5月18日 金曜日 黒板消しと赤色警報7
「…………」
絶句。
あれ。ここは、「くっ、見破られたか、かくなるうえは……!」とかなんとか返ってくると思ったのに。
彼は何も言わないままだ。
「そこにカレンダーあるだろう。もう五月だ、四月馬鹿はない」
心底疲れたとでもいうように、溜息交じりに棚の方を示される。こんな馬鹿に付き合っていられない、と深い吐息が語っている。
なんとなくむかつく。いや、これも敵の作戦のうちに違いない。きっとそうだ、惑わされるな。
冷静に、指摘する。
「そこにカレンダーあるでしょう。今日は旧暦のエイプリルフールです」
私の指摘に、彼はカレンダーに再び視線を投げた。
まじまじと旧暦の日付を見る彼の顔は、睨みつけるようにしかめられている。眼鏡をかけているにしても、教室の中央辺りからカレンダーが読めるとはなかなか視力がいいようだ。
少し小さめの「5月」の文字、大きく見える「21」の文字。その他の情報は、私の位置からだともっと近づかないと読めないくらいの大きさだ。見る人が知りたい優先順位が明確につけてある、良心的なデザインである。ということはつまり、知りたい人は少ないだろう旧暦の文字は小さい。
え、まさか、今気付いた、のか?
まさか。
「旧暦なんて知るか。現代は太陽暦だし、四月馬鹿も太陽暦の習慣だろう。旧暦は太陰太陽暦だから関係ない」
妙に詳しいな、この人。これだけ知ってるんだから、やっぱり今日が旧暦エイプリルフールだと知っていたんじゃないか。
ああ、だが、と彼はことさらゆっくり尋ねる。
「今日は何曜日だ」
「金曜日ですけど」
いくらなんでもそれくらいわかる。今日は週末ではないか。
「そこにカレンダーあるだろう。もう一度よく見ろ。日付と曜日のところを」




