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2.フィンランディア_8

2-8.



「そんなにご自分の血筋に自信がないなら23区域の人間だと語らなければいいのですよ。」



 長い髪を翻してドアに向かうリリアの背中に向かって投げられたセリフ。

よくわからないけれど状況的に見れば逃げるリリアを煽っているのは伝わってきた。


その言葉にピタッと立ち止まったリリアはゆっくりと振り向いて、あの愛想のいい笑顔を貼り付けたまま冷たく言い放つ。


「家柄や資産でしか評価も会話も出来ない方こそ、23区域の人間としてふさわしくないですわ。もっと他に、個人の能力を測る方法があるというのに。

涼介様、はやくいらしてください。」


 その冷たい声に呆気にとられていたが、ハッと気付いて慌てて追いかける。


俺が扉から出たタイミングでちょうど後ろからものすごい突風が一瞬だけ吹き、扉はかなり大きな音を立てて閉まった。


あの部屋の窓は閉まってたはず。後ろから風が吹くような要因もない。


……今のは…なんだ?


「リ、リリア。今の風……。」


「……涼介様は、23区域というエリアに住んでいるのはそれ以外のエリアの人間とある一点に置いて大きく異なる人間である、ということもご存じないのですか?」


 後ろを何度も振り返りながら玄関に向かう俺に顔はおろか視線すら向けないリリアに言われる。怖い。ご機嫌ナナメ。


「あぁ、ずっと気になってたんだよ。23区域って…一体なんなんだ?」


「わかりました。とりあえず、今日はこの地に泊まりましょう。アテはありませんが…どなたか心優しい方がおられることを願います。

さきほどの態度を見たら…やはりこの土地の状況はなんとかしなくてはなりません。

作戦を練るのに合わせて23区域のことをお話しします。」


「わかった、リリアがそういうならそうしよう。」


 これは俺の偏見だけれど、『ひどい!そんな言い方しなくってもいいじゃない!』と『違う、そういう意味で言ってるんじゃないの!』と『わからないならもういい!』という三つのセリフ。


この三つのどれかでも女性に言わせてしまうとその途端話し合いは平行線と化す。


やめろ、石を投げるな。これは批判じゃない、あくまで経験則だ。


そしてこちらは男女関係ないが、『理解』は必要なく『納得』すればそれで良い。

さらに女性には『共感』をまず何よりも先に伝えることで物事はとてもスムーズになる。


というわけで言いたいことは富士山より遙か高く積みあがるほどにはあったが、すべて飲み込んでリリアの案に同調する。まずはリリアを落ち着かせることが先だ。



 先ほどのリリアの案に同調したおかげで田舎にアポなしで突撃してお泊まり交渉までしちゃう某番組のような展開になってきたが…。リリアの慈愛に満ちた振る舞いならなんとかなりそうな気がする。


俺も行き当たりばったりにしては運良く目的の人に巡り会い続けているし。あのタイミングで源二さんがあそこを通ってくれたのはやっぱり運が良かったんだと思う。


 そんなことを考えながらついさっき通ってきた立派な門を出ると、開くときとは大違いにそれもまた勢いよく大きな音を立てて閉まる。

しかもガシャンガシャンと音を立てながらいくつもの閂や錠が勝手にかかっていくじゃないか。


異世界がだいぶ進歩してるのか、ただ単にオートロックってことなのか…。

門の閉まる速度と、今さっきリリアが出るために開けるときにはなんの鍵もかかっていなかったところから、オートロックではなさそうだ。


となると竜宮寺が門を遠隔操作って形で俺たちが出て行くところまでしっかり見張っているんだと考えるのが妥当だ。


監視カメラとか見あたらないけど…何故か寒気までする。


 とりあえずリリアが話してくれる事を期待しながらついていくことにした。

まぁそうはいってもこの土地に来ることは前から決まってたみたいだったし、あの番組ほどの突撃っぷりとかはありえないだろ。


………アテは無いって、はっきり言ってた気がするけど。


でも俺にはそんなこと聞こえてません。


あぁ、俺はいつになったら昼飯食えるのかなぁ。




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