5月18日 金曜日 黒板消しと赤色警報6
私のことを、好きになる、予定?
……ちょっとびっくりしてしまったではないか。
手元がおろそかになり、うっかり黒板消しをベランダから落としそうになった。視線を黒板消しに戻す。
ここは2階なので、落してしまうと拾いにいくのが大変だ。危ない危ない。集中しなくては。
黒板消しを叩くのに意識を傾けつつ、疑問点を洗っていく。
「誰がですか」
「俺が」
「いつ」
「教育実習が終わったら」
ぶつ切れの会話。何かいうときは、初めに5W1Hをはっきり示せと教えられなかったのか、彼は。
「はあ、そうですか。ありがとうございます。光栄ですね」
さてと、もうひとつの組に移るか。室外機らしきものの上にきれいになった黒板消しを置き、汚れているものを手に取る。
ぱんぱん、とだんだんに叩く力を強くしながら、黒板消しからチョークの粉を吐き出させる。
「わかっているのか」
いらついたような声が、教室から私に向かってくる。
どうやら、私の反応が悪いのがお気に召さないらしい。困ったものだ。
「わかってますよ」
もちろんわかっているとも。彼の意図が何なのか。
それ以上きれいにならないのを確認してから、黒板消しを4つすべて抱えて教室に戻る。
こちらを見やる彼の目に戸惑いが浮かんでいるのに気付いて、ちょっと罪悪感も感じてしまう。
もう少し驚いてあげた方がよかっただろうか。でも、私嘘は下手だしな。さっさと、私が「わかっている」ことを教えた方がいいだろう。
黒板消しを前後の黒板の桟に置き、教室の真ん中に立ちつくしたままの彼に向き直る。
「私が慌てると思ったら大間違いですよ。わかってるんですから」
「……何を」
うろたえているようだ。私が気付いているとは思わなかったのだろう。
しかし、認識が甘い。ただの女子高生と侮ってもらっちゃ困る。
びしっと、回答を告げる。
「今日はエイプリルフールですね」




