最終話 種明かし
俺が見るとそこには4人の人間がいた。一人目は騎士の格好に身を包んだ金髪の美青年勇者ユリウス。二人目は黒のローブに身を包む赤髪美女魔法使いマーチ。三人目は杖を持って神聖な空気を出している青髪の聖女ビアンカ。四人目は屈強な体をして大斧を振り回す緑髪の巨漢ビード…四人とも俺を追放したパーティーのメンバー達だ。なぜ俺を追放した四人が来ているのか一番疑問に思っていたのはメロンだった。
「な、なぜ…この前酒場で大喧嘩して追放されていたはず…今更海を越えてまで助けに行く義理なんてないんじゃ…」
「それがあるんだぜぇ…」
ビードはメロンに斧の切っ先を向ける。
「種明かししてあげよっか?なんでこんなことになっているのか…」
魔法で悪人どもを纏めてバインドしながらマーチが告げる。
「最近わが国では失踪事件が問題になってまして…この奴隷たちの中に我々の国民がいるとの情報をそちらのシャドーが嗅ぎつけましてね…でも何の証拠もないのに隣国に攻め入るのはまた一つの問題でしょう?」
「そこで誰かをおとりに出すことにした。でもこのまま行ったってどうせ警戒されてお終いだ。そこで《《あえて目立つよう》》に派手にコイツを《《追放》》したことにし、シャドーはもう僕らとは縁が無いということに表面上する。そこから目を付けた奴について行かせ。その場を炙り出そうという魂胆さ。まさかこんなにあっさり引っかかるとは思わなかったけどな」
ユリウスは周囲の人間を剣で斬り倒しながら俺に向かって言う。
「シャドー…お前ももう制限すんのやめろ。お前は僕が選んだ《《最高の盗賊》》だろ?」
言われなくても分かってるさ…
俺は制限していた魔力を元に戻す。その衝撃で中にいた大男に恐怖を与える。足元にあった影を手で軽く動かすと自由に動かせる。これも一興だな。俺は影を鞭の形に変えて見せる。しかし唯の鞭じゃなく自由自在に影が伸びる鞭だ。当然間合いも関係ない。
「はぁっ!」
俺は一瞬でオークの頭に鞭を入れてしまうと、仮面を割り中から泡を吹いた大男の顔が出現したのを確認する。その隙にもう一方の陰で手を作り女子供から上に助け出すことも忘れない。ダメージはビアンカに治してもらえば問題なし。直してもらえばグレッグなんかは戦力にもなるしね
他の四人に加え元気百倍のグレッグも暴れまわり、対決は俺たちの圧勝で終了した。
「お疲れ~」
俺はユリウスとビードと肩を組む。
「お疲れさん。シャドーどうたったかな?僕の演技は」
「60点だな!あまりにも煩すぎて逆に不自然だった。機会失ったからって最後にわざわざ餞別のふりして探知用の魔道具投げつけることは無いだろ?」
「それは悪かったねぇ…でも全部アンタが建てた計画なんだよ?そのことをお忘れなく」
「へっ!」
「子供たちはこの国の機関に任せましょう。もう世界中に報道しているので今後の情勢に緊張は走りますが…そんなこと知ったことないです!」
「後で何か飲みにでも行こうぜ!俺様あの時一杯も飲めなかったんだよなぁ~すぐに探しに行かされたしよ」
「そうか!じゃあ俺も一緒に飲みに…」
「え?シャドーは僕なんかどうでもいいんじゃないのかい?」
「…」
「冗談だよ。お帰りシャドー。後で酒場で祝勝会しよう」
こうして俺ら五人は連れ立って去っていったのだった。