第25話 作戦の練り直し
視察を終え、有力者の理解を得るため話し合いの場に赴いた富楽とヴィヴィエットとオルドルの三人だったが、そこで聞いた話により、富楽は作戦の変更を余儀なくされる事となった。
とある話を聞いた後、富楽は驚きの言葉を漏らす。
「それは、本当なのか?」
この場には、富楽とヴィヴィエットとオルドルの三名、数名のサルーキ領の有力者、そして何故かクレステッド領の領主ガルザック・ダット・クレステッドも居た。
聞き返す富楽に、ガルザックは答える。
「うむ。既にベントランは辞めさせる方向で話しが進められておる。数日もすればそれも公表される事になるじゃろう」
ガルザック曰く、復権派もベントランが統治するサルーキ領の現状を問題視していた様で、水面下でサルーキ領の有力者との交渉を進めていた様だ。そして今回ガルザックがサルーキ領に来ていたのもそれが理由との事。
この場に同席しているのは、富楽に何か伝えたい事があるという理由らしい。
「でもなんで突然そんな事に?」
今度はオルドルが問い、それに一人の有力者が答える。
「突然?ベントランはずっと前から領主失格の烙印を突き付けられていましたよ。このサルーキ領の惨状を見れば分かるでしょう。彼に領主を続けれるだけの能力はない。今まで領主を続けてられていたのも、辞めさせた所で後任が居なかったからに過ぎません。準備が整えばこの様な話になるのは当然ですよ」
富楽は考える。
元は有力者達と話し合い、理解を得る事で領主の説得に繋げるつもりだったが、既に有力者達に見限られていたとは。だとすると話は変わってくる。次なる領主はどんな人物で、どんな政策を進めようとするのか、それを見定めてから方針を見直さなければならない。
今後の事を考えていた富楽に、ガルザックは何かの書類を渡して告げる。
「さて笹霧富楽よ。これはベントランが辞めた後の方針を記したものじゃ。お主にこれをやろう」
富楽はそれを受け取ると軽く目を通す。そこにはベントランが辞めた後の領主は誰なのか、その後どんな政策を進めるのか、どの領の協力で進められるのかといった情報が記されており、富楽が公表されるまで待つしかないと考えていた情報がそこにはあった。
「どうして俺にこれを?何が目的だ?」
復権派とはあの時対立する意思を見せたはず。言ってしまえばガルザックとは敵同士のはずなのだ。しかしガルザックの行動は完全に協力者のそれ。ガルザックの意図が読めない。
富楽もオルドルもヴィヴィエットも驚いている様子だが、他の有力者は驚いている様子はない。という事は富楽に資料を提供するのも、有力者達に既に伝えていたという事か。
「なぁに、ワシらとは違う考えを持った者の意見も聞いておきたいと思ってな。クレステッド領もペンブローク領と同じくサルーキ領の隣、サルーキ領からの不法移住者には困らされておる。こんな問題はさっさと解決させておきたいんじゃよ」
そう言うと、ガルザックは茶目っ気のある笑顔を見せる。
なるほど。復権派だの民主派だの以前に、サルーキ領の現状が自分の領民の負担になっているからどうにかしたいという事か。協力して問題を解決しましょうというのであれば、こちらもやぶさかではない。
一応ガルザックは対立派閥。騙そうとして嘘の情報を渡してきた可能性も無くはないが、この情報は無視できる様なものではない。持ち帰り吟味して判断すべき事だろう。
「ふむ。そちらの目的はあくまでサルーキ領がまともになる事。今後やろうとしている事を教えるから、より良い案があれば教えてくれと、そういう事か?」
富楽の予想は合っていたのか、ガルザックは上機嫌に言う。
「そういうことじゃ。期待しておるぞ、笹霧富楽殿」
当初は有力者の説得をするつもりでここに来たが、ベントランを辞めさせるつもりだというのなら作戦そのものを修正する必要がある。
このまま留まっていても話は進まないので、富楽達は別れを告げて富楽達はその場を後にした。
オルドルの屋敷に戻り、富楽はガルザックから渡された書類に一通り目を通した。そんな富楽にオルドルは質問する。
「どうですか?富楽さん」
「これは少々面倒な事になったな」
書類の内容を見て悩む富楽。オルドルは不安そうに再び尋ねる。
「面倒な事?じゃあ復権派が進めようとしている事になにか問題があったのですか?」
「あぁ。大まかな方針自体は俺と同じで、第二次産業を主力に置いて経済の再生を図るもの。そこは問題ないんだが、第一次産業やインフラを維持する能力を再生させる事を考慮されていない。返済方法が限られている状態で他所に頼る事を想定しているから、このままだと債務の罠にハマって、サルーキ領は復権派の属国の様になるだろう」
属国化。その言葉が出た事でオルドルは狼狽える。
「債務の罠?属国化?それは一体何なんですか?」
「じゃあ教えよう。債務の罠と、それによる属国化についてな」




