2.フィンランディア_1
2ー1.
一言で言えば、映画村のような印象を受けた。
そのくらい現代に生きている(暮らしていた?)俺には見慣れない光景が広がっていた。道中の馬車で進んできた道が舗装されていないのはまだしも、街の中に入っても道は舗装されていなかった。
というか、街と言うよりもはや村だ。なんて言えばいいのかもわからないが、いわゆる土壁と瓦や板張りや、萱のような、それは家によって様々だったが、それらによって屋根が作られたこじんまりとした民家が並んでいた。
教科書だとかドラマの中でしか見たことの無いような光景だ。
通りを行き交う人々も和服と洋服が混在している。ただ言えることはリリアさんがさっきまで着ていた立派な洋服や、それに並ぶ和服を着ている人は一人もいない。
俺達が今着ているような作業着に似た洋服を着ているか、和柄というだけの着物を着ているかのどちらかだ。
和柄といっても派手な柄や帯ではなく、本当にテレビの中でも注釈やナレーションが入りそうなくらいに貧乏な村の様子そのものだった。
「これは…すごいですね…。」
「どういった意味ですか?」
「いや……この村って…さっき来る途中で聞いてた生活ぶりとだいぶ違うんですけど…。特別な事情とか…そういうの、あるんですか?」
『例えば飢饉とか独裁政治とか?』なんて言葉が出そうになったが危ういところで飲み込んだ。
まだまだこの国のことはよくわからない。あんまり不用心にマイナスな発言は控えるべきだろう。
いや、すでに口にしているような気もするけれどグレーゾーンだよな?
「そうなんです…本当はする必要のない生活を人々は強いられている…。それをなんとかしたくて、私はここにきたんですわ。
あとここはあくまで村という規模ではありません。この帝国を支える二十四小家の一つ、竜宮寺家が治める立派な彼らの領地です。
……というか涼介様、せっかく同い年とわかったのですからそんな言葉遣いよりもっと砕けた話し方で…いきません?」
なんだこれ。
先に進もうとした俺の後ろでリリアさんは立ち止まってしまった。振り返るとすごく恥ずかしそう、というわけではないけれど少しだけ視線を泳がせている。
言った手前、返事がうまいこと待ちきれないらしくチラッとこちらを1度見てから、胸元で組んでいた手を組み替える。
というかリリアさんがこの街の貧しさをなんとかしたいってのはわかった。熱意も感じる。
ただ、どうやら領主の話は興味がないかしたくないかのどちらからしい。俺と友人のような距離感をもう少し詰めて、本来の目的である貧しさを変えることが優先のようだ。
つまりこれは『てかタメなんだよね?タメ語でいこうよー、堅くなーい?』っていう話だろ。
そんなの俺の方が動揺する。だって女性にこんな風に振る舞われたことなんてない。そして目の前にいるのはクラスどころか学年に一人レベルの美少女となれば奇跡に近い。
まぁそんなことを品評するほど俺の顔面が世間様と戦えてるかといえば…。それはもうわかるだろ。な。
「わかりました、じゃあ…まぁ…。よろしく、リリア。」
「……。」
「リ、リリアさーん?」
おいおいおいおいおい。タメ語でいこうぜって言ったのはそっちだろ。呼び捨てはまだ早かったのか?でもタメ語で話しながらさん付けも変じゃないか?
女の子にちゃん付けする年齢でもないし。相手が幼児とかならともかく同年代にちゃん付けはない。やばいな、俺はついに踏み抜いてしまったんだろうか。
「いえ……。確かに、砕ける、なら呼び捨てが基本、ね。う、ん。じゃあ、私もりょ、涼…介って呼びます…わ。」
リリア…提案した側なのにテンパってる…。
そうか…リリアは意外とそういうところが不器用な人ってことなんだな…。
なんか…ほんとに意外だ。すごくしっかりしてて強そうなのに、ちゃんとそういう一面もあって…。
それなりに年頃の子っていう部分は俺と大差ないんだな、って正直安堵した。
「……やはり私は砕けた話し方なんて無理です!これまでと変えません!でも涼介様は変えたらだめです!私よりそうやって人と親しくお話しすることが得意みたいですし、そのままで!」
「え?い、いやそんなことないし…。」
「そんなことありますわ……。私なんて昔から仲良くなりたくてお願いすることが多いのに、何故かこうやって今一つ踏み出せないところが多くて、その……。やっぱり…。」
リリアは変わらず立ち止まったままグチグチと何かを言っていた。
いや、何でこうなった。まぁリリアが突拍子もなく急にネガティブなことを似合わずに言い始めたからなんだけど…。
実はリリアって天然でしかもドジで、加えてめちゃくちゃネガティブな子なの……?
え……茜さんも色々やばそうな香りしたけど、リリアも……え…?
俺そういう人を向こうにいた頃に惹き付けてきたような覚えないんだけど……。
いやたまたまだよな、リリアもリリアで川に落ちるわなんやかんやで疲れてたんだろうし、人間色々あって弱気なときには普段言わないような台詞も言うって言うし…。
ね!リリアは茜さんみたいなちょっと色々手を焼きそうな子じゃないでしょ!うん!
「ではこれからも涼介様は私には砕けた言い方でお願いしますね。絶対ですからね!」
おおう、立ち直るの早いな。落ち込むのも秒だけど立ち直るのも秒って感じなのかな……。
めんどくs……いやいや、まぁまぁ。な。
女の子ってなんていうか、なんていうかほら。あれじゃん。
恋愛どころか異性に対するスキルがゼロの人間が言っても説得力ないけど、でもほら、やっぱりあれじゃん?
「わかった、じゃあこれからもよろしく。リリア。」
そんなことを考えながら声をかけた俺はよっぽど複雑な顔をしていたらしい。リリアは俺の顔をみて吹き出してしまった。
「うふふ……なんだ…、涼介様もそんな難しい顔されるんですね。ごめんなさい、変なことで悩ませてしまって。えぇ、砕けた話し方で名前も呼び捨てで構いませんわ。リリアとお呼びください。」
さっき立ち直るまではすごい悲しそうに眉毛も目尻も下がっていたのに今ではすごく嬉しそうな笑顔だ。
なんだ、俺も嬉しいけどちょこっとだけ複雑。
前回の更新分の最後で文章がめちゃくちゃだったのを修正してありますのでお時間あればぜひ。