5月16日 水曜日 黒板消しと赤の他人2
今年も教育実習の季節がやってきている。そういう季節があるのかは知らないけれど。
とにかく、私の通うこの高校の場合、ゴールデンウイークが明けてしばらく経ち、週に祝日が入らなくなってからの数週間だ。
普通の公立高校なので、教育実習生がやってくるなんてイベントは年に一度しかない。だからといってはなんだが、自分のクラスに実習生がつくと得した気分になる、という奇特な人も多くいるらしい。
まあとにかく、教育実習生が15人くらいやってきた。地元の大学に教育学部があるのだが、そこの学生がちらほらと混じっている。
実習に来ているのは、みんなこの高校の卒業生だという。他校のやつまで面倒みきれるか、という方針らしい。おおいに結構。
私のクラス担任に付いた実習生はなかなかのお洒落さんだ。芳賀さん、といっただろうか。
初めはきっちりリクルートスーツで身を固めてきた実習生も、3日も経った頃にはすでにジャージが標準装備になっている。
その中で、少しカジュアルダウンしたにしても、ネクタイを締めて量産品には見えないスーツを着こなしている彼はかなり目立っている。レンズの下半分にだけ縁取りがついた眼鏡をかけた顔も、知的でかっこいいと評判だ。
休み時間には女子に囲まれているし、意外と男子連中にも人気だ。
話したことはないのでよくわからないが、なかなか楽しい人なのだろう。
わざわざ話しかけたりはしないので、わからないけれど。
なんといっても私は、隠れ人見知りなのだ。