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5月23日 水曜日  黒板消しと青写真1

 昔の人はあっさり死にすぎですよ。
















「あの、ずっと気になってたんだけどね」


 ざわつく空き教室に、ひとクラスあたりふたりの美化委員が集まってきている。

 全員が集まるまで委員会は始まらない。

 話でもして時間をつぶすか。

 持参した弁当を広げつつ、私のクラスのもうひとりの美化委員、倉橋くんに話しかけることにした。


 もうひとりの美化委員である、倉橋くんはなかなかいい人だ。

 私のわがままともいえる黒板消しの掃除への執着を、あっさり受け入れてくれた。ギブアンドテイク、といっていい。休み時間の黒板の掃除は、私が引き受ける。それ以外の仕事は倉橋くんの仕事。棲み分けはきっちりなされている。

 友人とはいかないまでも、ときどきしゃべるクラスメイトという位置づけの彼に、私の人見知りは起こらない。彼は多分、人との距離の取り方がうまいのだろう。


「倉橋くんってサッカー部だったよね」

「うん、そうだよ」

 倉橋くんはにこやかに頷く。

 弁当は早めに食べてしまったらしく、倉橋くんはスポーツドリンクのペットボトルしか持ってきていない。

 

 直子によるとサッカー部員の見分け方には、「サッカー選手っぽい靴下をはいている」「サッカー関連のロゴが入ったウインドブレーカーを着ている」「日に焼けている」「部員同士のスキンシップがやたら多い」「いつ見てもミサンガをつけている」などのポイントがあるという。

 倉橋くんは靴下と日焼け、ときどきウインドブレーカーの項目を満たす、まあまあわかりやすいサッカー部員だ。


「サッカーのゴールポストってのぼっていいの?」


 そういうシーンを漫画で読んだことがあり、長年の疑問だった。

 直子に聞いてみたところそんなのサッカー部員に聞け、とアドバイスされたため、こうして倉橋くんに尋ねている。

「うーん、見たことないし、たぶんだめじゃないかな」

 少し考えてから、答えを返される。たぶん、か。

「じゃあ、かけのぼるのも、よじのぼるのもだめなの?」

 助走をつけてゴールポストをかけのぼる主人公も印象的だったが、かけのぼれないならば初めからのぼっていればいい、と主人公のチームメイトがゴールポストをよじのぼっている様子もしっかり記憶に刻みつけられている。

「ごめん、ちょっとわかんないな」

 申し訳なさそうに言われて、こちらも申し訳なく感じてしまう。

「あ、私の方こそごめんね、変なこと聞いちゃって」

 

 ちょうど全員そろって委員会が始まったので、話を終わらせて弁当を食べることにする。そぼろがのせられたご飯に箸をつけつつ考える。

 サッカー部の人でもわからないなら、誰に聞けばいいのだろう。

 まあたいしたことじゃないからいいけれど。

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