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5月24日 木曜日  黒板消しとエメラルドの都6

「なんでそんなこと考えるんですか。普通に会話してるだけなのに」

 ちょっと突っかかるように言ってしまう。私は普通に流れ星の話がしたかったのに、いつの間にか夜這いの話になっていた、なんて妙な詐欺に引っ掛かった気がする。

 平然と、彼は告げる。

「言っただろう。お前が口に出した言葉は、もうお前のものじゃない、と。受け手である俺が勝手に解釈するからな」

 ああ、そんなことも言われたっけな。確か、初めて話したときだったっけ、と記憶を辿る。

「また解釈ですか」

 好きですね、と溜息交じりに述べる。


 それに、と彼はやけに自慢げに付け加える。

「国語教師志望者たるもの、読解能力には自信がある」

「それはないでしょう」

 間髪を入れず反論した。

 実際それは嘘だろう。現代小説に流れ星に関する記述があったからって、夜這いについて深読みしたら絶対減点される。というか解答自体間違っている。

「読解能力って、対人コミュニケーション能力が高いとはいえない私の方がまだましですよ」

「まあ、お前のコミュニケーション能力が低いのは認めるが」

 彼は小さく笑う。


 そこは認めないでほしかった。

 いや、黒板消しとおそろい発言とか日付の勘違いとかいろいろやらかしてるけど、妙な解釈をするこの人にだけは言われたくない。

 ああでも、私の失敗の被害に遭っているのは彼か。うーん、これは五十歩百歩というやつか。

 いやでも、やっぱり私の方がましじゃないか。わざとじゃない分だけ。


 そんなふうにちょっぴり葛藤している私に、読解能力といっても、と彼は続ける。

「だいたいの試験は、作者じゃなくて出題者の意図にそった解答が求められてるからな」


 それはわかる。国語のテストというのは、問題を作った人にどれだけ共感できるかがポイントだ、と受験勉強中の先輩に聞いたことがある。逆に、引用された文章の筆者が問題を解いたとき、自分が意図したのと異なる解釈が正解とされていて戸惑った、という話もどこかで読んだ。


 しかし。

 はたと思い当たる。

 この話の流れからすると、出題者とは私のことなわけで。


「私が、その解釈を望んでいた、って言いたいんですか」

 夜這いとか何とか。

「違ったのか」

 彼はしゃあしゃあと言う。

「大間違いですよ」

 私が予想していた解釈の方向とはまったく違っている。


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