第45話 家族の関係改善
政治団体への説得に成功した事で、民主派を支持する政治団体達の方針はこれまでの応援や宣伝から、政府と現場互いの意見を届ける、主張のかけ橋となる活動を主にしていく方針へと舵をきる事となる。
今回集まった者達で粗方話を詰めていき、今の現場にどういった支援が必要なのか、政府側はどんな事を伝えて欲しいのか、間に入る人にどんな活動をして欲しいのか等を議論し、今回の話し合いは終わった。
とりあえずこの場での用事は済み、今回はこれで解散となった。集まっていた者達は各々帰路についていく。
富楽はメディナと話しながらジェーツの待つ馬車の所へと向かっていた。
「なんとか話はまとまりましたね」
「あぁ。まぁぼちぼちってとこだな」
賛同自体は得られた。だが、あの手の感情で支持不支持を決めるタイプはどう動くのかは未知数だ。ちゃんとした知識に基づいた考えで支持不支持を決めていないから、賛同していたからと言って協力するかまでは分からない。油断はできない。
富楽がメディナと共に帰路につこうとしていた所、富楽の目にビルとビルの両親の姿が目に留まった。
「メディナさん。先にジェーツさんと帰っててくれないか?」
「はい。何か用事でもあるんですか?富楽さん」
「うむ。ちょいと話したい人が居てな」
メディナを先に帰らせ、富楽はビル達の元へ向かい、気さくに声をかける。
「よぉ」
「おぉ、富楽さん。この度は有難うございました」
「なんと礼を言って良いやら」
そう言ってビルの両親は富楽に頭を下げる。
どうやら仲直りができたらしい。3人の間に流れる空気は重くない。仲直りしたての多少のぎこちなさがあるだけだ。
「どうやら関係も改善した様だな。なによりだ」
「えぇ。お陰で息子と疎遠にならずにちゃんと向き合う事ができそうです」
再び頭を下げ、礼をするビルの母親。
ビルはそんな母親の姿を見て俯き、少し考えた後、気まずそうに口を開く。
「富楽さん。僕は今までディバルさんの様な国民の事を考えてくれる人を応援する事こそが国を良くするための活動なんだと思っていました。ですが、今回僕達の様なディバルさんを応援していた政治団体は、その応援していたディバルさん当人に否定された。その応援は迷惑だと。僕達は何処で間違っていたのでしょうか。良ければ教えてくれませんか?」
どうやら自分が応援していたディバルに拒絶された事で自信を失った様だ。
これまでのディバルは問題行動をする人にも決して無暗に否定する事はなかった。問題のある行動を取る人に対しても、自分で察せる様に優しく諭していた。例えば、ビルに対しては現場で働く人が大切だとか、自分を応援するだけじゃだめだよといった感じ。そんな優しい対応をし続けていたからこそ、自分達の行為がディバルの考えと乖離している事に気付けなかったのだろう。優しいというのも考えものだ。
富楽はビルに手を差し伸べて語り始める。
「君達は、政治に関わっている内に楽な方へ楽な方へと流れてしまったんだよ」
「楽な方へ?」
「あぁ。まず、ビルさんは経済政策を成功させるために必要なのは、現場で働く人を増やしたり現場で働く人を豊かにしたりする事だってのは分かっているよな?」
ビルは頷き 両親もそれにつられる様に頷く。
それを確認すると富楽は話しを進める。
「で、ディバルさんがそれを実現してくれると考えて、彼の居る民主派を応援していたと」
「はい。ディバルさんの話しを聞いて、この人ならばと応援する事に決めました。庶民感覚もあり、現場で働く人へ話しを聞く姿勢も見えたので信用できる人だなと」
「ここで厄介なのは、応援という行為そのものだ。応援という行為は、自分が現場で働かなくても、自分が現場で働く人達を助けなくても出来てしまう。何の成果も出せなくても応援するだけなら出来てしまうから、ただ応援するだけの人はとても増えやすいんだ。現場で働いていないけれど現場で働く人を尊敬しますだとか、景気を回復させる方法は分からないけれど景気を回復させようとしている人を応援しますとかな。一見すると、経済政策を応援する人が増えると問題が解決に近づいている様に見えるんだが、実態は何の策も持たない人ばかりな上に、政治活動のために労働の時間を減らしていたりするから、経済政策を成功させる事を考慮するとあまりよろしくないんだよ」
ここでビルの父親が言う。
「なるほど。だから今回の様な話し合いの場を設けた訳ですか」
富楽は腕を組み自信あり気に答える。
「そういう事。これまで民主派頑張れ現場で働く人達頑張れって感じの活動しかしてこなかった人達に、本来やらなきゃいけない事を伝え、国民の生産活動や消費活動をサポートしてもらう。これでようやく、政府と国民が一丸となって経済政策に取り組めるってもんだ。国民に生産や消費を意識してもらわないと、経済政策はどうしようもないからな」
この場の3人は感心の表情を富楽に向けた。静かにうんうんと頷いたり、「なるほどー」と声を漏らしたりの反応をした後、再びビルが口を開く。
「それにしても、良かったのですか?」
「ん?」
「ほら。富楽さん、民主派を支持している政治団体からの印象が悪くなったじゃないですか。関係が悪くなると、今後の政策にも支障が出るんじゃないですか?」
心配そうな口調で言うビル。富楽はそんなビルの心配を笑い飛ばす。
「なぁに、そこは大した問題じゃないさ。政治団体の暴走を放置した方が状況が悪くなるからな。どの道どこかで向き合うしかなかった。むしろ嫌われるのが俺だけで良かったよ。最悪反民主派に回ってしまうリスクだってあったくらいだしな」
富楽はここで一呼吸入れ、優しい口調で言葉を続ける。
「なにわともあれ、君等家族が仲直り出来て良かったよ。政治ってのは、国民を豊かにするためにするもんだ。政治に関心を持ったせいで家族同士が分かり合えなくなるなんて、しょうもないからな」
言い終わった後、富楽は「じゃあな」と言いその場から離れようとした時、ビルは深々と頭を下げながら声を上げる。
「ありがとうございます富楽さん。僕、これからはただ応援をして満足するんじゃなく、実家の手伝いをしながら、今の農業にどんな政策が必用なのかを農家の視点で考え、それを政府に伝える活動をしていこうと思います。他の仲間にも、そういった活動に変えていく様に伝えていこうと思います」
そんなビルの姿を見て富楽はニコリと笑い、
「助かる」
と言葉を残し、その場を去って行った。




