2.フィンランディア_7
2-7.
「区域外の方と仲良くさせていただく事なんて当たり前にあると思いますわ。よほどご自身が23区域の人間であることに誇りをもっておいでなんですね。
由緒ある竜宮寺家の方ですのに…そんな了見の狭いことを言われていると先代の方が聞かれたら悲しまれるのではありませんか?」
「ご配慮頂き感謝しますよ、リリアさん。あなたが私の先祖達に話をすることができるほどの人物だと思っていませんでした。今までの無礼はお詫びしましょう。
それでもあなたはこちらの質問に何も答えておられない。その少年はなんなのです?あなたはどのお血筋の方なんです?
その答えいかんによっては更に事態が悪くなる可能性があること…わかっておられるので?」
「私がどこの家の者かがそこまで大事なのですか?私個人の血筋がどうなどと言う前に、常識として他者に対する態度に疑問を感じているからこうやってお話しているつもりだったのですが。
自分より上なのか下なのかで態度を露骨に変えるような人間だと自ら公言なさっているようなものです。
その部分についても私はいかがかと存じますわ。」
「そうやって正論ばかりぶつけてこられても、あなたが何もお答えになっていないことは事実です。
この街にきた目的。あなたの出自。あなたとその少年の関係。それらしい正論をぶつけて自分のことはのらりくらりとかわすなんて、それこそ不誠実な態度そのものだと思いますけどね。
まぁあなた自身がそういった態度を取られるのなら当の本人に聞いてみる他ないかもしれませんねぇ…。」
そういって唐突に俺を話題の中心に引きずり出した竜宮寺。相変わらず見下すような視線は変わらないまま、ついには人のことを指さし始める。
それも映画でしか見たこと無いような手のひらを上にした状態で、だ。
手首のスナップがすごくいい感じだと思う。
ただ俺を引き合いに出されても困る。今二人がしている会話の言葉面しか理解できていない俺に何かリリアが有利になるようなセリフが言えるだろうか。
それに竜宮寺が言っていることも若干その通りなのだ。リリアが答えたくないのはわかるし、それこそ俺との関係性なんてどう答えても誤解を生みかねないから慎重になっているんだろう。
ただ、だとしてもいろいろ拒否しすぎだと感じる竜宮寺の気持ちはわからんでもない。
リリアは少しばかり熱くなりやすく、正義感の元に頑固すぎる。
「今お話ししているのは私であって涼介様ではありませんわ。私とのお話が終わってからにしていただけますか?」
「………あなたとのお話はおとぎ話程度の現実感しかないのですよ。そんな会話しかできない相手より効率よく欲しい情報をくれそうな人間と話したいと思うのは間違っているのですかね?」
俺を指さしていた手を下げて、口元をわざとらしく隠しながらフフッと笑う竜宮寺。これでもかというくらいには哀れみを込めた苦笑いってやつだった。
その姿をみたリリアはさすがに立ち上がり今までにないくらいには声を張り上げた。
「もういいですわ。いきましょう涼介様。お紅茶くらい一緒に楽しめる方だと思っておりましたのに。最低限の礼儀もなってない方だとは思いませんでしたわ!」
リリア先生ブチギレはいりましたー。女の子って本当に難しいな。