騎士と魔女 ~memory~
この話は、私が以前書きました「騎士と魔女」を、指摘された部分を参考にさせていただき、加筆、改稿したものです。
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「…いいか、お前ら!城へ突入するまで、残り半刻だ!鎧の確認と、武器の整備を怠るなよ!!」
重厚な鎧に身を包んだ男が、野営地で休んでいる兵達に向かって怒鳴っている。
「ここには敵の根城があるはずだ!いくら弱っているとはいえ、魔物たちも死力を尽くしてくるはずだ!油断したやつから死ぬことになるぞ!!」
その声を聞き、少し仮眠をとっていた兵達が自分の武器を取りに行く。雑談をしていた者達も、準備に余念がないか確かめ始める。
ここは闇の魔女の城から少し離れた、王国に程近い野営地。丘にいた魔物を城の中へ追いやった兵士達は、突撃するまでの間、束の間の休息をとっているのだ。
「…さて、俺ももう一度武器を確かめておくか……」
「待ってください将軍!!伝令です!!」
と、一人の若い兵士が彼の元へ走ってきた。
「ん?どうした、何かあったのか?」
「先ほど、騎士隊長様がここへいらっしゃいました。この部隊の隊長に会いたいとのことです」
「ロイ様が俺に?一人でか?」
「はい、そのようです。いかがいたしましょう?」
「当然会いにいくさ。しかしどういうことだ?あの方がわざわざこんなところに…」
「分かりかねますが、援軍だとすればあの方ほど心強い方もいないでしょう」
「それもそうだな。まぁ、会えば分かるだろう。ここに案内してくれ」
「はっ!」
そう返事して、若い兵士は客人を迎えにまた走っていった。
「どうも、ロイ様。ようこそお越しくださいました」
ロイ、と呼ばれた騎士は、青年でありながら、右目には眼帯をしていた。
「どうも、将軍。此度の丘での戦いは本当にご苦労様だ」
「いえ、まだ仕上げが残ってます。あと少し、ここが踏ん張りどころです」
ロイと将軍は、握手をしながら、そう言葉を交わす。
「あぁ、今日はその仕上げのことで話をしに来た」
「話……ですか?」
将軍が訝しげな顔をする。
「ああ、いきなりで申し訳ないと思う。が、単刀直入に言わしてもらう」
「なんですか?」
「城の突撃は俺一人でいかせてくれ」
「は、はぁ!?」
思わず将軍は聞き返してしまう。
「無茶だとは思うが頼む。行かせてくれ」
「いえ、あなたなら行けるでしょうが…」
将軍は考える。
一ヶ月前の王国への魔物の大侵攻。ロイはその戦いで、勇者と呼ばれるようになった少年と比肩するほどの働きをした。その功績を認められ、今は騎士団の隊長にもなっているほどだ。彼に任せれば単騎での城の制圧も不可能ではないだろう。しかし-
「なぜですか?このままいけば、この作戦は成功するはず。あなたが出る理由など…」
「では聞くが、闇の魔女の城は未だに見つかってないのだろう?」
「た、確かにそうです…」
実は、今回の目標である敵の城は未だに見つかっていない。
というのも、城の周りを特殊な魔力が覆っているのだ。恐らくは闇の魔女の魔力だろうが、それは人の目では城を見ることが出来なくしているのだ。そのせいで、この城は王国の近くにあるにも関わらず、未だ発見されていないのだ。
「先の魔物の大侵攻のときに魔物に城の場所を吐かせたのはいいが、詳しい位置はつかめてないはずだ」
「ええ、そうです…」
「俺は大体の場所を知っている。手当たりしだいに探すのも悪くは無いが、ここは俺に任せてくれないか?」
「…あなたがそう言うのであれば、きっとそうなのでしょう…」
ロイが城の場所を知っているというのは不思議だが、そう驚くことでもない。彼は多分、魔力を察知したりしているのだろう。
「…分かりました。あなたに任せます。ですが、二時間たっても帰ってこない場合は、自分達が突撃します」
「あぁ、それまでにはけりをつける。ありがとな」
ロイは顔をほころばせた。
「ですが聞かせてください。なぜ、あなた一人でいくのですか?さっきも聞きましたが、あなたが行く理由などないでしょう?」
「……」
ロイは何かを思い出している様子で、右目の眼帯に手を当てた。
「…借りをな、返さなきゃいけねぇんだよ」
「…そうですか。…失礼しました」
「いや、謝ることじゃねぇよ」
そう言ってロイは、自分の武器を装備して、丘の上まで向かった。
「…やっぱりここか…」
ロイは目の前に魔力の膜が張ってあるのが分かった。ここにあるという確証はなかったが、どうやら当たりのようだ。ロイはためらわずその中へ足を踏み入れた。
-すると、目の前に大きな城が建っていた。まさか、ここまで大きいものを隠していたとは。
「…こりゃすげぇな」
ロイは少なからず驚いた。闇の魔女には相当な魔力があるのだろう。
「…驚いてばかりもいられないな」
そう言って、ロイは城門を開いた。
そこは、大きなホールだった。
周りにはいくつもの扉があり、正面には大階段があった。脇には小さな階段もある。
-と、その階段から大量の魔物が現れた。
スライム、オーガ、ドラゴン……中々の種類だ。
「こりゃあ、一筋縄じゃいかねぇな…」
ロイは剣を抜く。細身の剣である。
魔物たちが咆哮する。
「かかってこい、一撃で眠らせてやるよ!!」
ロイはそう叫び、疾風となってホールを駆けた。
「ふぅ…こんなもんか」
ロイは剣をしまう。彼の周りには、魔物が転がっていた。
「ったく、随分手こずっちまった。そんなに強いやつらじゃないんだがな」
彼は一人ごちる。
「だけどまぁ、ここが目的の部屋と分かっただけでもよしとするか」
彼は大きな扉の前にいた。足元にはケルベロスが横たわっている。
ケルベロスは番犬、つまり、この部屋に城主がいるということだ。
「……やっと、あのときの借りを返せるな…」
またそう呟いて、彼は扉を押した。
「……」
その部屋は玉座の間だった。
大きな部屋。真ん中には赤絨毯が敷かれ、その先には仰々しい椅子がある。
そしてそこには……美しい少女が座っていた。
闇の魔女と呼ぶにふさわしい漆黒の髪。吸い込まれそうな翡翠色の目。まだ少しの幼さを残しているが、しかし威厳を漂わせている顔立ち。
彼女こそが、この城の城主であろう。彼女はたった一人、その玉座に君臨していた。
「…ようこそ、我が城へ」
彼女は招かれざる客をもてなす。その声は、部屋全体に響き渡る。
「よう、あんたが闇の魔女なのか?」
「ええ、そうです。私が闇の魔女、そしてこの城の主です」
凛、とした声で彼女は答える。
「次は私から聞きましょう。あなたは、誰ですか?」
彼女に声は、静かなものだった。
「俺はロイだ。王国で騎士団の隊長をやっている」
「騎士隊長…でしたら、たった一人にこの状況も仕方ないですね…」
その声は、微かに震えていた。
「ですが、私はあなたと戦いましょう。たとえ一人でも、私は戦いましょう」
毅然とした態度で彼女は立ち上がり、ロイを睨み付ける。が、その目は少し震えていた。
きっと怖いのだろう。戦っても、絶対に勝てないということは分かっている。それでも、彼女は主なのだから、逃げるわけにはいかない。
「おい、闇の魔女よ。俺と交渉をしないか?」
ロイは突如、こう言った。
「交…渉…?」
彼女は訝しげにロイを見る。
「…何を言っているのか、図りかねますね」
「別に複雑な話じゃない。俺と話し合おうってことだ」
「あなたと、話し合い、ですって…?」
魔女は警戒心もあらわに、両手を前へかざし、魔力を溜める。変な動きをすれば、容赦なく打ち出すつもりだろう。
「ああ、そうだ。俺はあんたと和平交渉がしたい」
「和平…交渉…?」
魔女が困惑の表情を-いや、憤りの表情を浮かべる。
「あなたは…私を馬鹿にしているのですか?」
その声には怒気がこもっている。
「違う。俺はあんたとは戦いたくない。俺は-」
「ふざけないでください!!!」
魔女が怒鳴った。
「なんだと言うのですか、あなたは!!戦いたくない?…私が女だから、私が幼いから戦えないというのですか!!」
魔女は屈辱の表情を浮かべる。
「確かに私は幼い。父が人間に討たれこの城を受け継いだのだってついこの間です!!でも!私だって主だ!この城を守るために死ぬ覚悟ぐらい、とっくに出来ている!!それを……それを!!!」
恐らく、彼女は必死で覚悟をしたのだろう。父親が死に、訳も分からぬまま城主となり、その責任を負って死ななければならないのだ。その悲壮なまでの決意をあざ笑うかのような言葉に、彼女は激昂しているのだろう。
「なんなのですか!この期に及んで和平などと!!」
彼女は叫ぶ。
「私達が何をした!?なぜ殺されなければならない!?」
「--いきなり攻め込んできて、何を今更!!!!!」
少女は、涙を流しながらそう叫んだ。
「……やはり、そうか」
「……え?」
ロイは得心した、という風に頷いた。
「あんた達は、攻めてはいないんだろう?」
「い、一体何の話を…」
「罠だったんだよ、これは」
そう、これは罠だったのだ。先の王国への魔物の大侵攻の時、捕らえられた魔物たちは我が身大事さにこの城を売ったのだ。
「あんた達は利用されたんだよ。恐らく、魔王の軍あたりだろうな」
ロイは話した。
魔王軍は王国を攻めようとしていたが、万が一失敗した時の保険に、この城を使うことを最初から決めていたのだろう。情報を売れば、捕らえられた魔物の待遇も悪くは無くなり、その城を人間が攻めている間に戦力の回復も出来る。魔王軍にとっては、いいこと尽くめだ。この城が姿を隠していることも大いに都合がよかったに違いない。
「じゃ、じゃあ、私達は売られたというのですか…?」
「…ああ、そういうことだな」
「そ、そんな、嘘です!そんな話、信用できません!」
彼女は動揺していた。裏切られたなど、認めたくないのだろう。
「だ、第一、例えそうであったも、私を生かしおく意味なんてないじゃないですか!人間が、私を生かしておく意味なんて…」
「あるんだよ、俺には」
彼女の言葉を遮り、ロイは力強く言った。
「え…?」
「覚えているか?五年前、俺はここの近くの森で野獣に襲われたんだ」
「五年…前…?」
五年前、ロイがまだ騎士ではなかった時、彼は丘の近くの森で野獣に襲われたのだ。
その野獣はひどく凶暴で、その頃のロイでは、とても太刀打ちできなかった。右目も、その時にやられたのだ。
足もやられ、走れなくなり、もう駄目だと思った。
その瞬間、目の前に閃光が走ったのだ。
呆然としているロイの前に彼女は現れた。今よりも幼かったが、とても神々しい人だと思ったのを覚えている。
「ここは危ないですから、早く立ち去ってください」
彼女は、とても美しい微笑を浮かべながら言ってきた。
「おい、なにをしているんだ」
「あ…お父様…」
その時、どうやら彼女の父親らしい人が現れた。
その人は俺を一瞥して言った。
「…人間を助けたのか?」
「はい、襲われて怪我をしていらっしゃったから…」
「不用意に人間に近づくなといっただろう!!」
どうやら彼女は叱られているらしかった。正直、俺は混乱していて、何が起こっていたのかはよく理解していなかった。
だが彼女が次に言った言葉だけは、なぜか胸に残った。多分、一生忘れないと思った。
「でも、人間だからって、誰かを助けることは駄目なことなのですか?」
彼女は、少し涙ぐんだ声で言っていた気がする。
「あの時の…」
「あの後、俺は王国に帰って、考えた。あんたが言った言葉の意味を、ずっと今まで考え続けていた。でも答えは出なかったんだ…」
ロイは噛み締めるように言う。
「だけどな、王国の近くの城を攻撃する、って話を聞いた瞬間、すぐに答えは出たんだよ」
彼は、ずっと、恩人に言いたかった言葉を言う。
「人間でも魔物でも、誰かを助けることは、何も間違っちゃいないんだ。」
「……」
「だから俺は、ここに来た」
ロイは、真っ直ぐ彼女を見据える。その目に、曇りはなかった。
「で、でも…」
再び、彼女は口を開いた。
「あなたはホールの魔物たちを殺したでしょう!?それを…」
「殺してねぇよ、眠らせただけだ」
そう言ってロイは剣を取り出した。その先端は、微かに濡れていた。
「これに即効性の睡眠薬が塗ってある。これで眠らせた」
「え……?」
「いやぁ手こずったぜ?あんたを守るために全然眠ってくれねぇんだからな」
ロイの使っている薬は、致死性こそ無いが並みの魔物なら一瞬で眠る強さだ。
だが、ここの魔物は中々眠らなかった。自分が仕える主を、守るために。
「じゃ、じゃあ、彼らは生きてるんですか?生きて…いるんですか?」
「あぁ、安心しろ。じき目覚めるさ」
「あ……」
その言葉を聞いて、彼女は泣き崩れた。
この城の魔物は、彼女の父親の代からずっと主に仕えていた。彼女も、子供のころからよく遊んでもらっていた。父親が死に、彼女が主になったときも、誰一人文句を言わず、彼女を支えてくれた。
彼女にとって彼らは、かけがえの無い、家族のようなものであった。
「よかった…本当に良かった…」
彼女は涙を流して喜びを噛み締めていた。
ロイはその様子を見ながら、頬を少し緩ませた。
「ところで聞きたいんだが」
「え?」
少し落ち着いてきた彼女に、ロイは尋ねる。
「この城はいつからあるんだ?」
「え、ええと、確か曽祖父が子供の頃からあったと聞いています…」
ロイは微かに息を呑む。まさか、そんなに前から王国のそばにこの国があったとは。
「…そしてその間、あんたらは姿を隠してたんだよな?」
「は、はい、そのはずです」
「…なるほどな。こりゃ、かなり都合がいいな」
「い、一体何の…」
「そして、王国を攻める気も無いんだな?」
彼女の言葉の途中で、ロイは問う。この問いだけ、ロイは語尾を強めた。
彼女は心外だというように答えた。
「もちろんです。なぜ私達が攻めなければいけないのですか?私達は、ただここで平和に暮らせればそれでいいのです。魔王軍が王国を攻めようが、本来私達は関係なかったはず…」
「なら大丈夫だ」
ロイは嬉しそうに言う。
「大丈夫…?さっきから一体何の話をしているのですか?」
「言っただろう、和平交渉の話だ」
「あ…」
「まずは不可侵条約を結ぼう。多少不便になるとは思うが、それなら結べるはずだ。王国も敵意が無い相手に無闇に争いはしたくないはずだ。絶対に乗ってくる」
ロイの言葉に、少女は不安げな顔をする。
「でも……本当に出来ますか、そんなことが?私達は王国を襲ったと疑われているのでしょう?」
「安心しろ、魔王軍のところには勇者に向かってもらった。じきに魔王の口から真相を吐かせるはずだ」
「で、でも私の祖父は王国に行ったとき、魔物だとばれた途端、兵士に襲われたと…」
「それも大丈夫だ。王には俺が直接話すし、隊にもしっかり分からせる。確かに民衆の目はそんな簡単には変わらないだろうが、それでも襲われることはなくなるはずだ」
「……」
彼女は押し黙って考えている。
この者を信用していいのだろうか。それで、本当によくなるのだろうか。
「本当にそれで、私達は助かるのですか?」
「あぁ」
「本当にそれで…私達は平和に暮らせるのですか?」
ロイは力強く頷く。
「あぁ、安心しろ、俺が保証する。」
「……」
少しの沈黙の後、彼女は決意した。
「…お願いします、ロイ様。どうか私達を助けてください」
そう言って、彼女は頭を下げた。
「あぁ、任せておけ」
ロイのその言葉を聞いた瞬間、彼女は膝を折り、震えた声で言った。
「ありがとう…怖かった。死ぬのは……怖かった…!」
ロイは彼女を見る。年は自分と変わりないだろう。まだまだ若い。
そんな少女が、責任のためにただ殺されることを決意するのに、一体どれほどの勇気が必要だっただろう。
ロイはしゃがみ、彼女の頭を撫でた。
「よくがんばったな。もう、大丈夫だ」
「うぅ……うううう…」
彼女は、心の不安を洗い流すように、静かに泣いていた。
「…ありがとう、もう大丈夫です」
「…そうか」
ロイは、静かに彼女から離れる。
「本当に感謝します、ありがとう」
「もういいって、気にすんな」
それに、本当に大変なのはこれからだ。彼女達は王国で買い物をしたりしているだろうが、不可侵条約を結ぶとそれも難しくなる。なんとか友好条約まで漕ぎ着けたいが、王や隊の説得、そして何より民衆の目が厳しいだろう。
「やはり民衆か…」
「…人々の目は、そんなにも厳しいのですか…?」
ロイの呟きを聞いた彼女が聞く。
「まぁ、そうだな。不可侵条約なら難しくは無いだろうが、その次となるとな。それに、今は攻め込まれたばかりだからな」
「そうですか…」
「なんとかしたいんだがな…」
「……」
彼女は何かを考えている。これからのことについてだろうか。
「あの…ロイ様…頼みがあるんです」
「ん?」
彼女は真剣な声で言う。
「その…この期に及んで大変申し訳ないのですが…」
「気にするな、いくらでも聞くぞ」
「ええっとその…」
そして彼女は言う。
「私と結婚してくださいませんか?」
「え……ちょ、はあぁ!?」
突然のことに、ロイはうまく返事が出来ない。
「い、いえ、申し訳ありません!ただ、その、なんていうか…」
「いや、待ってくれ、ちょっと待ってくれ…」
ロイは必死で頭を落ち着かせる。
結婚。確かに騎士団の隊長であるロイとの結婚ともなれば、魔族だからといってそう差別はされることはなくなるだろう。友好条約も、遥かに楽に結べるはずだ。確かに理に適っている。
だがまぁ、理に適おうがなんだろうが、ロイがパニックになるのは仕方が無いことだろう。
「ええと、なんだ、その、確かにいい案だな。だが、ええと…」
「いえ、いきなりすいません!…ただ-」
闇の魔女は、静かに言った。
「ロイ様なら、信頼できると思って-」
彼女は、何も差別や和平のことばかりを考えてこの話をしたのではないのだろう。
ロイを信頼し、託そうと思ったのだろう。
ロイにも、そのことが分かった。
これを、不誠実に返してはいけない。
しっかりと、自分の気持ちを言わなければならない。
だから、落ち着いて、返事した。
「-分かった。結婚しよう」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ、本当だ、信じてくれ」
「で、でも、嫌じゃ…ないですか…?」
「安心しろ、嫌なら断る性分だ」
ロイは思う。嫌なはずが無いだろう。
五年前に助けてもらった時に見た笑顔が忘れられなかった。
あの時に一目惚れした。
その時から、ずっと好きな人だった。
この城へ彼女を助けに来たのも、あの笑顔が忘れられなかったからだ。
不純だと思う。それでも、助けたかった。
ロイは思う。
「ありがとう、ロイ様!!」
絶対に、王国に分からせる。彼女達の居場所を作る。
絶対に、この笑顔を、守り抜いてみせる。
~了~
お読みいただきありがとうございます。
前置きにも書きました通り、この話は「騎士と魔女」を改稿したものです。
とはいっても序盤に追加、細かいところの修正をしただけなのですが…
正直、自分ではどちらのほうが良いのか分からないので、感想や批評、ぜひおねがいします。
↓こっちが「騎士と魔女」です。よければこちらの感想もおねがいします。
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↓前日譜の「魔女の少女」です。
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