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5月18日 金曜日  黒板消しと赤色警報2

 今日はさすがにいないか、と思っていたが、やはりいない。

 例の教育実習生の姿が見えないことに対する安心に、なぜかほんの少しの物足りなさが入り混じる。 これはたぶん、隠れ人見知りの私がせっかくちゃんとお話しできるようになった(気がする)のに、それを試す機会がないからだな、きっと。まあ、別にそこまで話したいわけじゃないからいいけれど。

 今日は邪魔者もいないし、と教卓に楽譜を置く。

 黒板掃除を始めようとして、Yシャツのポケットを探った。

「あ……ない……」

 思わず、呟きが漏れる。ヘアピンが、見当たらない。


 普段は、肩より少し短い髪を下ろしたままにしている。

 例外は、お昼を食べるときと、黒板消しを叩くとき。ヘアピンでざっくりと、髪をまとめあげる。

 いつものように髪を留めようとして、はじめてないのに気付いた。

 まあまあ大きいものだから、そう簡単にどこかに紛れ込んだりしないだろう。

 最後に見かけたのは昼食のとき。今日は直子に用事があるというので、教室で食べた。

 落としたとすれば、教室の可能性が高い。


 このクラスではだいたい、黒板の横の、日めくりカレンダーがかかった棚に落し物を置く習慣になっている。そこを確かめる。ない。


 棚の前を通ると、カレンダーが見るともなしに見える。

 担任の実家が不動産屋にもらったとかで、うちのクラスには、まだ分厚い日めくりカレンダーが掛けてある。六曜に旧暦、十干に十二支、月の満ち欠けや満潮干潮、どう考えてもこじつけの何とか記念日まで盛りだくさんの優れものだ。

 下の方がぎざぎざに切れて縦の長さが不自然になっているのは、その部分に小さく店の名前が入っていたためらしい。この高校でその程度を宣伝だと咎めるような、細かい先生も生徒もいないけれど、気を遣うに越したことはないと判断したのだろう。

 ふと、目に入る文字。

 そうか、今日はあの日だったのか、と小さく笑う。

 放課後気付いても仕方ないな。まあ、もっと前に気付いていても何もしなかった可能性が高いけれど。


 次にありそうな場所を探しにいく。

 落し物といっても、持ち主が分かる場合は机の上に置いてあることも珍しくない。自分の机の上に目を走らせる。だが、ない。

 もしかして、自分でうっかり机の中にしまったとか。椅子を引いて机の中に手を入れる。手ごたえなし。

 机にもないとなると、どこにいったのだろう。

 

 しょうがないなあ、もう。



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