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ケーキ屋さんと今の私

「今日もいくよ!まーちゃん!」


「え、え、え!ちょっと今日は亜紀とケーキ屋さんに行くから…」


「え、そうなの?」


彼女ブレーキをかけたように、動きを止めた。約束は約束だし、流されてはいけない。


「今日は亜紀が、ケーキ屋さんに行きたいって言ってて、私も行くって言ったから。今日は無理。」


「そっか。じゃあしょうがないね。それなら明日…」


「あと、あんた私のクラスまで迎えにくるのやめなさい。仮にも先輩のクラスなんだし、目立ち過ぎんのよ。」


「んー…」


「…別に、逃げたりしないから。」


「うーん、わかった。

あと、あのね、わたしまあちゃんと公園に行きたいの。だか…」


「まーどーかー。」

キコがなにかを言いかけてる途中に、亜紀が迎えにきた。


「あ、亜紀きたから。じゃああんたも、そこそこで今日は帰んなよ。」


「う、うん。」


わたしはドアのところに立っている亜紀の元へ歩いていく。


「まどか、あの子、また来てたの?」


「あー、うん。」


「また連れ去られそうになってたの?あの子なんか強引なとこあんだね。見かけによらずにさ。」


なんだか亜紀はまた不機嫌そうだ。昨日勝手に帰ったことをそんなに怒っているのだろうか。


「ま、まあいいじゃんあいつのことはさ!今日はなにすんの?ケーキだけ?」


「帰り、服もちょっと見よう!」


そう言うと、亜紀のさっきまでの雰囲気はころっと変わって、とても嬉しそうだ。


「そうだね。お嬢様系だっけ?」


「やっぱ?やっぱそうかな?」


「さあねー?」


わたしは後ろを振り返ることなく歩いた。



「でさ〜その時柳川先生がねえ、”ちょっと亜紀ちゃんっ!その手はなんなのっ!大和撫子として〜”って説教はじめちゃってさー」


「ん〜マジか〜」


「…ねえ円花、聞いてないっしょ?」


「え!いや聞いてるよ、、細田のリボンでしょ?」


「…全然違うし。はぁー。なんかあの子と会ってから、ぼーっとしてばっかりじゃん。」


ギクッとした。


「だから違うってば…」

声が少し上擦った。なんとなくケーキの角を見つめる。


「…まあいいよ。それより明日の作戦立てよ!最近合コンも全然なかったしさ、円花もご無沙汰じゃん?」


「そうだね、一ヶ月くらいなかったかな。」


「わたしもなんだよね!絶対一人は捕まえなきゃじゃん!やっぱ服はセクシー系かな?」


合コンの話になると、いつも亜紀はセクシー系を着ようと試みる癖がある。しかしそれが、小悪魔系くらいなら可愛いのだが、キャバ嬢みたいな派手な服を毎回選ぶ。


「今回はどことなの?」


「んとね、電車で一時間のとこの、共学のバスケ部の二軍。頭はそこそこ。」


「いいね、ほどよくて。バレなさそう。」


「でっしょ!わたしマジ出来る子!」


「そだね。いい子だね亜紀は。」


「ふふっ、もっと褒めてくれてもいいよ。」


亜紀はだいぶ調子に乗っている。

明日を本当に楽しみにしているようだ。

ただ一つ、服に関しては言わなくては。


「でもやっぱセクシー系だけは、やめときなよ。可愛い系で、ちょっと胸が見えるくらいがいいよ。」


「えー、そっかなー?じゃあ、そっしよっかなー?」


彼女は本当にたのしそうだった。



今日も放課後が始まるチャイムが鳴った。そして今はそれから5分経ったところだ。


自分で彼女に、教室には来るなと言ったのだが…来ないと来ないでなんだか落ち着かない。

普段から廊下などでは会ったことはないから、どこにいるかは知らない。ほっといてもいいのだけど…


昨日少し冷たくしてしまったような気もして怖い。


彼女のことは気にしないと、何度も心に決めたのに、ぐらぐらしてしまう。


その時ドアが開いて、私はハッとしてそちらを見た。


「まーどーか。そろそろ行こ。」


そこに立っていたのは平静を装いつつも笑顔がはみ出ている亜紀だった。合コンが楽しみで楽しみで仕方がないようだ。

しかし…

「あの、ちょっと待って…」


「え、なんで?遅れちゃうよ?」


「なんか今日に限って、あの子見かけてなくて…」

「円花!!」


亜紀は突然大きめの声をだした。私は驚いて彼女を見る。


「ねえ円花、今日は私と合コンでしょ?私前から言ってたよね?最近ずっとキコちゃんキコちゃんってさ、どうしたの?」


「私別にそんなあの子のことばっか言ってな…」


「じゃあ今すぐ一緒に行こうよ、あの子待たなくていいじゃん!それともなに、約束でもしたの?」


「違うけど…」


「…円花さ、変だよ。分かってるじゃん。あの子、円花が”合コン”行ってるって知ってんの?

円花はあの子が本当に円花と同じような考え方で、同じ世界の人だと思うの?あんなザ、真面目の子を!」


「それは…」

違う、と言えなかった。彼女の言った言葉は、私が内心思っていたことで実は頭の中で薄々わかってたし、馬鹿馬鹿しいこと想像してたんだなやっぱり。

普段と違うことが起こってしまって、夢を見てしまっていたのだ。

彼女は私を知らなくて、キコ、はキコではない。


「そだね。いこ、亜紀。私この前珍しく少女漫画なんて読んだからさ、頭変になってた。」


そういって私は学校を出た。

キコのことを、頭の中に部屋に押し込めて。



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