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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
大衆の思考停止編

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第36話 現実と照らし合わせてみると

 ディバルとの話し合いを終えた後、ひとまずスパニエル領に来た目的も終わったので、富楽とヴィヴィエットは観光がてら特に目的もなく歩いていた。

 そんな中、ヴィヴィエットは富楽に話しかける。


「フーさん。私色々と考えてみたんですけど、やっぱりピンときません。ディバルさんはちゃんと国を良くするための政策を考えていて、大勢の人がそれを支持している。なのに政策に協力する人が全然増えない。それどころか、政策に協力する人が減ってしまうなんて・・・」


 納得のいかない様子のヴィヴィエット。

 まぁ無理もない。政策を実現するために支持者を増やすという話は聞いた事もあるだろうし納得もいくだろうが、支持者が増えると政策が実現困難になるという話はどんな事なのかそうしっくりくるものではないだろう。


「ふぅん。それじゃあ、丁度良く集会やってるみたいだし、どんな惨状になっているか、実際に見てみるとしようか」


 富楽としては十分に状況は把握できたし、当初行く予定はなかったけれど、ヴィヴィエットが気になっている様だし、問題の支持者がどんなものかをより知るため、二人はある民間の集会へと赴く事にした。


 スパニエル領で行われている民間の集会。非権力者達である国民も政治について話し合おうという考えのもと、政治に関心を持っている人達が集まっている。会場は公民館的な所で、普段から庶民が集会を開く場として使われている場所だ。

 富楽とヴィヴィエットは席に座り、参加者達の話を聞いていく。

 この集会の主催者である男が登壇し、現状を嘆く。


「今のルプス連邦の衰退。それは国民が政治に無関心である事が原因です。ルプス連邦が民主主義になってしばらく経つというのに、いまだに政治に関わろうとする人は少ない。政治は自分達の生活に関わる事だというのに、ほとんどの国民が他人事。誰がトップになっても変わらない、自分には関係ないと考えている者が大半です。しかし国民に権利がある以上、国民は政治について考え、関わらなければならないのです。皆さん。これからのルプス連邦のため、どんな人を支持するべきか、どんな政策が必要なのか、これからも皆で話し合っていきましょう」


 参加者のある男が登壇し、意見を出す。


「ルプス連邦が衰退した原因は需要不足です。国民がお金を使わず貯め込む様になった事でお金が流れなくなり、お金が流れなくなった事で産業従事者が儲からなくなり、儲からなくなった事で産業従事者が減っている。この流れを止めるために、国民一人一人がお金を使える様にしていかなければいけません」


 参加者のある女が登壇し、呼びかける。


「現場で働いている人達は国のインフラを支えてくれている人だと言うのに、収入は低く、立場が弱くて自分の意見を聞いて貰えない事も多いのが現状です。私達は現場で働いてくれている人達のお陰で生活出来ているのですから、現場で働く人達に感謝し、現場で働いてくれている人達の事を考えてあげるべきだと私は思います」


 そんな話を聞いていたヴィヴィエットはヒソヒソと感想を漏らす。


「なんだか、思ったよりもまともそうな感じですね。思考停止してるって話でしたから、もっとこう、政府に任せればいいんだー、とかの丸投げする感じの話をしているものかと思ってました」


 富楽もヒソヒソと話していく。


「まぁ、一見するとまともそうには見えるだろうな。だが、ここで現実と照らし合わせるとそのヤバさがよく分かる。労働者が増えるどころか減少している事や、国民がろくに貯金を止めていない事は既に結果として出ている。つまり、貯金を止めてお金を使おうと呼びかけている人や、その呼びかけに賛同している人達は節約を止めていないし、労働者が減って産業が失われつつある事を問題視している人は現場で働こうとしていない。つまりここに居る奴等の主張は、ほぼ全てが自分はやらない事を前提とした話をしている訳さ。この集会の主催者なんて、ロビー活動に専念するために、元の仕事を止めちゃっているからな。それで生産事業者の減少を嘆いているんだからお笑いだよ」


「えぇ・・・」


 ヴィヴィエットは流石にドン引きだ。労働者を増やさなきゃいけないと言いながら、自分は労働を辞めているという事実。言っている事はまともでも、それを聞けば彼らの主張の歪さもよく分かるというものだ。

 ヴィヴィエットは続けて話す。


「これって、皆何かがおかしいって思わないものなんですか?」


「残念ながらね。自分が正義だと確信した人間は、自分が間違っていてもそれに気づけないもんなんだよ。彼らはロビー活動をする事で自分がやるべき事をやっていると思っている。それこそ、労働による生産活動や消費によって経済を回す事よりも、言論活動の方が社会の役に立つんだと思い込んでしまっているんだ。民主主義が失敗する典型例だな。国民が言論活動に夢中で経済活動に力を入れなくなる。こうなってしまうと経済政策は機能せん」


 富楽の説明を聞いたヴィヴィエットは、富楽のペンブローク領での功績を思い浮かべた。


「だからペンブローク領で富楽さんがやっていた経済政策では、自分がやるかどうかを強調させて伝えていたんですね」


 自分の功績だという事もあってか、富楽は自慢げに話していく。


「うむ。経済政策は国民がちゃんと経済活動を行うかどうかで是非が決まるからな。理論上正しいかどうかとかは、実はそこまで重要じゃない。貯金を止める事が理論上正しいから貯金を止めてといわれて国民は貯金を止めるかと言えば、それで今まで貯金をしていた人が貯金を止める訳ないし、国民が労働するのが理論上正しいと説明して、それで国民が現場で汗水流して働く様になるかと言えばそうはならない。どうすれば自分はカネを使える様になるのか、どうすれば自分は現場で汗水流して働く様になるのか、それは結局の所本人次第なんだ」


 ヴィヴィエットはやるせない気持ちをため息に乗せて放つ。


「なんというか、国民が政治に関心を持つのも考え物なんですね。政治に関心を持つ人が増えても、それで国民が経済活動やらなくなちゃうなら元も子もないですし。いくら政府を応援してくれる人が増えても、国民が生産活動をしなくなったり、国民がお金を使わず経済を回さなくなってしまったら、政府も経済を立て直せませんよ」


「だな。民主主義の利点は生産や消費を行う国民自身の意見を政治に反映させる事ができる点だが、国民が政治に変な関心の持ち方をして、自分を言論人かなにかだと錯覚した奴が増えてしまうと、生産者や消費者の意見が政府に届かなくなってしまう。こうなると民主主義は機能不全に陥って、制度を悪用する奴の意見ばかりが通るろくでもない仕組みに変わり果ててしまうんだ。だからこそ、民主主義を進めるのなら、国民に政治参加させる意図を国民自身に分かってもらわなきゃいかんのさ」


 このルプス連邦では、民主化によって国民が政治に関心を持つようにはなっている。だが、その実態は国民がロビー活動をする様になっただけであり、生産者や消費者の意見が政府に届く様になった訳ではなかった。

 むしろ国民が言論活動に固執する様になった結果、かえって国民のちゃんとした意見が政府に届かなくなってしまっている。そんな隙を制度を悪用する様な連中に利用されてしまっている。ルプスの現状はそんな所だろう。

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