5月28日 月曜日 黒板消しとブラックマンデー6
しかし、なんでこんなことになってるんだろう。
いつものベランダで、黒板消しをいつもよりこころもち念入りに叩いているのは、教室に戻りたくないからでもある。
話し合いが円満に解決というかぐずぐずになったというか、そんなタイミングでどこからともなく(といっても第二音楽室からだが)直子がやってきた。
「なんでまだこんなとこいるわけ?」
あたしが帰れないじゃん、と開口一番直子は言う。辛辣だ。いや、別にここで話さなくてもよかったんだけどね、なんとなくね、ともごもご言っていると、直子は彼のもとにつかつか歩み寄ってきた。
「なーにやってんのさ、実習生」
実習生と呼ぶあたり、直子はやっぱり彼の名前を覚えてないな。
「邪魔だ。帰れ」
お前の顔を見ると昼休みを思い出して疲れる、と彼はにべもない。
「うわ、昼間と態度全然違うじゃん」
私は放課後以外彼と話したことがないのでわからないが、確かに彼が変な人だという噂は聞かない。
「別に態度は変えていない。口に出さないだけだ」
淡々と彼は告げる。
え、それってつまりは猫かぶりというやつですか。
直子もそう思ったのか、はん、と鼻で笑う。小馬鹿にした感じがよく出ている。
私と彼を見比べ、直子はにやりとした。
「で? お話しましょ、センセー?」
「話すことはない」
彼は冷淡に返す。
「宮内理保をお求めの方には、今ならもれなく伊東直子がついてきます」
昼休みの「スーツ男大縄誘致作戦」の成功に倣ったのか、直子はそんな宣伝文句を口にする。
いや、「お求めの方」なんていないし、と思っていたら彼が真顔で返したのでさらにびっくりする。
「いらない。理保だけでいい」
なんだそれ。これは聞かなかったことにしよう、うん。
「うわ、名前呼びだ。ま、いいけどさ、おもしろいから」
軽く受け流しつつ直子はごり押しする。
「もれなく! ついてきます」
大縄に理保がついてきたように、と言って昼休みのように私の腕に自分の腕をからめた。
「じゃあ行こっか。放課後恒例黒板掃除」
あ、あたしは見てるだけだから、と無責任に言いつつ直子は私と階段を下りていく。
踊り場でちらっと見ると彼もついてきていた。
ということで今に至る。




