ちゃんはパパと仲良かったの?」
リリ「そうだよ、何で~?」
ソアラ「それは・・」
今までのやり取りを思い出す。
冗談や、悪戯、嫌味の言い合い、口喧嘩、そして仲直り。
ソアラ「・・なんか・・楽しかったから・・前のパパは・・悪い事してて・・忙しくて・・ろくに喧嘩も出来なかったし・・何か・・これが・・こういうのが、本当の親なのかなとか・・思った」
エリ「・・」 何も言わず抱きしめる。
リリ「・・」何も言わず抱きしめる。
ソアラ「帰ってきて欲しいよ・・」
エリ「うわああああああああん」
リリ「うあ”あ”あ”あ”あ”あ”ん”」
ソアラ「うあ”あ”あ”あ”あ”ん”、うわあああああああん」
盗聴機。
大きい熊のぬいぐるみの目玉。
?「やれやれ・・私が何故この組織にですって?・・ふふ・・教えてあげようじゃないの」
橋の下、ホームレス。
ホームレスの朝は早い。
嘉月「ふあああ」
歯を海水で磨き、水ですすぐ。
ゴミ集め、魚釣り、係り分け。
嘉月は魚係り。
毎日大量にとってやった。
嘉月「〈ビチビチ〉ほうれ、おいちゃん達、今日もいっぱい食いねえ!だ~っはっはっは」
泳ぎながら捕まえる。
網で。
おじちゃん達『あ~こりゃすげえ!イカ、タコ、ナマコ、おお!エビだぞいやいや~、やっぱツッキーは天才だわあ、漁の、いや・・狩りの天才!』
嘉月「だ~っはっはっはっは、任せんかい!」
おじいちゃん「よ~、ツッキーやあい、お客さんだぞおおい」
嘉月「ああ~?」 見上げると・・。
黒スーツ姿の人達。
?メガネ「・・〈ペコ〉」 お辞儀。
圧殺局。
ベンツ車内。
嘉月「俺を殺しにきたんなら、反抗するぜ?」
?メガネ「まさか・・組織内で1、2を争う程度の僕では・・化け物と呼ばれていた貴方の足元にも及びません〈ス〉」 メモリーカード。
赤と、青。
嘉月「ああ?何?」
?メガネ「赤は家族、青は仕事・・どっちか選んでください、残りは抹消します」
嘉月「・・家族って・・俺には家族なんかー」 青のカードに触ろとー。
?メガネ「そういえば・・あのお嬢さん・・貴方が失踪したと、発表するそうです」
嘉月「〈ピタ〉・・何?」
?メガネ「まだ、あの子は18になっていない、つまり、役員の権利は有していない、なのに、莫大な遺産が約束されている、あの子は確か今15でしたか・・3年・・ですか・・十分でしょうね・・殺すには」
嘉月「・・馬鹿な・・何故そんな・・そんな事をすれば命を狙われる事くらいー・・ハ!?」
?メガネ「よほど誰かさんに会いたいんでしょう」
嘉月「・・発表は何時だ?」
?メガネ「本日の午後18時です、場所は あ の 会社の地下一階会場、盗聴記録は赤のカードに」
嘉月「要らん!〈バタム〉ったく・・あの大馬鹿野朗がああ!!」
〈バタム〉
?メガネ「この車をお使いください」
嘉月「は?」
?メガネ「鍵です、免許はボックスに」〈ヒュ〉
嘉月「〈パシ〉・・何の真似だ?何のメリットがある?」
?メガネ「・・それはこっちのセリフですよ、 先 輩 」
嘉月「っふ・・」 駆け寄り、運転席に乗り込む。
?メガネ「実は・・貴方が青のカードを選んでたらー・・」
嘉月「・・」
?メガネ「ぶん殴り、赤だろうがって説教しろという命令でした」
嘉月「・・悪かったな・・冷や汗かいたろ?」
?メガネ「ええもう、こんな仕事願い下げですよ、コレしかも残業なんですよ?」
嘉月「・・はは・・同情するよ〈ピピボヒュウウウウウン、ギュギャギャギャブウウウウウウン・・〉」
?メガネ「・・はあ・・さって・・〈バババ・・〉」
ヘリが飛んできた。
?メガネ「では私も・・残業時間は終了しましたので・・次のエージェントの元へ行きますか・・〈バババババババババババババババババ〉
17時50分。
会場控え室。
リリ「ふんふ~ん」何か絵?を持っている。
ソアラ「リリ?何ソレ?」
エリ「何かね、リリ教えてくれないの」
リリ「内緒~」
?「お時間です」
ソアラ「・・はい」
〈ギュキキキー〉 会社ビル前に到着。
嘉月「はあ、はあ」 守衛のゲートを飛び越える。
守衛「ああ!?おい!?進入者だああ!?誰かああ!誰かあ!〈ピュイイイ〉」
守衛達が出てくるわ、出てくるわ。
嘉月「・・時間がねえ・・相手は・・〈ビュオ!〉」僅かな守衛達の人混みの隙間を抜けていく。
守衛達『!?』
嘉月「ねえんだっての!」
17時55分。
壇上に上がるソアラ。
エリ、リリも一緒に上がる。
役委員達 《パチパチパチパチ》
ソアラ「本日は皆々様方には、私個人の発表となる、私的な会見に、お忙しい中おいで頂き、誠にありがとうございます、さて、・・既にご存知の方も多いと思いますが、3週間程前から、私達の親代理であった、ソレッダ・ソサエ・嘉月氏が、行方不明の件についてですが・・事実です」
役員達『ざわざわざわ』
ボディーガード1「誰か・・誰かアイツを止めろおお!」
他ボディーガード達『うおおおおおお』
嘉月「・・どけ・・どけええええ!!《ボボボボグゴド》」
18時00分.
スーツがソアラに耳打ち。
ソアラ「ではお時間になりましたので、発表します、エリ、リリの姉妹は・・この度施設にー・・」
嘉月「よせええええ!!」会場の真ん中のテーブルの上に立つ。
ボロボロな格好。
汚い浮浪者の格好。
髭は伸び放題。
髪は伸び放題。
ソアラ「・・何しに来たの?」
嘉月「そりゃコッチの台詞だっつんだよお!馬鹿!何考えてんだばあか!!施設にソアラ!お前はもう15で入れないんだぞ!?・・お前死ぬぞ!18になるまでコイツらがのほほん待つ訳ねえだろうがああ!!」
ソアラ「煩い・・うるっさいのよこのチンカス!」
嘉月「は!?チン?」
ソアラ「あんたに何が分かんの?どれだけ不安だったか分かる?恐ろしくて学校にもろくに行けない私の気持ちがあ!!あんたがあの家に居ない事なんか、見張ってれば直ぐバレんのよ馬鹿!この子達だけでも生かしたいって考え分かんないの!?」
嘉月「コッチは完璧な工作して出たんだっての!馬鹿はお前だばああか!だいたいそりゃお前の家を見張ってた場合だろうがあ!圧殺局ならともかく、チンピラの気配なんかとっくにないわボケえええ!!その他諸々書いてただろうが、あの手紙によお!?」
ソアラ「はああ?あの手紙?どの手紙よ?」
嘉月「はああ!?ダンボールの中に入ってただろうが!?」
ソアラ「知らないわよ!入ってなかったそんなの!」
嘉月「はあああ!?ホンット馬鹿だなお前、入れたんだよ、一番上に入ってた筈だぞ!?」
ソアラ「どんな紙よ?」
嘉月「どんなって・・こう・・ああもう・・今はそんな事はどうでもいいんだよ!とにかく俺が戻ったんだ、だからー・・」
ソアラ「・・だから?」
嘉月「え・・」
ソアラ「一回見捨てた癖に」
嘉月「違う俺はー」
ソアラ「違わない」
嘉月「・・俺はー・・」
ソアラ「あんたなんか親でもなんでもない、今すぐここからー」
エリ「・・〈ギュ〉」
リリ「〈ピピヒュウイイイイ・・ガガ・・〉ああ~・・あ~・・テステス・・あ~・・ごほん・・え~っと~・・パパあのね~・・ソアラお姉ちゃんと、エリお姉ちゃんね~いっぱいいっぱい泣いたの~・・んでね~・・あ~・・ええっと~・・ええっと~・・ガガ・・・・・う・・・・うう・・・・」
会場の役員『・・・・』
守衛達『・・・・・』
悪者達『・・・・』
皆が待つ。
今はこの小さい少女の話を聞かなければいけないと、その雰囲気に飲み込まれー。
リリ「リリね、ずうっと、待ってたの、でもこの発表が終わったら、ソアラお姉ちゃんと離れなくちゃいけないって・・うう・・ひっぐ・・ひっぐ・・教えてね~・・もらったの・・ひっぐ・・そいでね?・・そいで・・パパが・・戻ってきてくれたら・・全部全部元に戻るのにっでええ・・ぞじだらああ、ぞじだらああ、皆さびじぐだいどにっであ”あ”あ”あ”」
嘉月「~~~~~」
リリ「ババもぼっべぎであ”あ”あ”あ”、まだ、ひっぐ、まだもぼっべええあ”あ”あ”あ”」
嘉月「・・ソアラ・・いや・・エリ・・リリも」
ソアラ「・・」 下を向いている。
嘉月「・・すまなかった」テーブルの上で土下座。
ソアラ「・・」一瞬見てー・・また視線を伏せる。
ソアラ「・・リリ・・エリ・・どうする?許す?」
エリ「・・」
見合わせる。
リリ「・・」
エリ、リリ『ドゲザは一番だからね《ニコ》』
ソアラ「・・ふう・・条件があります」
嘉月「・・はい」
ソアラ「晩御飯当番3年間毎日、トイレ掃除毎日、おもちゃ片付けは15時までに一回はやる事」
嘉月「そんな!?いくらなんでもそれは厳しすぎー」
ソアラ「あ”あ”あ”ん”?」
嘉月「・・はい・・分かりました」
ソアラ「・・おやつ1週間抜きね」
嘉月「ええ~!?」
ソアラ「あ”?2週間にしようか?」
嘉月「・・いえ・・1週間でお願いします」
?「・・」 〈パチパチ・・〉
〈パチパチパチ〉
《パチパチパチパチパチパチ》
《わああああああああああパチパチパチパチパチパチパチ》
悪者1「・・ッチ・・やっとられんわ」
悪者2「どうするので?」
悪者1「・・ふん!儂も歳とったかの・・グス・・」
悪者2「よろしいので?メリケン共に先を越されますよ?今回の件で余計な競争相手が増えました」
悪者1「・・」 嘉月を見る。
悪者1「・・ふん大丈夫じゃろ・・運命は、あの姉妹の味方のようじゃしな・・」
悪者2「は?・・はあ・・」 ドアから出て行った。
立ち聞きしている一人の白人。
白人「くだらない・・くふふふふ・・くだらない・・くふふふふ」 〈オオオオオオオオオオオオオ〉
半月後。
ソアラ「もう!明日学級参観なんだってばあ!来てよお!エリと、リリも一緒にさあ!」
嘉月「その日は少し野暮用がありまして・・」
ソアラ「向かいの奥さんなら、その日いないよ?」
嘉月「ふえ!?何で?いやいやそもそも何で!?」
ソアラ「そりゃ分かるっての!あんだけ日中でれでれ窓から向かいの家眺めてたらね、そりゃあねえ?」
嘉月「いやあああああ、止めてええええ、あ”あ”あ”あ”つかつか、何で居ないの?」
ソアラ「そりゃあ・・ねえ?分かるっしょ?〈ニヤア〉」
嘉月「嘘だ・・嘘だああああああ」
ソアラ「残念でしたああ、交際2年だそうで~す」
嘉月「嘘だあああああああああ!!」
ソアラ「まあ、まあ、元気出しなって、明日来てくれたら、寝かしつけ当番変わったげるからさ!」
嘉月「ちっくしょおおおお、俺のマイハニーは何処なんだああああ!?」
ソアラ「さあ?」
嘉月「あ”あ”あ”、歳ばかり取って行くううううう」
ソアラ「まあまあ、あたしが大人になったら結婚したげるから!〈ドキドキ〉」
嘉月「・・は?・・はああああああ~?寝言が聞こえましたが~?〈ボッケ~〉」
ソアラ「~~~~~〈ボゴドガバキ〉」
ソアラ「言ってきま~す〈キラキラ〉」
嘉月「い・・いって・・しゃ・・〈ピクピク〉」
玄関前。
?メガネ「では行きましょうか・・」
ソアラ「何も毎日・・」
?メガネ「いえ・・これも元々は家の失態の責任・・仕事ですので」
ソアラ「・・じゃあ・・学校まで」
?「かしこまりました」 〈バタム〉
深夜2時45分。
嘉月宅。
白人「はあ・・気持ちい・・」 屋上。
白人「はあ・・夜風が最高だ・・〈ヒュオオオオオ〉」
白人「こんな日に・・死ねる・・とは・・ね」いくつもの胸に刺し傷。
嘉月「中々強かったぜ・・お前」
白人「・・私が死んだ後、部隊が・・来ます・・姉妹を殺しにね・・逃げ道はありません・・くふふふ〈シュカ〉」 〈ドサアア〉額にナイフが刺さり、倒れた。
嘉月「・・ああ・・いいぜ・・いい風だ」 〈ヒュオオオオオオ〉
ソアラ。
エリ。
リリ。
映像が浮かぶ。
嘉月「お前らが大きくなる、その日まで・・守ってやるよ・・罰はもう懲り懲りだからな」
半月前ー。
?メガネ「送り迎えのみです、家の警護は仕事に入っておりません・・それは・・貴方のお仕事かと」
現在。
嘉月「・・ふん〈ピピン〉」 矢に縛った空中飛散型のクレイモアのピンを抜き、《ギリリイイイ》弓を構える。
矢は2本、一気。
《ガラララ》バンの扉が開いた。
白人部隊リーダー「全て殺せ、汚い小便共なんかにはあの会社は勿体ないデ~ス」
白人達『イェッサ!』
嘉月「むかつく鼻の穴しやがって・・でかすぎんだよ、よく言われないか?それ虫入んないの?ってな!」
《バン、ビュボボ》
白人「うふふふ、今日は特別な肉料理が《ヒュ》ん?《ババアアアアン》」バンドアから入った矢。
出た3人以外、死亡。
白人3人『!?、??、!?』
嘉月「・・」〈ヒュザザザザザ〉 目は見開き、無表情で走って来る。
白人3人『《ゾゾゾアアアア》』
嘉月「諦めろ・・この家は・・会社は・・」
白人3人『~~~~!!』
嘉月「俺が居るからな」
?1「トギレマシタカ~・・プレデターハ?」
?2「正常に稼働してます・・あ?・・」
?1「ドウシマシタカ?」
2「いえ・・何か・・映像拡大します〈カタカタカタ〉」
スナイパーライフル構え中。
〈ビュガーーー〉次の瞬間映像が途切れる。
?1「ワッツ!?」
?2「撃墜されました」
?1コウド2000ダゾ?バカナ!?マグレだ!!〈バン〉・・オノレ・・カヅキ・・」
嘉月「・・」
エリ、リリの寝顔。
ソアラの寝顔を確認。
嘉月「・・ふぁああ・・おやすみ・・〈ガチャ、バタン〉」
ソアラ「・・おやすみ・・」
10年後。
2月。
嘉月「ソアラ・・結婚おめでとう」
ソアラ「・・お父さん・・ありがとう」
ソアラは結婚し、エリは大学1年、リリは中学生となった。
会社は全てソアラに譲渡され、ソアラの夫が副社長、もう・・あの家に嘉月は必要ない。
住み続けるかどうか悩んだがー・・、エリもリリもソアラの夫になついている。
そんな風景を見た嘉月はー・・静かに消えた。
嘉月42歳。
嘉月「・・はあ・・」港でボーっ。
嘉月「ローンも終わったし・・これからどうすっかなー・・また圧殺局ってのも・・何かなあ・・」
?「あ!ごめんなさい!」
嘉月「んお?」
犬「ッハッハッハッハッハ〈ジョーーーーーーー〉」 おしっこ。
嘉月「どえええええええええええ!?〈ババ〉」 離れる。
?「あ、あのう!ホントにごめんなさい!この子いつもならこんな事絶対しないんですけど、あれええ?どうしちゃったの?リリー?」
美人な女性だった。
歳は20代後半。
しかし、結構・・・・ボロい靴だ。
嘉月「(え?リリ?)」
?「あのすいません、私、あの・・そうだ!家、近くなんです、良かったら洗濯しますよ!私得意なんです、洗濯!どんな汚れもこの手でピカピカにー」
嘉月「・・・・もしかしてー・・手洗い?」
陽子「はい!得意ですよ!〈ニコ〉」
嘉月「・・っぷ・・プハハハハハハハハハ・・ひっひっひ~・・今時・・手洗いとか・・っひっひ~ないわあ~」
?「ム!世の中には貧乏人が居るから助かってる人がいるんです!いいじゃないですか!食べるに困ってないですし!」
嘉月「・・まあ・・とりあえずじゃあ・・その洗濯の腕前を見せて貰おうか?」
?「・・〈ジーーー〉」
嘉月「?・・何?」
?「立派なコート・・困ったわ・・こんなの洗った事ない」
嘉月「・・いいよそんなん適当で」
?「ええ?いいんですか?」
嘉月「うん」
?「貴方・・もしかしてお金持ちの方ですか?」
嘉月「ん?いやいや普通普通」
?「・・まあ・・とにかくお詫びしたいので・・どうぞ、案内します」
嘉月「は~い」
道のりで話した内容によると、名前は東雲陽子 (ヒノノメヨウコ)、28歳、今は祖母と2人暮らし。
仕事はパチンコ店員。
祖母の家で暮らしているらしい。
物凄いボロい家に着いた。
嘉月「・・(廃墟かな?ホームレス?)」
陽子「ただいまあ」
お婆ちゃん「おう!おかえり!・・おんやあ?まあた余計なモン拾ってきたんじゃないだろうねえ?」
歩いて来る。
陽子「違うの、お婆ちゃん、この人はー」
お婆ちゃん「・・〈ジトーーー〉」
嘉月「・・うう」
高そうなコート。
高そうな靴。
キチンと剃られた髭。
整った眉毛。
健康そうな体。
そしてー・・優しそうな目。
陽子「~~それで、家に呼んだのって聞いてる?」
お婆ちゃん「・・ふん!まあまあじゃな・・まあ・・上がっていきんさい」
嘉月「・・はい」
陽子「ごめんなさい・・私が男の人連れてくるといっつもこうなんです、そのお陰で未だに彼氏出来たことなくて・・」
嘉月「(いやそれ言う必要ないんじゃ・・天然なのかな?)」
陽子「あ、でも大丈夫です!死にはしませんから!」
嘉月「(う~ん・・天然だあ)」
お婆ちゃん「何しとる!はよこんか!」
嘉月「あ・・はい・・お邪魔します」
〈ガラララララガタン〉
中も凄い・・ボロい。
〈ヒューーーガタガタ〉すきま風が凄い。
陽子「・・ごめんなさい、こんな家で」
嘉月「・・いやあ・・初めてだなあ・・ここまでなのは・・はは・・まあ・・とにかく洗濯お願い」
陽子「はい!コタツに入って、待っててください!」
嘉月が案内されたコタツには、お婆ちゃんが既にお茶準備して待っていた。
お婆ちゃん「はよ、お入り、寒かろう」
嘉月「ああ・・はい〈モゾモゾ〉」
お婆ちゃん「〈ズズーー〉」
嘉月「・・」
お婆ちゃん「んで?」
嘉月「は?」
お婆ちゃん「あの子・・アリかい?ナシかい?」
嘉月「・・はい?」
お婆ちゃん「恋人に、アリか、無しか、聞いてんだよ・・〈オオオオオオオオオオオ〉」
嘉月「(ひいいいい!?)」
お婆ちゃん「私も・・もう、長くないからねえ・・あの子・・男運が悪いんだよ・・連れてくる男はみ~んなチャランポランさね」
嘉月「・・助けてるんですね」
お婆ちゃん「あの子は、そうは思ってはいない、だけどー・・」
嘉月「?」
お婆ちゃん「あんたはー・・今までとは全然違うようだがね〈ズズーー〉」
嘉月「・・最初に・・」
お婆ちゃん「え?何だって?」
嘉月「最初に、お婆ちゃんに男を見せに来るんでしょう?だったら、お婆ちゃんの利目を信頼してるんだと思いますよ?」
お婆ちゃん「・・そうかねえ〈ズズーーー〉はあ・・」
嘉月「そうですよ」
お婆ちゃん「あんた・・金持ちかい?」
嘉月「・・いいえ」
お婆ちゃん「・・そうかい、でも・・ま・・いいさね・・アリなら・・幸せにしておくれよ〈ズズーー〉」
嘉月「・・」
〈ガラララ、バタン〉
〈ガラアア、パタン〉
陽子「終わりましたあ!じゃああん!〈パン〉後はコタツの中に入れとくだけです!」
嘉月「〈スンスン〉お~~匂い取れてる」
陽子「でしょでしょ?」
その後、3人でお茶をし、楽しく談笑。
帰る時。
陽子「あの・・」
嘉月「そうだ!」
陽子「え?」
嘉月「また遊びに来ても良いですか?」
陽子「〈パアア〉はいい!うええええん、是非にいいいうええええ」
嘉月「はは・・じゃ」
お婆ちゃん「〈ニッコニッコ〉」
安いホテルに泊まった。
宛もなく彷徨う。
スマホには圧殺局に関するデータは残っていない。
全て消去した。
もう・・人殺しはやめたかった。
漫画喫茶で泊まっていた時、鍵を開け、部屋に戻ると小切手とメモがPC画面に貼り付けられていた。
嘉月「・・はあ・・仕事か・・こんな所まで探しにきやがって」
メモ〈退職金だ受け取れ、良い父親だったと一同思ってるよ、カトレイと、その他より〉
嘉月「・・っふ・・カトレイ・・お前が無理やり変えたんだろ?ったく・・最初の挑発も、ハッパのつもりだったんだろ?・・まんまとハマってしまった訳だがー・・ん?」
小切手〈1,000,000,000〉
嘉月「一、十、百、千・・十億・・一、十、百、千・・十億・・待て待て・・落ち着け・・ふっふ・・あの・・あの組織が?はは!・・んな太っ腹な訳が・・一、十、百、千・・じゅ・・・・十億・・〈プルプル〉どええええええええええ!?」
隣り〈ドンドン!〉
嘉月「あ、しゃあっせん」
3週間後ー。
東雲家。
〈ピンポーン〉
陽子「お婆ちゃん出て~?今手が離せないの~」
お婆ちゃん「あいよ~・・はあ・・寒いねえ・・この家は・・〈ピンポーン〉はいは~い、今行くよ~」
〈ガタン、ガララララ〉
お婆ちゃん「はい?どちらーーーー・・」 何とも言えない表情にーー・・。
Fine。