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新米(仮)です 003

「ハァハァ……こ、これは凄い……けど……限界が……」

「あん……あ、あたい、あたいから……溢れ出ていっちゃう」

「まだまだ早いわ四季君……だ、だめだめよ……そんなにいっぱい……もう少し我慢して……」

「な、なんなんだ……あたしの中がいっぱいになっていく」

「だめだ、もう俺……我慢の限界……ハァハァ……」


「「「「あっ!」」」」


 耳障りな警告音が響く空間で、めぐる蓮華れんか菜乃花なのか、そして雫音しずねの視界が暗転した。そして、


『撃墜』


 暗転した視界に真っ赤な文字で、でかでかと表示された。しかもご丁寧なことに点滅までしている。

 更に、表示されている『撃墜』の文字の下には、


『速報……たった今、一つの世界が消えました……残念です』


 嫌味たっぷりな文面がテロップのように流れていた。


 神宿男になってまだ三日目と『新米』の称号すら貰えない四季巡は、撃墜された事が悔しかったのか、流れるテロップが腹立たしかったのか、それとも、もっと上手くシステムを操れるはずだったのに、と自分自身に苛立を覚えたのか、噛みしめた奥歯を、ギリリ、と鳴らし、固く固く拳を握った。しかし握った拳で八つ当たりは出来なかった。

 巡は、『』に固定されてる自分の拳を忌々しそうに睨みつけて、チッ、舌打ちをすると、苦笑いを作った。

 と、巡の視界の端に10インチほどの半透明のウィンドウが表れると、雫音が映し出されて、


『あらあら、初めてだったのにしっかり出来たと思うわ。私の前の神宿男かんなどなんて初めてのとき、三分も持たなかったわよ』


 なんと言っていいのか、別のシチュエーションで言われてもおかしくないような言葉をかけてきた。雫音は、はぅ、と吐息にも似た息を一つくと、


『でもでも、ちょっと強引すぎたわね。私、一気に力が抜けて、動けなくなっちゃったわ』


 言った。その隣にもう一つウィンドウが開き、映し出された菜乃花が、


『あたいもだよ。急に力が抜けてさ、動けなくなったと思ったら、ドカンだよ』


 ただでさえつり目気味の目尻を更に上げて、憎々しげに巡をにらんでいた。と、もう一つウィンドウが開き、蓮華が映し出され、


『あたしは、突然わけのわからない力のようなものを詰め込まれてだな、体を制御出来なくなってだな、墜とされたわけだ』


 やはり憎々しげに冷ややかな視線を巡に向けていた。


『まあまあ、そんなに四季君を責めては駄目よ。今日は「魔・技・架」を使った初めての実戦訓練ですから、上手くいかないのも無理ないわ。それに、まだまだ準備段階ですから焦らずにいきましょう』


 どこか落ち込んだように見える巡を弁護するかのように言ってくれた雫音に、


「ありがとうございます。出来るだけ早く扱えるようになります」


 巡は素直にお礼を言った。

 そんな巡に雫音は、いつもの穏やかな笑みで、


『ではでは、もう一戦いたしましょうね。四季君、もちろん大丈夫よね』


 問いかける。巡は、はい、と応じて気合いを入れ直す。

 しかし心の奥底には、もやつく妙な悔しさが残っている。

 それは……非常にあれな話だが……。


 巡がよく見るロボット系のアニメなどでは序盤のクライマックスに、訓練を受けてもいない一般人の主人公が偶然乗り込んだ戦闘兵器で、訓練どころか実戦経験まである兵士が操る戦闘兵器を次から次へと撃破していく、ということが多々ある。

 巡はそんなシーンを見るたび、そんな馬鹿な話ってあるか、などと思いつつ同時に、もしかしたら俺にもそんな力があるかも、と少々イタい事も思ったりしていた。

 そんな巡は、一丁証明してやろう、といっても手近にロボットなど無いわけで、仕方なくゲームセンターに通い、そして……。

 通信対戦型ロボット系ゲームに入れ込んで……、


「ふん、相手は新型筐体きょうたいか。俺専用筐体より反応速度が僅かに早かったな」


 全国レベルの凄さを知った。

 新作ゲームを予備知識無しの初見でノーコンクリア……、


「いきなり難易度上げて回収してんじゃねーよ」


 など無謀だった。

 なんと言うのか、イタましい言い訳とともに、色々試していた。

 しかし、その手の力は無いと否定されるたびに、きっといつかは、とか、今に見てろよ、といつか訪れる覚醒の機会をうかがっていた。


 そんな時代からほんの少しだけ大人になった巡は、仮想世界の話のように、最初っから全てが上手くいくなんて大それた事は思ってはいない。けれどいくら初めてとはいえ、ある程度扱えると思っていた……少なくとも『魔・技・架』に乗る前までは……。

 しかし巡は待ち望んでいた状況に、あたふたする事しか出来なかった。

 結局、何も出来なかった。

 巡は、そんな自分に苛立ち、そして悔しさを覚えた。

 答えは出された。


『はい、あなたは特別な才能は何一つ無い兵士Aです。人並みに扱えるようになるまで、訓練は怠らないで下さい』


 と…………。

 やや自信喪失気味の巡はそれでも、幾度となく挫折を繰り返していくうちに、とか、危機的状況に追い込まれこそ、などと、僅かに、ほんの僅かに残された覚醒の可能性を信じて訓練に臨んだ。


 が………………。


 神宿男となって三日目の巡が、淡い期待を胸に秘めて臨んだ初めての実機訓練は、惨憺さんたんたる結果で終わった。


 時間は午後八時と、訓練は前日より早くに終わったが、疲労は昨日とは比較にならなかった。

 巡は、膝が崩れそうになるのをこらえてロッカールームに入り、ドカリ、とベンチに重い腰を落とした。そして大きく嘆息すると、項垂うなだれ、その頭を両手で支えたまま、自分を否定するかのように、何度も何度も首を振った。

 と、今度は頭を支えていた両手を外し、伸びをするかのように上に突き上げる。そして頭を上げて天井を見上げたまま、ベンチに寝転がった。何も考えたくないな、とぼんやりと天井を見つめていた。


「………………?」


 静かなロッカールームに携帯の着信音がこもったように響く。

 巡は面倒くさそうに体を起こして立ち上がると、着替えを入れたロッカーの扉を開いて携帯を取り出した。画面表示を見ると、水無月雫音からだった。巡が着信ボタンを押すと、


『もしもしぃ、四季君? お元気ですか? 私は元気です』


 おっとりとした口調で手紙の挨拶文が聞こえてきた。放っておくと時節の挨拶が聞こえてきそうだったので、巡はさっさと応答する。


「……はい、元気ですが……どうしたんですか? 雫音さん」

『あのね、そっちは一人で、四季君は寂しくないかなって思ってね』

「へ? そんなことはないですが……」

『それでそれでね、今からシャワーを浴びるけど、よかったら一緒に――』


 と雫音が言ったところで、猛烈に反対する外野の声に遮られた。


「……もしもし? ……えっと……雫音さん」

『あらあらごめんなさいね四季君。蓮華ちゃんも菜乃花ちゃんも照れちゃってね……「な、何を言うんだ雫音さん、こんなの照れじゃないぞ」……え? なになに? 違う? 照れじゃないって……「そうだよ、照れとかじゃないよ」……あらあらそれが照れなのよ……「いや、違うぞ、こんなの当たり前だろう、そう当たり前だ」……でもでもね、誰に見られても恥ずかしくない体なんだから……「だ、だからと言ってだな、見せびらかすことないだろう」「あ、あたいは恥ずかしいところがあるぞ、こことか……」……え? はいはい、今回はやめときますね。

 ではでは四季君、ちょっと残念ですけど今回は別々で、終わったら呼びに行きますからそれまでに支度を整えておいて下さいね』


 受話口の向こうから聞こえる雫音達の会話に圧倒されていた巡が言葉を挟むまもなく、通話は一方的に切れた。


「……てかさ、何だったんだ?」


 巡は切れた携帯に向かって呟き、携帯の代わりに着替えを手にするとシャワー室へ向かった。


 シャワーを終えた巡が身支度を整えてベンチでぼんやりしていると、雫音達が迎えにきた。

 扉を開いた巡は、鼻腔に届く甘い石けんの香に心地よさを覚えた。


 ――俺と同じ石けんを使っているんだよな――


 などと思いつつ、ほんわかとしながらも固まる巡に、


「あらあら四季君、どうしたのかしら?」


 雫音の声が耳に届く。


「あっ、いえ、で、これからどうしますか?」

「ではでは寮に帰る前にこの格納区の食堂に行きましょう」


 巡が、はい、と答えると、雫音達は食堂へと向かって歩きだした。後をついて行く巡は、再びほんのりと漂う甘い石けんの香りに、一日の疲れを忘れるくらい癒されていた。


 食堂に入った巡達は、それぞれメニューを見て適当に注文をする。

 料理を待つ間、誰もが口数が少なかった。初の実機訓練で疲れていたということもあるだろう。なにより、反省点だらけの訓練の話をこの場でぶり返すと、よく言う『飯がまずくなる』というやつで、本当に食事が進まなくなりそうだった。

 だからというわけではないが、巡は静かな食卓に少々戸惑いを覚えながらも、無理に話題を作ろうとは思わなかった。


 そんな静かな夕食を終えた巡達は、居住区へ向かう連絡バスに乗った。連絡バスといっても、超高級な夜行バスのようなシートや内装である。雫音の話では、


「あらあら、これも神宿男や神宿女専用なのよ」


 とのことだったが巡は、優遇されているのはわかったけど、と思いつつ、


「……それにしても無駄に豪華な」


 ポツリと呟いた。

 そんな豪華バスツアーも十分少々で終えて、巡は久しぶりに寮へと戻ったのは、そろそろ日付の変わる頃だった。


 自室に戻った巡は、寝間着代わりのスウェットに着替えるとベットに身を投げた。


「……自室っていうだけで落ち着くよな……」


 呟いたところで、この部屋で寝たのはまだ一晩だけ、ということに気付いた。


「いやいや、寝た日にちじゃなくて、自室ということが重要なんだ」


 鼻の頭を掻きながら、呟くというより一人ごちた。そんな巡の意識も、訓練の疲労と解放された緊張感に加え、自室の安堵感で長くは持たなかった。


 そして…………巡は夢を見ていた。


 山間の集落に田園風景が広がっている。

 それは元の世界で四季家が、新興住宅地に引っ越してくる前に住んでいたところだった。

 六月のとある日、この数日梅雨らしくシトシトと降っていた雨はあがっていた。でも、空は晴れてはいない。薄雲に覆われた鈍色にびいろの空からは日射しが透けて、異様に蒸し暑い。体を動かさなくても、べたつくような汗がにじみ出る。そんな不快指数が高い日の夕方だった。

 縁側のガラス戸を開き、座敷の障子戸も開き、風通しの良くなった畳の上に寝転がっている少年は、小学五年頃の巡だった。

 巡は寝ているわけではなく、不快な蒸し暑さに負けて、ぐだぐだ、ゴロゴロしていた。そんな巡がぼんやりと天井を見上げていると、庭先から声をかけられた。


「ねえ、四季君……」


 巡が面倒くさそうに首を上げると、巡よりいくつか年上の少女が立っていた。少女は何かを堪えるように、ややうつむいている。そんな少女の様子に巡は不安気に問いかけた。


「○○……どうしたの」

「私ね……私ね…………」


 少女は顔を上げると、今にも泣き出しそうになるのを堪えて答えながら、一歩、二歩と巡に近づき、縁側を四つん這いで上がると、そのまま巡へと覆い被さるように崩れた。


「ちょっ! ○○、暑いよ、って、なんだよ、離れろって!!」


 押しのけようとする。しかし、年上の少女との体格差がそれを許さなかった。

 しばらくジタバタとしていた巡が大人しくなると少女は口を開くと、


「ごめんね……でも、もうしばらくこうさせてね」


 巡の耳元に、しぼり出したように震える、小さな小さな声でささやいた。


「……う、うん……」


 少女の尋常でない様子に、巡は小さく頷いて、言われるまま大人しくしていた。

 少女の静かな息遣いだけが、巡の耳に入ってくる。

 密着した少女のむせかえるような甘酸っぱい香に、不快は感じない。むしろ幸せを感じる巡だった。

 どれくらい時間が過ぎたのだろう、ふと少女が体を起こす。

 巡を見下ろすように馬乗りになった少女が、


「……私……私……」


 呪詛のように呟きながら、ブラウスのボタンを外し出し、


「……綺麗かな……汚れちゃったかな……でもね……でもね……私……フラれちゃった……」


 大きく開いて清楚な白い肌と下着をさらした。

 巡は、少女の奇怪な行動から慌てて目を背けると、


「いきなり何してんだよ! やめろって!!」


 思わず声を張り上げた。と、


「巡、誰かいるの? ○○ちゃんかしら?」


 台所から母の声が飛び込んできた。

 その声に我に返った少女は「は、はい」とどもりながら答えると慌てて巡から飛び退いてブラウスを閉じた。

 少女から解放された巡は体を起こして返事をする。


「ちょ、ちょっと○○と外に行ってくるから」

「もう晩ご飯よ」

「すぐ戻ってくるから」


 言うが早いか、巡は少女の手を握ると庭先から飛び出して行った。

 と……突然場面が切り替わり、巡と少女は田園風景の中で指切りを交わしていた。


 ここで巡の意識が覚醒した。色気のある夢に、何かとヤバい状況を意識が感じ取ったのだろう。もちろんレム睡眠時の生理現象も起きている。


 ——それにしても夢? だったのか?——


 夢というには、描写があまりに鮮明だった。過去の記憶を手繰っているように思えるほどだった。


 ——まあ、昔住んでいたいた所だったからかな……でも、あの子って誰だったんだろう——


 思い出そうとしても記憶にない。もちろん夢での出来事も巡の記憶にはない。

 だから巡は、まあいいか、と時間を確認しようと時計に手を伸ばそうとして、


 ムニュ……?


 手から何か柔らかいものを掴んだ感触が伝わってきた。

 何だ? と思う前に巡は目を開き、


「わぉっ!!」


 思わず声が出た。

 サキュバスのじれた角の先端が巡を捉えていた。もちろん巡の手は、サキュバスの破壊力満点なバストを捉えていた。

 慌てて布団ごとベットから飛び下りた巡は再び、


「わぉっ!!」


 サキュバスは全裸だった。

 巡の発した二度の叫びで目が覚めたのだろう、サキュバスは眠たげな目を擦りながら体を起こし、


「あらあら四季君、何を慌ててるかしら」


 ぼんやり、おっとりと声をかけてきた。


「いやいやいや、しし雫音さんこそ何をやっているんですか? しししかも何故に全裸で?」

「あらら? お役目を聞いたでしょう? それに男女同衾の作法じゃないの」

「いやいやお役目とそんな作法って、嬉しいけど………いやいやいや、てててかやっぱり、いろいろ吸い取っちゃうんですか?」

「前にも言ったけど、そんなことはしないわよ」


 そんなことされちゃ困ります、と呟く巡はとにかく顔を逸らして、色々と重なり未だ生理現象の収まらない部分を布団で何となく隠して、


「と、とにかく服を着て下さい……もったいなけど……」


 着衣を促す。

 雫音はベット脇に几帳面にたたんで置いてある服を、一枚一枚着ながらゆっくりと話す。


「ほらほら四季君が神宿男になった日に、蓮華ちゃんから聞いたでしょう、神宿男争奪戦のことを」

「あ、はい」

「私もね、もちろん参加しているのよ」

「で、それが俺の部屋に……寝床にいた理由ですか?」

「そうそう、どんな手を使ってもね、神宿男を連れて帰るつもりよ」


 雫音の話を聞いた巡が大きく嘆息する。と、


四季しき巡、朝早くから何を騒いでいるんだ」


 既に目を覚ましていた蓮華が巡の張り上げた声を聞いて、何事かと来たのだろう。


「あっ、いや、何でも……何でもないんだ……!!」


 あたふたと答える巡が、ふと、気になって振り向くと、妙に布地面積の小さい扇情的な黒い下着だけを着けただけの雫音がいた。


「し、雫音さん……何でそんな勝負的な……眼福です、ありがたやありがたや……って、いやいや、そうじゃなくって、鍵って……」

「あらあら、かけ忘れたかもね。あら? 服が裏返しね」


 落ち着いて答える雫音は、慌てる巡にかまわず、ゆっくりと服を直している。


「と、とにかく早く服を」


 巡は言いながら、扉に近づいて行く。と扉の外から蓮華が言ってくる。


「四季巡、とにかくドアを開けろ」

「いや、ちょ、ちょっと待って」


 ガチャッ。


 巡にとって、ある意味荊の道へ一歩を踏み出す音が聞こえた。


「なんだ空いてるではないか、入るぞ」


 ドアノブへと伸ばした巡の手が一歩及ばず、天界との扉は開かれ、無情の天使が降臨した。




「あらあら蓮華ちゃん、おはよう。早いのね」


 さわやかな朝の挨拶をあられもない姿で言う雫音を見た蓮華は、足から力が抜けて崩れそうになるのを堪えて、彼氏の浮気現場に鉢合わせした彼女はこんな気分になるのか、と思った。

 しかし蓮華と巡は彼女彼氏という間柄ではない。だから、彼氏や浮気相手を問い正す正当派展開とか、『本命と、思ってた私が、二号さん』だった道化師展開とか、彼女や開き直った浮気相手が怒りに任せてあたける修羅場展開などに発展もしない。とはいえ、蓮華の胸中には、ぶつけたいのにぶつける相手がいない、というやりきれない感情がもやもやとくすぶっていた。

 が……蓮華は数日前、感情に任せて起こした件を思い出し、咳払いを一つ挟んで落ち着いて、巡越しに雫音に話しかける。


「し、雫音さん、一体何をしているので御座りまするでしょうか?」


 その言葉は明らかに冷静を欠いていた。


「争奪戦よ、争奪戦。私も参加しているのよ」

「いや、しかしですね、いきなりそれは……ふ、ふしだらです」

「でもでもね、四季君はこういうのが好きよね」


 蓮華は視線を巡へと向けると、細めた目でめつけた。




 巡は、雫音に話を振られ、蓮華からにらみつけられて、困惑するしかなかった。

 その胸中では奇しくも、浮気現場を彼女に抑えられた彼氏ってこんな気分になるのか、と思った。


「い、いや、待て待て、お、俺が目を覚ましたらだな、ななな何故か裸の雫音さんが隣で寝ててだな……そそそりゃ嫌いじゃないよ、でででもだな——」

「は、裸だと!! なな何も着けてつけてないだと!! ははは話が違うぞ四季巡!!」

「ままま待て待て待て、おおお俺はなんにも言ってないからな。はは話が違うとか、とととにかくだ落ち着けって——」


 巡が、あれ? 制御結晶体さん、強制介入の発動は?、と思った直後、


「こんのぉ、破廉恥痴れ者が!!」


 蓮華の怒声と同時に、巡は言葉では言い表せない激痛というのか、鈍痛というのか、とにかく猛烈な痛みに下腹部が襲われ、耐えきれずその場に丸まるようにうずくまった。蓮華のやってみたいことの一つが叶った瞬間でもあった。

 巡は、何故俺がこんな仕打ちに、と思いながら見上げると、痛打の涙で霞む視界に蓮華が映る。無情の天使は踞る巡を、今日はこの辺で勘弁してやる、と言うように一瞥いちべつすると、さっさと自室に戻って行った。

 すると、まだまだ動けない巡の脇を、


「ではでは私も……朝食に遅れないように頑張ってくださいね」


 着衣を終えた雫音が爽やかな朝の風のようにすり抜けて行った。

 巡は、これはまだ前哨戦か? 毎日これじゃ、いろんな意味で身が持たん、踞ったまま大きな嘆息とともに思った。

読み進めていただき、ありがとうございます。

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