三話
それが私
作家名:真城 紅香
年齢不詳、性別不明、出身国日本と言う事意外の全てを謎にした突如人気を挙げた恋愛作家である。
だがその本性は、生まれてすぐに母を亡くし父は優秀な医者でどこぞの国の軍医長で年に一度二度程度しか帰らず広い屋敷に独りで引きこもり人を愛することを知らず愛されること知らない孤独な人生を歩み、しかしながらクリスマスには必ずドーナッツとクリスマスプレゼントを持って帰ってくる父に憧れや尊敬を抱き猛勉強して医大へ進学、しかし何故かしっくりこずに一年後文系へ移転しその後、小説家となって純文学を書いていたが、才能がないのか運に見放されたのか、デビューから二年ほどたっても売れることはなく、大学で孤立していた自分に良く話しかけてくれた数少ない友人と呼べる存在と言うべきか、医者を志して必死に医学を学んでいた学友と飲みに行ったときに聞いた恋愛話から気まぐれに思いつきと想像力を働かせ書いたのが『君の飛ぶ空』と言う恋愛ロマンスである。
が、運命の神はなんと残酷なのだろうか。
生まれてから今まで四捨五入で三十年。
一度も恋愛と言う事をしたことが無い紫の書いたロマンス本は異常なほど売れに売れた。
そして人気を誇るが故にテレビ記者などが作家 真城紅香の顔を写そうとしたり、本の印税が莫大なために収入や家など調べようとするために、真城紅香のプロフィールや個人情報は編集部によって隠され、謎に満ちた作家として騒がれているのである。
「真紅さん、お疲れさまです。何とか締め切りに間に合いましたね。」
担当編集者の九条郁は言う。
見た目は自分とそう変わりない年齢だろう。
郁はティーポットから注いだ紅茶を紫が寝転んでいるソファの前のガラステーブルに置く。
『真紅』と言うのは紫の作家名 真城紅香と言う名前を省略した呼び方らしい。
編集部の人間は真城紅香のプライベートを守るために皆がこう呼ぶのだ。
「あー駄目だ。向かない。私が恋愛ロマンスなんて、、、生まれてから一度だって恋愛のれの字もしてこなかった女が恋愛作家とか、、、読者が知ったら泣くわね。」
ぐびーと紅茶を喉へ流し込みながらぼやく紫に郁は苦笑を浮かべる。
だが、苦笑されようと怒られようと向かないものは向かないのだ。
気まぐれと言うのか作家としてやっていけないのはありきたりだろう。
デビューしてもなかなか作家としてだけで生きていける人はいない。
たいてい副職やバイトなどをして補っている人が殆んどなどが現実だろう。
それに比べて、自分は父親が毎月通帳に入金してくる異常な金と母がなくなったときに入った保険金の半分が溜まっている。
しかも父の影響で医者になるべく学んでいた次期もあったので、看護婦として働こうと思えばできるだけのものは取得しているし、何も苦労なんてしたことがない。
だからこそ作家になっても暮らしていけるのだが、やはり自分の必要価値が見出せないのもまた、この境遇ゆえだと思う。




