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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
応援と思考停止編

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第44話 支持者と信者

 富楽は経済政策を進めるために支持者がするべき事を語っていく。


「経済政策で目指すべき事は、国家の供給能力と消費能力をバランスよく成長させる事。国民がより良い商品をより安定して生産し供給出来る様にし、国民がより良い商品をより安定して買える様にする。それが経済成長というものだ。だから経済政策は理論上正しい政策を行ったかどうかだとか、国民を大切に考えている人がトップになったかどうかで決まるものではなく、国民の経済活動で是非が決まるものなんだ」


 富楽が身振り手振りを加えながら話していくと、ディバルが相槌をする様に言葉を続ける。事前にある程度の打ち合わせをしてあるため二人の掛け合いは円滑だ。


「では、経済政策において最も重要なのは、国内の産業の状況や国民の生活を知り、それに合った政策を行う事という訳ですな?」


「はい。その点で言えばディバルさんはちゃんとしています。国内の産業を調査し、その結果を前提にどんな政策が必用なのかを議論しているし、労働者層が政治に対して意見できる様に窓口を設けたり、直接意見を聞くために職員を向かわせたりもしている。彼の現場を知ろうとする姿勢は問題ありません。ディバルさんの活動やペンブローク領の成功例もあって、民主派の領は全体的に見ても国民の意見を聞ける様にするための仕組みづくりが着実に進んでいると言っても良いでしょう。問題なのは政府側ではなく国民側の方にある」


 富楽の意見に政治団体の面々は動揺交じりに答える。


「つまり。我々の活動が原因という事でしょうか?」


 普段であれば彼らは強気で言葉を返していただろう。彼らの様な政治団体は今まで自分達への批判意見を受けると、お前は民主派を否定するのか?だとか、ディバルさんが間違っているとでも言うのか?とか、民主派全体への批判や人気のあるディバルへの批判意見へと挿げ替えて批判を逸らしてきた。

 だがこの場ではそうはいかない。彼らは民主派の一員としての活動に問題があるとして民主派の筆頭であるディバルが問題だと糾弾したのだから、もう批判を逸らす事は出来ないのだ。

 そんなたじろいでいる政治団体の面々に富楽は言い聞かせる様に説明していく。


「えぇ。例えば、先にも言った現場からの意見を集めようとする場合だと、政府側は現場で働いている人達の意見、つまり現状のどこに不満があるのか、どこに問題があるのかを現場で働いている当人から聞こうとしている訳だ。だから当然、現場で働く人達からは不満の声が出てくる事になる。ここで出てくる不満の声自体は、その意見を元に政策を決めていくためのものなので問題はないのですが、ここで政府を擁護するのは問題になる。政府に対する不満意見を、国は頑張っているのだから文句を言うなだの我儘を言うなだのと批判してしまうと、せっかく国民から出てきた現状の問題点の報告が政府に届かないという事態になってしまう。そして、そんな擁護をディバルさんの支持者達はしてしまっていた。ワザとではないでしょうが、結果的に足を引っ張ってしまっていたんです」


 政治団体の面々は身に覚えがあるのかザワついている。彼らとしてはそんな事は無いと声高に否定したい所だろうが、公な政治活動をしている以上、どんな発言をしてきたのかは記録に残っている。ここで否定してもすぐに嘘がバレてしまうのだ。彼らもそれは重々承知なのだろう。否定したいけれど出来ないという感情が政治団体の面々の表情ににじみ出ていた。

 そんな中ディバルは富楽に質問を投げて話を進める。


「もしかして、ペンブローク領で経済政策をつつがなく進める事ができたのはそれが理由だったのですか?」


「その通り。ペンブローク領では長い間経済政策の失敗が続いていましたからね。メディナさんの支持も庇う人が多数出てくる程高くはなかった。おかげで無駄な擁護意見が湧かなかったんですよ」


 このやり取りに席に座り黙って見ていたメディナは複雑な表情。こういった話しをする事は事前に話してはいたが、それでもちゃんと出来ていなかった時を思い出してしまうから良い気はしない感じだ。

 富楽は続けて語っていく。


「他にも国民がカネを使える様にするための経済政策では、国民の消費意欲が十分に高まっていないのに政府を擁護したせいで、景気対策が不十分なままになったりしている。本来経済成長を実現させるための協力者であるべき支持者が、経済成長が実現できていないのに擁護する信者に成り下がってしまうと、目標としている政策の実現が出来なくなってしまう。だから支持者であるなら信者になってはならないのです」


 善悪二元論は政治に対する考えを歪めてしまう。指導者に対してこの人は正義だという評価をしてしまうと、たとえ経済政策が上手くいかずに国民が貧困に苦しんでいてもその経済政策は正しいんだと言ってしまうし、逆に指導者に対してこの人は悪党だという評価をしてしまうと、経済政策が上手くいっていて国民が豊かになっていてもその経済政策は間違っていると考えてしまう。経済政策は信じるか信じないかで決めて良いものではない。国民の生活を見て是非を決めるものなのだ。

 しばらくの沈黙の後、政治団体の方から声が上がる。


「我々の応援の仕方に問題があったというのは認めましょう。ですが、何もしないままでは復権派の台頭を許し、国政を担っている民主派は復権派に取って代わられる事になってしまいます。富楽さん、まさか貴方は復権派に国政を委ねるべきだとでも言うおつもりですか?」


 政治団体の面々は富楽の意見を受け入れはしたものの、非を受け入れた感じではなく隙あらば批判してやろうという姿勢を見せている。富楽としてはあまり気に入らないが、まぁこの程度であればいいだろう。


「当然こちらも民主派の勝利を願っています。そして、そのために民主派を支持する方々には、生産と消費を行う当事者の意見を聞かせて頂きたいのです」


「当事者の意見?」


「はい。これから経済政策によって国の供給能力を成長させなければならない。だから、政府が発表した政策が国の供給能力を守り成長させる事に繋がるのか、政策が実施されたら、それで供給能力を守り成長させる事に繋がっているのか、当事者である現場で働く人達の視点からの意見を出してほしい。これから経済政策によって国民の消費能力を高めなければならない。だから、政府が発表した政策が国民の積極的な消費活動に繋がるのか、政策が実施されたら、その政策が国民がカネを使いやすくなる事に繋がっているのか、消費活動の当事者である大衆からの意見を出してほしい。民主化を進める利点は経済活動を行う当事者が意見を出せる事なのだから、その利点を生かすべきでしょう」


 富楽がそこまで説明すると、政治団体の中から高圧的に質問が投げられる。


「では、我々はどうすれば良いと言うのですか?」


 そんな質問に富楽はひょうひょうと答える。


「一番は現場で働いて生産活動に従事してくれる事ですね。どれだけ経済政策の良し悪しを語った所で現場で働く人がいなければ何の意味もない。現場で働く人が居なくなっている時に理論を語った所で机上の空論にしかなりません。そしてもう一つは現場の状況を政府に伝える事。権力者だけで物事を判断していると、現場を無視した政策が進められる事が多々起きてしまう。たとえ権力者に悪気が無くともね。だから国民の声を聞く政治を進めるのなら、現場の状況を伝える人も必要になるのです。現在民主派への支持が弱まっているのは、国民が政治に参加する事が経済の再生や産業の成長に繋がっていない事が問題視されているもの。一方復権派は、政府が主導となって国民を生産活動へ誘導し、経済の再生や産業の成長へと繋げている。民主派の支持を取り戻すというのなら、無計画に応援するよりも、国民の政治参加による景気回復や産業の成長を実現させる方が有効でしょう。結果を出せていないのに無理な擁護をする人が増えても、かえって白けるだけですからね」


 富楽の答えにディバルは頷きながら言葉を続ける。


「真に民主派を応援するのであれば、民主化が経済成長に貢献できる事を結果で示すべきだという話しですな。国民の意見を政治に取り入れる事が、現場で働く人達が働きやすい環境を作る事に繋がり、ひいてはより良い製品がより安定して供給できる事を示し、国民の意見を政治に取り入れる事が、国民がお金を使いやすい社会を作り、景気を良くする事に繋がる事を示す。そういった結果で示す事こそが民主派の信用を取り戻すのに必要な事だと」


「そう。政府側がどれだけ国民に寄り添っていても、国民が政府を応援したからと言って必要な品が湧いて出たりインフラが勝手に整備される事はない。国民にどれだけ支持されている人が指導者になろうと、それで現場で働く人達が増えるかどうかは別問題だし、国民が積極的にカネを使うかどうかも別問題。結局の所、経済政策は国民次第。いかにして国民に経済活動をしてもらうかという話しなのです」


 富楽が話し終えると生産事業者の代表の一人が口を開く。


「私達は富楽さんの言い分に賛成です。今回私達が話し合いに参加したのも、富楽さんが話した事と同じような事を要求するためでしたしね」


 さらにディバルも賛同の意見を出す。


「私としてもそちらの方が有難いですね。私を支持してくれている方々も、富楽さんが提案した様な活動に変更して頂けると幸いです」


 ここまでくるともう富楽を否定できる雰囲気ではない。政治団体の面々はザワザワと代表達で話し合い、意見をまとめ、答えを出す。


「ここまで言われてしまっては聞かない訳にはいきませんな。分かりました。我々は活動を改めましょう。ですが、もしこれで上手くいかなかった場合、責任は追及させてもらいますよ。富楽殿」


 認めはするが嫌々ながらといった感じ。

 富楽は鼻で笑いながらもそれに答える。


「良いだろう」


 こうして、政治団体の面々は反抗の意思は持っているものの、一応は富楽の案に同意するという形となった。富楽へヘイトは向いているが、ディバルや生産事業者を批判するまでにはなっていないし、結果としては上々と言って良いだろう。

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