好きになっていいの?
こんにちは。
今回は「失恋した私に、いつも意地悪だった男子が告白してきた」という王道青春ラブストーリーを書いてみました。
夕暮れの歩道橋、桜の花びら、そして失恋から始まる新しい恋。
少し切なくて、最後は温かい気持ちになれる短編です。
どうぞ最後までお楽しみください。
失恋した。
その事実を受け入れるだけで精一杯だった。
放課後の教室。
好きだった先輩から告げられた言葉は、あまりにもあっさりしていた。
「ごめん。俺、他に好きな人がいるんだ」
たったそれだけ。
私の一年間の片想いは終わった。
帰り道。
夕焼けが滲んで見えるのは、きっと涙のせいだ。
誰にも見られたくなくて、私は急ぎ足で歩いた。
すると後ろから声が飛んできた。
「おい、結衣」
聞き慣れた声だった。
振り返らなくても分かる。
蒼真だ。
同じクラスの男子。
いつも私をからかってくる嫌なやつ。
「今日も一人? 友達いないの?」
そんなことを平気で言う人だった。
だから私は無視して歩こうとした。
しかし蒼真は私の前に回り込む。
「……泣いてるじゃん」
その一言で、私は立ち止まった。
「別に」
「嘘つけ」
「別にって言ってるでしょ」
強く言い返した瞬間、声が震えた。
情けない。
隠したかったのに。
蒼真は少しだけ困ったような顔をした。
「失恋したんだろ」
図星だった。
私は何も言えなくなる。
すると蒼真は珍しく茶化さなかった。
「そっか」
ただそれだけ言って、私の隣を歩き始めた。
沈黙が続く。
だけど不思議と嫌じゃなかった。
「泣きたいなら泣けば?」
「……」
「我慢する方がつらいだろ」
優しい声だった。
初めて聞くくらいに。
その瞬間、張り詰めていたものが切れた。
私は泣いた。
みっともないくらい泣いた。
蒼真は何も言わずに隣にいてくれた。
◇
それから少しずつ、私たちは一緒にいる時間が増えた。
昼休みに話したり。
帰り道を歩いたり。
蒼真は相変わらず意地悪だった。
「その点数でよく生きてるな」
「余計なお世話!」
「反応がおもしろい」
「最低!」
でも以前ほど嫌ではなかった。
むしろ。
気づけば彼を探している自分がいた。
笑顔を見ると嬉しくなる。
話せると安心する。
そんな自分に気づくたび、胸が苦しくなった。
だけど認めたくなかった。
また傷つくのが怖かったから。
◇
春が終わりに近づいたある日。
夕焼けに染まる歩道橋で、私たちは二人きりだった。
風に乗って桜の花びらが舞う。
「結衣」
蒼真が真面目な声で呼んだ。
珍しい。
そう思った瞬間、彼は私の目を真っ直ぐ見た。
「話がある」
「なに?」
蒼真は少しだけ息を吸った。
そして。
「好きだ」
世界が止まった気がした。
「……え?」
「だから好きだって言ってる」
頭が真っ白になる。
意味が理解できない。
だって。
蒼真は私をからかう人だった。
恋愛対象だなんて思ったこともなかった。
「なんで……?」
「ずっと前から好きだった」
夕日に照らされた横顔は真剣だった。
「お前が先輩を好きなの知ってたから言えなかった」
胸が強く鳴る。
「でももう待てない」
蒼真は少し笑った。
「振られて落ち込んでる時に言うのは卑怯かもしれないけど」
そう言ってから、彼は続けた。
「俺なら絶対泣かせない」
涙が込み上げる。
どうしてだろう。
悲しい涙じゃなかった。
「……私」
怖かった。
また傷つくかもしれない。
信じて裏切られるかもしれない。
だけど。
失恋して泣いていた私を見つけてくれたのは。
ずっと隣にいてくれたのは。
蒼真だった。
「好きになっても……いいのかな」
思わずこぼれた言葉。
蒼真は優しく笑った。
「そのために告白したんだけど」
思わず吹き出してしまう。
本当に意地悪だ。
だけど。
そんなところも好きだと思った。
「……私も」
心臓がうるさい。
「私も、蒼真が好き」
一瞬目を見開いたあと、蒼真は照れくさそうに笑った。
その笑顔を見て思う。
あの日の失恋は確かにつらかった。
だけど。
もしあの涙がなかったら。
私はきっと、この優しさに気づけなかった。
夕焼け空の下。
舞い散る桜の中で。
私たちは新しい恋を始めた。
今度こそ大切に育てていこうと思う。
好きになっていいの?
その答えはもう決まっていた。
――好きになってよかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本作は「失恋の先にある本当の恋」をテーマにした青春恋愛短編です。
恋愛作品では失恋が悲しい出来事として描かれることが多いですが、時には新しい幸せへ続く大切な一歩になることもあります。
結衣と蒼真の物語が、少しでも胸キュンや温かい気持ちを届けられたなら嬉しいです。
感想や評価、ブックマークなどいただけると今後の励みになります。
それではまた次の作品でお会いしましょう。




