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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
供給不足編

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第24話 現場の視察と自己犠牲

 次の日。富楽とヴィヴィエットとオルドルの三人は現場の視察へと向かう。

 最初の目的地は農園。そこはオルドルが所有する土地であり、リルの実とかいう特産品が栽培されているとの事だ。

 農園に到着すると、そこで働く人達はオルドルに恩がある様で、富楽達を歓迎ムードで迎えてくれた。

 農園の現状はなかなかに酷いものだった。まず水源が鉱毒で使えなくなっているため、遠くの井戸から汲んできて使っている。水汲みに追加で人手が必要になるから、非常に効率が悪く、生産性を大幅に低下させてしまっている。経済状況の悪化でろくに儲からなくなっているので、必要な資材や機械の更新のための予算が足りなくなっており、オルドルが私財を投じてなんとか存続している状態だった。

 そこで作られているリルの実とかいうのも、試食させてもらったが、ブドウ味のトマトと言った感じで、旨いには旨いがそれで町おこしできる様な代物でもなく。リルの実狩りという観光客向けのイチゴ狩りの様なイベントも行っているが、それでどうにかなる様な経済状況でもない。


 次に富楽達は縫製工場に行った。そこでも富楽達は歓迎され、やはりオルドルに恩がある様子。

 そしてここも酷い状態だった。元々サルーキ領では綿花的な物が栽培されていて、それを原材料とした服が作られていたのだが、それが栽培されなくなり、他所から材料を買わなければならなくなっている。農園と同様に、景気悪化の煽りを受けて自力での存続が出来なくなっており、オルドルの支援でなんとか続けていられる状態であった。

 元々同じ領内で原材料が生産されていた事ありきの産業だった様で、原材料の生産が終わった事で成り立たなくなってしまったといった所か。


 その後も富楽とヴィヴィエットとオルドルの3人は産業の現場を巡っていった。

 いくつか見て回って分かったが、サルーキ領の産業は基本的に破綻している。自力で継続が不可能な状態に陥っており、オルドルはサルーキ領の伝統や文化を守るために私財を投じて守っている。オルドルの貧しさの原因はここにあったのだ。

 一通り視察が終わった所でオルドルは富楽に質問を投げる。


「いかがでしたか?富楽さん。サルーキ領の産業は」


「うーん。産業はほぼ壊滅状態だな。どこもかしこも自力で続ける事が出来なくなってる。やはりこれは政府が支援して産業を育てる所からやらなきゃならんだろうな」


 感想を言う富楽。それにヴィヴィエットが続く。


「オルドルさんが支援しているから、なんとかやっていけているって感じですよね」


 二人の答えを聞き、確信した様子でオルドルは言う。


「えぇ。だからこそ、権力を持った人が身を削ってでも助けなければ・・・」


「それはダメだ」


 オルドルが言いかけた所で富楽は否定の言葉を放つ。


「ダメ?民が苦しんでいる時は、力の有る者が身を削ってでも助ける。それが権力を持った者の務めでしょう?だから貴族である私は私財を投げ売ってでも助ける事を決めたのです。それなのに。それが間違っていると言うのですか?」


 オルドルの言葉に、富楽は物悲しそうに理由を話していく。


「その考え自体は立派だ。崇高だと言ってもいい。だがね、経済政策ってのはそういうのじゃないんだよ。誰かが犠牲になって成功するものじゃない。確かにカネを持っている人がカネを流し、労働者層の元に利益が届き、働いている人が報われる事も重要なんだが、それと同じくらいカネを出す人が得をする事も重要なんだよ。カネを持っている人はカネを出す事で良い商品を得られ、良い商品を作る事で生産者がカネを得られる。国家はそんな社会を目指さなければならない。オルドルさん。貴方が自分はどうなってもいいと自己犠牲を続けてしまうと、そんな関係は作れなくなってしまうんだ。経済においては、誰かが犠牲になればいいという考えは良くないんだよ。たとえそれが自己犠牲であったとしてもね」


 それを聞き、ヴィヴィエットがウンウンと頷き同意を示す。


「フーさんも良く言ってますもんね。皆が得をする事を追求する。それが経済政策だって」


 富楽もウンウンと頷き、オルドルへの説教を続ける。


「オルドルさんは今の自分自身を見て考えてほしい。こんな身を削って支援するなんてやり方を続けられると思いますか?そして、今のどんどんやつれて貧しくなっていくオルドルさんを見て、産業を守るために貴方の後に続き、現場に自分のカネを流そうと考える人が増えると思いますか?」


 それを聞いたオルドルは自身の痩せた体を見る。そして自分の生活を思い返し、少し悩んだ後、一呼吸おいて言葉を返す。


「たしかに。それもそうですね。今の私を見て、同じ様になりたいなんて人が増えないのは当たり前なのかもしれません」


「本当に産業を救いたいのなら支援の見返りはちゃんと受け取るべきだ。現場がカネが無くて困っているというのなら、カネを渡す代わり、そこで作られた商品やサービスとかを受け取るとか、オルドルさんがやって欲しい仕事をこなしてもらうとかね。産業を支援するオルドルさん自身が豊かになっていく事こそが、労働者を助ければ自分も豊かになるんだという証明になるのだから」


 これまでオルドルは、弱い立場の人達のための事を考える事が上に立つ者の役目だと信じ、それが正しいと考えて活動してきた。自己犠牲が正しい事だと信じてきたからこそ、自分が多少貧しい思いをしても我慢してきた。

 自分がやってきた事が全部間違っていたとまでは思わない。それで多くの労働者が救われた事は事実だ。でもそれが持続不可能である事もまた確かな事。オルドルは富楽の言葉をきっかけに少しやり方を変えてみようと思うのであった。


「分かりました。これからは見返りについても考えてみます」


 一通り現場の視察を終え、オルドルへの説教もした。次はサルーキ領の有力者との話し合いだ。有力者に理解してもらい、産業再生の協力ないし邪魔をしないようにしてもらうとしよう。

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