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5月18日 金曜日  黒板消しと赤色警報8

 日付と、曜日?

 何となく嫌な予感がする。

 

 ああ、日付は旧暦じゃない方のな、と彼は当たり前のことを付け加えた。いや、この場に限っては当たり前じゃないんだけれど。

 胸騒ぎを抑えつつカレンダーに歩み寄って、言われたとおりに読み上げる。


「21日、月曜日…………ってえええ! 月曜?」


 今日は18日、金曜日だ。

 そういえば、帰る前にその日の分のカレンダーを破るのが週番のお仕事だった。そんなことをいまさら思い出す。

 週番は、黒板の掃除はないけれどそういったこまごまとした仕事はしっかりあり、きちんとやるとなると面倒なのだ。

 ちゃんとやる人もそうでない人もいるが、今週の場合きっちり破いて帰ったらしい。

 週末の分まで、きっちりと。


 注意してみれば、間違えることもなかったはずなのに。

 カレンダーを見たのは探し物をしている最中だから、うっかりしていたという言い訳はさせてほしい。後付けになってしまうけれど。


 つまり。

 と、いうことは。

 今日は旧暦のエイプリルフールでも、ましてやただのエイプリルフールでもないわけで。

 あれ? 

 好きになる予定、とかいうのは、嘘じゃ、ない?

 嘘じゃない、と、いうことは。


「えええええ!? 本気ですか!?」

 勢いよく顔をカレンダーから彼の方に向け、そのままの勢いで驚きの言葉をぶつける。


「まあ、こんな馬鹿な間違いされても気が変わらないくらいには、本気だな」

 彼は諦めたようにふっと笑った。


「予告はしたからな。覚悟しろ」

 

 そんな言葉を投げて、彼は教室から出て行く。


 

 ……なんか悪役の捨て台詞みたいだな。

 うつろな目で後ろ姿を見送りつつ、妙な感想を浮かべてしまった。


 というのも、衝撃のあまり思考能力がどこかへぶっとんだせいだ。

 いつもはひとりでいて、ひとりでいることに慣れているはずの放課後の教室に、ひとり取り残されて、呆然としている。

 だいたい。


「……覚悟って、何……?」


 答えなど返ってくるはずもないのに、彼がいなくなった空間に、問うている。

 ああ、頭がうまく回らない。思考能力が、ほんとにどこかへ行ってしまった。



 でも、とりあえずいえるのは。


「……早く帰りたい……」


 それでもう二度と学校来たくない。


 週末は始まったばかりというか始まってもいないのに、気が早すぎるけれど。口から漏れたのは情けない登校拒否宣言だった。

 帰るためにはとにかく、掃除を終わらせなければ。

 黒板消しをひとつ手に取り、黒板の上をのろのろと滑らせていく。頭は回らないが、体は機械的に慣れた動きを繰り返す。

 こんな憂鬱な気分で黒板の掃除をするのは、初めてかもしれない。



 だらだらと手を動かしつつ、心の中で唱える。


 たちわかれいなばのやまのみねにおうるまつとしきけばいまかえりこん。


 今日さんざんお世話になったおまじないだ。

 帰って来い、私の思考能力と覚悟。待ってるから。


 まつとしきかばいまかえりこん。


 ……もともとなかった覚悟とやらには、この呪文も効かないような気がするけれど。


教育実習5日目のお話です。

ようやくフルネームがが出てきました。

暦は2012年度版です。

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