表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

突然すぎるお出かけ

「ふぁぁあ…」


昨日はなんだかんだでよく眠れなかった。別にあれのせいではなくて、ただベッドの中で夜更かしがしたかっただけだ。


しかしやっと長い授業も終わり放課後だし、

昨日亜紀が言っていたケーキ屋とやらに行くことになるのかな。

ずっしりした鞄を持ち立ち上がったその時


「見つけた!行きますよ!!」


あろうことか、教室のドアにあの少女が爛々とした瞳で立っている。

キコはツカツカ、というよりドカドカと私の方に歩いてきた。

私は怯んでしまってただそこに立ち尽くす。


というかここ、先輩の教室なのになんという度胸なのか。


「行きましょう!」


彼女は私の手を握り歩き出した。


「え、ちょっと行くってどこに!?ちょっと!聞いてんの!」


彼女は私の手を決して話さずグイグイと引っ張り歩いていく。


「ねえ私をどこに連れてくつもりなの?ねえってば!」


なんだかんだもう玄関のあたりまで来ていた。


「私ね、ずっと一緒に行きかった所があるの。」


「だからそれはどこなのよ…。」


彼女の強引さに、もう抵抗する気も失せてしまった私は、されるがまま彼女に連れられ歩いていった。


とんでもないのに目をつけられでもしまったようだなと、ぼんやりと考えながら。



ここは…


「では早速行きましょうか!楽しみですね!」

キコは目をキラキラさせながら店の中に入ろうとしている。


「ここって…あの」

和菓子屋さん…よね?


「あんみつ、好きでしょう?」

どこからその自信がやってきたの。

…好きだけどさ。


私があんみつが好きなことを知っている人なんて、いないと思ってた。


というかこの子、どうやって知ったのかな。


「ほらほら、行きますよ!」


キコは私の手を引いて店に入っていく。私は久しぶりのあんみつにわくわくしてしまって、抵抗するのを忘れてしまっていた。


ドアは昔ながらな引き戸で、お店に入ると綺麗な鈴の音が響いた。

店内はぽつんぽつんと人はいるけれど混んでいる様子はなく、落ち着いた雰囲気の中にふわりと甘い香りが漂っていた。


私はあまりに久々の和菓子屋さんにそわそわとしてしまい、落ち着きをなくしていた。

他から見たら大分ぎこちなくて挙動不振だったろう。


「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」


「二人です!」


キコの返事はやけに元気が良く、静かな店内に響いてしまって少し恥ずかしくなる。


「そこの席に座らせていただいていいですか?」


彼女は窓際の丸いテーブルの席を指して言った。


「ええ。どうぞ。」

店員さんは微笑みながら私たちをその席へ促してくれた。


すごく、久々の和菓子屋さん。

もう何年ぶりかな…


「あの…まぁちゃん?」


「ひゃっ!あ、うん、うん、なに?」


「座らないの?」


私は大分緊張していたようだ。

お店の真ん中で立ち尽くしてしまうだなんて…


ん?

まぁちゃん?

いま…まぁちゃんと呼ばれた?


「ね、ねえ今あんた…」


「わー!すごいです!本物のクリームあんみつ!

あ、あんこ特盛なんてものまである…!」


彼女はもうメニューに夢中である。

とりあえず私もそそくさと席に着く。


私もメニューを開いてみたものの、まったく頭に入ってこない。

まぁちゃん、と確かに彼女は言った。

それは私の小学生の間までの、両親からの呼び名であり、どんな友達にも亜紀にでさえも、呼ばせたことはない、特別な名前なのに。

しかも不思議なことに、彼女にまぁちゃん、呼ばれた時、不思議と嫌な感じがしなかった。


「決まりました?私、やっぱりね、抹茶クリームあんみつのあんこ特盛にしようと思うんです!ふふふ!」


「え!あ、うん。えっと…」

完全に考え事をしてしまっていて、メニューを全く見れていなかった。


「私は、この白玉クリームあんみつに、しようかな…?」


「……そうですか!」


キコはなんだか一瞬驚いたような顔をして、またいつも通りの元気な返事を返した。


何か意外だったのかな?

本当に変な人。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ