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古風な二人  作者: 八島唯
第1章 目覚める二人
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覚悟を決める二人

 ゆっくりとがれきの中を歩くエリーアス。

 『マシーネンフュルスト』の能力は体力と気力を著しく消耗させる。

 人間にはできないことを、依り代とされた兵器の能力に応じて可能とする能力。それが『マシーネンフュルスト』の能力である。

 彼は戦闘機乗りであった。二九機撃墜のエースである。愛機『ルフトドラッヘ―T5』を駆り、オストリーバの空を護るのが陸軍中尉である彼の務めであった。

 しかし、戦局の悪化とともに防空は劣勢となり、そして終わりの時を迎える。

 敵爆撃隊に付随した護衛戦闘機に囲まれ、エリーアスの愛機は撃墜された。当然彼も運命を同じくするはずであったが――奇跡が起きる。

 『ヘファイストス』の遺志により、エリーアスの中に愛機『ルフトドラッヘ―T5』の魂が宿る。エリーアスは『マシーネンフュルスト』の能力を手に入れ、そして無事に帰投したのだった。

 『マシーネンフュルスト』の能力は大きく二つに分けられる。

 一つはその兵器が持っていた特殊な能力を人間が使えるということ。

 戦闘機であれば高速で飛ぶことができ、戦艦であれば海原をゆうゆうとわたることができる。

 もう一つの能力はその兵器の持っていた能力を、類似の兵器にコピーできるということである。

 つまり、小銃を戦闘機の機関砲並みの威力にすることができる。自走砲を戦艦の主砲の威力にすることができるという能力である。

 もはや旧型機しかない状況で、 『マシーネンフュルスト』の能力によって『ルフトドラッヘ―T5』並みの性能を持って防空戦を戦い続けるエリーアス。

 しかし、ついには航空燃料がつきそしてすべての空港が連合国軍によって占領される。

 かれは生身で小銃を手に取り、帝都の防衛に立ち向かうこととなった。

 部下はもういない。

 弾もほぼ払底した。

 定期的に聞こえる爆撃音。

 じゃりじゃりとがれきが積もった道なき道を行く。

「よう」

 とっさにエリーアスは小銃を構える。そしてため息。友軍である。制服から海軍のように見えた。

「気をつけろ。市街戦であれば、同士討ちもある話だ」

 エリーアスはそう吐き捨てながら、小銃のボルトアクションを引く。

「いやぁ、うちの部隊もほぼ全滅でな。どうだい?親友同士、急増の部隊を組むっていうのは」

 黒い短い髪が煤けている。ローベルト少佐――エリーアスの古い友人である。命を助けてもらったこともあるが、あまり好きになれない人物であった。一方ローベルトのほうはエリーアスのことを『人生最大の親友』と思い込んでいるようだが。

「『マシーネンフュルスト』の能力で対空砲をぶっ放していたんだが――玉切れでな。さらに敵の襲撃機に襲われて、部隊もちりじりになってしまった。もう組織抵抗は不可能ということでな。生き残った部下たちには、降伏なり逃亡なり好きな方を選択するように命令済みだ。俺は――まあ」

 そういいながら拳銃を取り出すローベルト。

「最後まで戦わんとな。もう乗る船もない。地上で死ぬのも皮肉ではあるが、運命――」

 終わりまで言わずに拳銃を撃ち放つローベルト。エリーアスは振り向く。そこにはローベルトの銃弾によって頭部を吹き飛ばされた連合国の兵士が、小銃を抱えたまま立ち尽くしていた。少しの沈黙ののち、崩れるようにその場に倒れる。

「戦艦『ラングトール』の主砲四〇サンチ砲の威力もさすがに拳銃でコピーすると弱いな。それともう、残り弾も少ない。

 エリーアスは無愛想にベルトにはさめていた弾倉をローベルトに放り投げる。

 『マシーネンフュルスト』の能力をほかの兵器にコピーできたとしても、限界がある。

 拳銃であればせいぜい、小口径の自走砲程度の能力にパワーアップさせることが限界であった。

「お互い、能力者としてやれるとこまでやってみるか」

 その言葉にうなずくエリーアス。

 その時、数機の爆撃機が頭上を通過する。

 エリーアスたちを尻目に、帝都の最終目標『皇帝宮殿』を急降下爆撃しようとしていたのだ。

 しかし――それは未遂に終わる。

 宮殿屋根から火線が天に向かって伸びる。それはまるでサーチライトが天を照らすように。一瞬、たった一瞬で敵爆撃機小隊は空中に爆発し、機体の破片を振らせるのだった。

「『マシーネンフュルスト』の能力――か。どこぞの要塞の『マシーネンフュルスト』の能力を使っているようだ。皇帝宮殿を要塞として対空射撃を敢行したというかんじか――まだまだ抵抗できるかもしれない。ローベルト、いくぞ」

 そういいながら、煙の中に消えるエリーアス。黒くなった顔をぬぐいながらローベルトがそのあとに続く。

 帝都が陥落したのはこの二日後のことである。

 

 

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