第29話 民主派の問題
時は過ぎ、ガルザックとのやり取りを終えて数日後。
メディナの屋敷に富楽の驚く声が響く。
「はぁ!?民主派がベントランを応援してる!?」
同じ部屋にはオルドルとメディナ。何やら現在進めている策に問題発生との事で、三人はまた話し合うために集まっていた。
驚愕する富楽に、メディナが気疲れした様子で答える。
「はいぃ、どうやら民主派の領主達は復権派の勢力拡大を危惧して、ウィペット、ホンディエ、ファンドランドの三つの民主派の領主がベントランの支持を表明した様です。ベントランが領主を続けていれば友好的に接すると」
現領主のベントランが失脚しようとしているという話が公開され、それが復権派の後押しによるものという事が世間でも話題になる様になったのだが、そこで民主派の領主達は復権派の勢力拡大を問題視。突然、問題だらけの領主であるベントランを支持する方針をとった様だ。
要は民主派が助けてやるから復権派と対立しろという事だろう。
「全く、国民の生活を無視して派閥闘争か、ふざけてんな」
富楽はため息を漏らす。
民主派が聞いて呆れる。普通に考えると、貴族の権力を取り戻すと言っている復権派が自分達の権力のために動いているとなるものだが、実際は逆の様だ。
少なくともガルザックやアルダートを見るに、この国では貴族の権力を取り戻そうとしている復権派の方が民の事を考えている風に見える。
「とりあえず、今の状況ってどうなってるの?ちょっとこんがらがってきてるんだけど」
メディナは二転三転する状況に混乱気味の様だ。無理もない。当初のサルーキ領の手伝いから事が離れすぎている。
富楽は簡潔に説明する。
「最初、俺は第二次産業の強化によるサルーキ領の立て直しを考えていた。現領主のベントランと話し合って、サルーキ領に工業地帯を作り、失われてしまった供給能力を確保していくつもりだった。だが、領内の有力者に話しをしてみると、復権派の後押しによって第二次産業の強化の話が既に進められているとの事だった。第二次産業の強化は元々俺もやるつもりだったから、復権派と協力する方針でいこうと考えたんだが、そこでいくつかの民主派領主が復権派の強化を許さんとしゃしゃり出てきた。それが現状だな」
簡潔に話してもなおめんどくさい。そんな現状に皆頭を抱えた。
オルドルは富楽とメディナに問う。
「これからどうしますか?メディナ様は民主派。民主派がベントランを支持する方針を進めるのであれば、メディナ様や富楽さんもベントランを存続させる方向性で進めるのでしょうか?」
それを聞いたメディナは「うーん」と少し考え、富楽に聞く。
「富楽さん。もしベントランが領主を続ける事になったらどうなりますか?」
「少なくとも、復権派が進めていた工業地帯化は白紙に戻る事になるだろうな。ほぼ決定事項として進められていた策が中止になるんだ、サルーキ領は領全体が混乱する事になる。しかも、その状態で再度工業地帯化を進めなきゃいかん。いったん白紙にしたのと同じ策を再びな。正直、めんどくさい事にしかならんだろうよ」
メディナは富楽の答えを予想していたのか、やっぱりそうかといった感じ。
「ですよね。領民の生活を考えれば、現在の復権派の策を手伝う方が良い。ここはやっぱり、ベントランを支持する民主派の領主をなんとかして止めるべきでしょうね。何か策はありませんか?富楽さん」
「良いのか?メディナさん。サルーキ領を救うために復権派に協力するだけならまだしも、民主派の邪魔をするとなれば、他の民主派の領との関係が悪化するかもしれんぞ?」
メディナに迷っている様子はない。覚悟を持って答える。
「かまいません。同じ派閥だからと言って、派閥の勢力のためだからと言って領民を無視する様なやりかたは見過ごせません。それに、ここで領民よりも派閥を優先する様なら、それこそ領民から見放されちゃいますよ」
メディナもなかなか言う様になった。
メディナの精神面の成長を喜ばしく思いながらも富楽は話していく。
「いいだろう。民主派のくせに国民の生活よりも派閥の事を優先する輩にお灸をすえようじゃないか。メディナさん、オルドルさん、話し合いの場を設ける前に、情報を集めておきたい。手伝ってくれ」
「はい。富楽さん」
「分かりました」




