第27話 ペンブローク領で話し合い
富楽とヴィヴィエットとオルドルは仕切り直すためにペンブローク領に戻り、今後の方針を練り直すため、メディナの屋敷に帰っていた。
富楽はサルーキ領であった事を一通り話し、それを聞いたメディナは答える。
「話は分かりました。分かったんですけど、なんでここにガルザックさんが居るんですか?」
なぜかガルザックも一緒にペンブローク領に来ていた。
富楽はペンブローク領へ帰り策を練り直す事を決めた後、策を練り直し後日また来る事をガルザックに伝えたのだが、その時にガルザックがついてくる事になったのだ。そもそもガルザックがサルーキ領にいたのも、サルーキ領を立て直す政策の調整と修正のため。修正案を考えるとなれば他人事でもないのだそうだ。
ガルザックは堂々と、そしてひょうひょうと答える。
「フォッフォッフォ、どうせワシらが確認して良し悪しを決めんといかんのじゃ、であれば、策を考える段階でワシが居た方が都合がよかろう」
確かに後でチェックしてもらうくらいなら、策を考える段階で居てくれた方が助かる。頑張って考えた案がダメだったら出直しなんて面倒でしかないからだ。富楽にとっても悪い事ではない。
メディナも「まぁいいですけど」と別に追求するつもりはない様子。気になっただけで特に嫌という訳でもない様だ。
富楽は手始めにガルザックに聞く。
「ガルザックさん。始める前に少し質問させて頂きたい。よろしいか?」
「よかろう」
「復権派はサルーキ領に工業製品を作るための生産拠点を求めている。だからサルーキ領に工業地帯を作るのは欠かせない。そこは合っていますか?」
「うむ。大規模な工業地帯を作るためには、ワシらの領では土地が足らんでな。できるだけコストも抑えたいという事もあって、サルーキ領を工業地帯にする案が決まったんじゃよ」
「もう一つ。貴方達復権派は、サルーキ領が他の領の支援なしで自立できる様になるのなら、その方が良いと考えていますか?それとも自分達の制御下に置きたいとお考えで?」
「サルーキ領が自身でどうにか出来る様になるのであれば、それが一番じゃろう。特にクレステッド領はサルーキ領の隣、サルーキ領が荒れるのは他人事ではないからのう」
そこでオルドルが割り込む様に懇願の言葉を放つ。
「だったら。サルーキ領の事を考えているのなら。サルーキ領を自分達都合の良い様に作り変えるのではなく、サルーキ領に住む人達の事を考えた支援に変えて頂けませんか?ガルザック様」
ガルザックはオルドルの発言に不機嫌そうな反応を見せる。
「のうオルドルよ。確かにワシらは自分達に必要な製品を作らせるためにサルーキ領を工業地帯に変えようとしておる。じゃがな、ワシらは産業を失いどうしようもなくなったサルーキ領に産業を与えようとしておるのだぞ?言わばワシらは助ける側、産業を与えて職に就き生活出来るようにしようとしておるのだ。そんなワシらに助け方まで考えろと言うのかね?本当にサルーキ領を立て直すというのは、領民達のための政策を他所にねだるのではなく、自分達で考える様にする事ではないのかね?」
「う、それは・・・」
ガルザックの説教にオルドルはたじろぐ、ガルザックは立て続けに言う。
「第一、産業が失われたサルーキ領のために必要な物資を作り届けてくれるのは領民達じゃ。今回の支援策を打ち出せたのも、彼らが汗水流して働いてくれているからこそ。そして彼らが今回の支援に納得してくれたのは、サルーキ領が工業地帯に変わる事による恩恵を期待しての事。お主らが真に説得すべきなのはワシら領主ではない。今も頑張って働いてくれている領民達なのじゃ。オルドルよ、お主はそんな領民達に言えるのか?自分達の事ばかり考えず、もっとサルーキ領の事を考えてくれと」
格が違う。オルドルは何も言い返せなかった。
富楽もオルドルを擁護するつもりはない。助けるための援助だからと言って、無条件で見返りを求めず相手を第一に考えた支援を求め、そうでなければ文句を言うのはあまりにも身勝手すぎるというもの。
富楽もオルドルに説教をかます。
「ガルザックさんの言う通りだ。いくら助けるためにやっていますと言っていたとしても、支援する側にも事情はある。見返りを求めているとは言え、助けようとはしているんだ。助けてもらう立場でありながら、あれこれ注文をつけるのは図々し過ぎるだろうよ」
オルドルは俯き答える。
「確かに、そうですね。申し訳ありませんでした、ガルザック様」
「分かればよろしい」
オルドルの謝罪にガルザックはおだやかな表情に変わった。
仕切り直して富楽は話しの続きを再開させる。
「こちらが提案する改善案は、一つは環境を改善させ、サルーキ領の第一次産業や伝統を守れる様にする策。このオルドルさんを見て分かったかと思うが、たとえ助ける気が本気であったとしても、伝統的な産業を蔑ろにしたり、自給できない状態を放置してしまうと、領民達の間でも不満がつのり、将来に禍根を残す事になる。だから、工業地帯化と並行して第一次産業の存続と再生も進めていくというものだ」
富楽の説明にガルザックは頷きながら言う。
「確かにのう。ワシらは水源が鉱毒に汚染されてもう手遅れだと考え、第一次産業を捨てて第二次産業で立て直す方針を進めておった。第一次産業を守る事が出来るのならそれに越したことはない」
続けて富楽は言う。
「もう一つは、労働者に損をさせずに人件費を減らす策。支援内容を工夫する事で、労働者に不満を感じさせる事なく人件費の負担を減らしてみせます」
富楽の言葉にガルザックは少し驚いた様子で言う。
「ほう。そんな事が出来るのか。サルーキ領に工場を建てるのは、人件費が安くコスト削減に繋がるというのも理由じゃったが、それをさらに抑える事ができると。しかも労働者に損をさせないとな。本当に出来るとしたらたいしたものじゃなぁ。では聞こうか、君の策とやらを」
ガルザックは興味津々だ。
「じゃあ教えましょう、ガルザックさん。サルーキ領再生の策を」




