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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
供給不足編

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30/40

サルーキ領での会談

 サルーキ領の街から少し外れたところ。活気がある駅周辺と、ゴーストタウンな惨状となっている街はずれの境目にある大きな建物。その一室に複数の民主派の領主達、そして富楽が一堂に会していた。

 民主派領主の表情を見るに、メディナへの反感感情を持った者が半分、どうしようかと答えを決めかねている者が半分といった所。

 そんな民主派領主達に向けてメディナは口を開く。


「この度集まって頂いた理由は他でもありません。ウィペット領領主ジンクス様、ホンディエ領領主フランツ様、ファンドランド領領主ウィークス様。そのお三方が進めようとしている、サルーキ領の現領主ベントランを支援する方針、民主派全体としてそれを進めようとするのを止めて頂きたい。現在復権派は、現領主を辞めさせて新たな領主に変え、新たな体制の元サルーキ領の経済を立て直そうとしています。対立している派閥の進めている事とは言え、それは民を救うための策。国民を救うために動いている人を妨害する様な事はしないで欲しいのです」


 ホンディエ領領主フランツは机をダンと叩き強気な主張を述べる。


「今、復権派はサルーキ領を手中に収めるべく手を伸ばしている。それを見逃してしまえば、復権派は力を増し、民主派は力が弱まり、我々民主派は国政の主導権を失うやもしれん。これは由々しき問題であろう」


 メディナは負けじと言葉を返す。


「ここに来る際に貴方方もご覧になったでしょう?今のサルーキ領がどんな状態になっているのか。今のサルーキ領の民を救うためには、新たな産業による雇用の増加が必要不可欠。そして復権派の領主達は、現在第二次産業を発展させるための策を進めています。このままいけば、サルーキ領の領内に大量の雇用が増え、サルーキ領の民は生活するための仕事にありつける様になるのですよ?それを妨害するおつもりですか?」


 当の三名の領主は受け入れる様子は無く、ファンドランド領領主ウィークスは反発してくる。


「そうは言いますがねぇメディナ殿。民主派の力が弱まれば、結果的に国民の権力が奪われる事になるのですよ?故に、ここで復権派の躍進を止める事は結果的に国民全体の権力を守る事になり、国民の利益に繋がる。つまり、ここで復権派の妨害を行う事は国民のためなのです」


 メディナは怒りを込めて言い返す。


「何が民のためですか!自分達の派閥を守るために、今苦しんでいる人を見捨てて、国民を守っていると言えるのですか!?それで民主派と言えるでのすか!?」


 ウィペット領領主ジンクスも怒りを込めて言う。


「何を言うか!国民の事を思うならばこそ、民主派の力を確固なものとし、国民の権力を守らなければならないのではないか!」


 メディナはイライラしながらさらに言い返す。


「国民の事を思うんだったら、真っ先に国民の生活の事を考えるべきでしょう?第一、生活に困窮している国民にとって重要なのは、自分達の生活がどうなるのかという話です。国民生活よりも派閥争いを優先するのであれば、それこそ民主派は国民からの支持を失い、求心力を失いますよ」


 メディナとベントラン支持を打ち出した三名の領主は互いに譲らず、あーだこーだと言い合っていると「双方落ち着いてください」と同席していたディバルは口をはさむ。

 そして言い合いを止めたディバルは続けて話す。


「メディナさんの言い分はもっともです。今ベントランを支持する様な事をすれば、我々民主派は全体の支持が失われかねません。これを民主派全体の総意だと思われるのは困ります」


「な!ディバルさんまでその様な事を」


 ウィークスは驚愕の表情を見せるが。ベントラン支持の三名以外、ディバル同様ベントランを支援する事を快く思っていない様子。


「貴方達もこの場にくるまでに見て来たでしょう?サルーキ領の現状を。発展しているのは駅周辺だけで、少し離れただけでまるで廃村じゃないですか。この惨状を見て、今の領主に任せて良いと思える訳がないでしょう。これを支持してしまっては国民に失望されてしまいますよ」


 ベントラン支持の三人は言い返せない。それもそうだ、ここに来ている領主達はここに来るまでにサルーキ領の惨状をその目で見ている。衰退しきったサルーキ領を見て、その原因を助けようなんてそう簡単に言えたものではないだろう。

 富楽としても、会談をサルーキ領でやる事にした甲斐があるというものだ。データを見せて説明しただけではこうはいくまい。実物を見たかどうかはやはり大きい。

 ただ、他の民主派領主もメディナに全面的に賛成という訳でもないらしい。

 他の民主派領主を代表する様に、ディバルはメディナにも告げる。


「ですが、私としても復権派が力を持ちすぎるのは問題だと考えています。国民の生活が第一なのは良いのですが、我々としては民主派の力が弱まるのも避けたい。その考えも理解して貰えると助かります」


 他の民主派領主はディバルの意見に賛同する様に頷いている。民主派全体としては、派閥闘争を優先して国民生活を蔑ろにするのは良くないが、だからとて対立派閥の強化を放置して欲しくないといった所か。まぁ及第点だろう。

 民主派の考えも定まった所で、富楽は満を持して動く。


「では、民主派の皆様の大まかな方針も決まった様なので、こちらが進めようとしている策について説明していきましょう」


 富楽がパンパンパンと手を叩くと、富楽がペンブローク領から連れて来た職員が人数分の資料を持って部屋に入ってきた。

 そして職員は資料を全員に配り、お辞儀をして部屋を出た。


「配られた資料をご覧ください」


 領主達は言われた通り資料に目を通していく。配られた書類には、復権派が現在進めている方針と、富楽が提出した修正案について記載されていた。しばらく目を通した後、ディバルは口を開いた。


「ふむ。復権派の支援による第二次産業の強化、それと同時に第一次産業の再生を進めていくと。確かに、これならば経済を立て直す事も、サルーキ領の自立も不可能ではないでしょう」


 富楽の策の印象は悪くない。しかしある民主派領主が呟く。


「しかし、これだと復権派の力が・・・」


 復権派の強化を不安視する声。それを予想していたかの様に、富楽は悠々と語っていく。


「そう。今のままだとサルーキ領は復権派が牛耳る事になります。そこで自分はもう一つの策を提案します」


「もう一つの策?」


「はい。今復権派が進めているサルーキ領を立て直すための策。立て直す方針はちゃんと練られているんですが、なにぶんサルーキ領の状態が酷いものでね。復権派だけの支援だと十分な支援にならず、経済の立て直しにも時間がかかってしまいそうなんですよ。そこで、民主派もサルーキ領の立て直しに協力するんです。その代わりに、サルーキ領の有力者に民主派の息がかかった人物を増やす。たとえ領主が復権派の領主になろうとも、それを抑えれる有力者に民主派寄りの人物が多ければ、サルーキ領で復権派が好き勝手できる様にはならない」


 一人の民主派領主が富楽の用意した資料を見ながら言う。


「なるほど。領主は復権派にくれてやるから、民主派の有力者を増やさせろって事ですか。確かにそれなら、民主派の影響力の増加とサルーキ領立て直しを両立できそうですね。少なくとも、ベントランを支持するよりかは良さそうです」


「民主派の有力者を増やさせてもらえる様、こちらが復権派の人達と交渉します。なので交渉が成功したら、ベントランを支援する方針ではなく、復権派と協力する方針を選んでほしいのです」


 通常であればこの様な交渉は相手にもされないだろうが、今回は三名の民主派領主がベントランを支援しようとしているという事情がある。つまりこのままでは、民主派は領民を蔑ろにする様な人物を応援していると扱われてしまう。

 メディナと富楽が提案する折衷案か、ジンクスとフランツとウィークスが進めているベントランを支援する方針か、この場にいる領主達は二択を迫られているのだ。

 少しの間沈黙が続いた後、ディバルが沈黙を終わらせる。


「ここはやはり、民主派全体としてはメディナさんが進める復権派と共にサルーキ領を立て直す方針を支持すべきでしょう。サルーキ領にまで出向いて改めて分かりましたが、このままベントランに領主を続けさせる訳にはいきません。たとえ復権派の影響力が強くなろうとも領民の生活を第一に考えるべきです」


 他の領主の表情を見るに、他もディバルと同様の考えの様だ。

 民主派全体としては、メディナと富楽の案を支持するという事で話がまとまりそうになっていたその時、


「ま、待ってください。それだと復権派が力を持つ事に変わりありません。ここは私達の案を・・・」


 しつこく食い下がろうとするフランツ。そんなフランツに、他の領主達はもういいだろとうんざり顔。

 そんな中、富楽はパンッパパンパンと手を叩き、再び職員を呼ぶ。

 職員はさっき持ってきたものとは別の書類を持ってきて、ジンクス、フランツ、ウィークスの三人に配る。どうやら三人とも別の資料を渡さている様で、それぞれの書類で厚さが違う。


「これは何です?」


 富楽は三人の領主に手をかざして挑発的に告げる。


「ご覧ください、お三方」


 ジンクス、フランツ、ウィークスの三人は書類をめくり目を通していく。

 三人は少しの間、真剣な表情で書類に目を通していたが、書類をめくっていくにつれ次第に顔は青ざめ、焦っているのかめくっていく速度を上げていく。

 そしてフランツはめくっていた書類をバンと閉じて見えない様にし、焦りの表情で富楽に問う。


「な!なぜこれを。お前いったいどこでこの情報を・・・」


 富楽は問いに答えるつもりはない。ニヤニヤと笑いながら三人に告げる。


「復権派が力をつけてきて不安なのは分かるが、今回は黙って俺とメディナさんに任せてくれんか?俺も強引な手は使いたくないんでな」


 その言葉で察したのか、ジンクス、フランツ、ウィークスの三人はそれ以上つっかかって来る事はなかった。ひとまず一部民主派領主の暴走はこれまでだろう。

 これにて会談は終わり、民主派全体の方針が決まった。

 民主派全体としては、復権派と協力してサルーキ領を立て直す方針。本当に協力するかどうかは復権派との交渉次第にはなるが、少なくとも交渉の結果が出るまでは待ってくれる事となった。

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