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古風な二人  作者: 八島唯
第1章 目覚める二人
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驚く二人

「憂衣那!」

 イがそう叫ぶ。

 「大丈夫、ある程度セーブいたしました。イさま、次はあなたですわ。いざ、お手合わせをお願いします」

 霞桜みおんが矢を構え、じりじりと間合いを詰める。

 『マシーネンフュルスト』重駆逐戦車『ゼーレンヤーガー』の能力。超重装甲にして、巨砲を有する地上戦艦である。

 動きこそ鈍重であるが、並みの火力では傷一つつけることはできない動く要塞でもあった。まさに、『皇帝門の怪物』である。

 敵として相対した時のプレッシャーは尋常ならざるものがあった。

 すう、と呼吸を整えるイ。『マシーネンフュルスト』発現のために気を練る。

 『マシーネンフュルスト』は異世界の兵器の具現化である。この世界では不可能なはずだが、眼の前の二人がそれを実現している以上自分も可能なはずだった。 

 それに先手を打つように霞桜みおんは矢を放った。

 一直線にすさまじい流星の尾を引きながら、矢はイへ吸い込まれる。

 手負いの憂衣那が立ち上がろうとするが間に合わない。かばおうにも体が全く動かないのだ。

 一二八mmの主砲の威力がイの体を貫く――はずであった。

 壁が大きな音とともに崩れる。

 空を射た矢が壁にぶつかったのだ。

 すぐに上を見る霞桜みおん。そこには宙を舞うイの姿があった。『ルフトドラッヘ―T5』の『マシーネンフュルスト』を具現化させて。

 ゆっくりとイは『マシーネンフュルスト』の気を練る。

「そこまでです」

 二人の前に分け入るようにゆさかが歩みを進めた。

「いかに『ゼーレンヤーガー』といえども上部の装甲は薄いのですよ。一方で草野生徒のほうは手ぶら。何も武器を持っていない以上、攻撃もできないでしょう。見たいものは見せていただきました。戦いはここまでにさせていただきましょう」

 そういいながら、三人の前に自分の『マシーネンフュルスト』の要塞を表示するゆさか。

 まるで空中に映し出されたプロジェクションマッピングのように、要塞は投影され回転する。そしてだんだんと小さくなり、消えた――

 しんとした大ホール。

 先ほどまでの戦場は消え、大ホールが復元される。

 天井には星空。北斗七星が見える。間違いなく、この世界のプラネタリウムであった。

「大丈夫か?イ

 憂衣那が抱きつかんばかりの勢いでイに近づく。傷はない。あくまでもあの『マシーネンフュルスト』内での出来事であるようだった。

 イは振り向く。そこにはゆさかと霞桜みおんが腕を組んで立っていた。ゆさかは口を開く。

「力を貸してほしいのですよ。永井憂衣那――ローベルト=フォルクヴァルツ少佐。そして、草野イ兎――エリーアス=フォン=ヒルベルト中尉。『マシーネンフュルスト』の能力からこの世界を護るために――」


 ――しばしの後。戦場の幻影が消え、静けさを取り戻した大ホールの一隅で。霞桜みおんの手によって新しい茶が淹れられた。紅茶ではあるがまるで茶道のような身のこなしである。こぽこぽと湯気の奥に見える霞桜みおんの優雅な立ち姿――それを信じられないような顔でイはじっと見つめていた。

「『マシーネンフュルスト』の能力は異世界のみで発動すると思われていた。私自身も。しかし、ある時発動したのだ。驚きましたよ。この世界の現代兵器を凌駕する『マシーネンフュルスト』の能力。それを女子高生が使えるというのだから」

 ゆさかが机の上で拳をかたく組み合わせながらそう語る。憂衣那は無表情のまま、茶を喉へと流し込んでいた。

「まずお会いしたのが、こちらの藤原霞桜みおんどの。初めて学校でお会いした時、びっくりした。異世界の姿そのままであったからな」

 思わず茶を吹く、イ。それを霞桜みおんはあらあらといいながらきれいにテーブルをふき取る。

「ちょっと待ってください!霞桜みおんさんって、重駆逐戦車『ゼーレンヤーガー』に関係のある人ですよね」

「そうですよ。装甲防御機甲大隊のエースにして、大隊長であられたお方です。いやぁ、こちらの姿も――」

「そんなこと、あるわけないよ!」

 イは思わず叫ぶ。

 無理もない。異世界のオストリーバ陸軍装甲防御機甲大隊大隊長といえば――ブラウトガルム=シュヴァルツアイゼン准将――呼び名は『戦車熊パンツァーベーア』であった。

 その巨体――二mはあろうか。前身は強固な筋肉の鎧に覆われており、無数の金属片が刺さった跡が古傷となって刻まれていた。

 まさに歴戦の勇者というべき偉丈夫の姿をイは眼の前の霞桜みおんに――一ミクロンも重ねることはできなかった。


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