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第9話 ひとりじゃない

 いつも通りの朝が来た!

 

 だけど今日は、儀式の日。気持ち的にはいつも通りとはいかない。そんな、難しいお年頃なのです。

 

 起こしに来てくれたカトレアはいつもより、かなりテンションが高い。

 

 私が格好良く、魔法を使えるようになって帰って来るのを、今か今かと楽しみにしているのか? もしそうなら、私にまったく魔力がなかった場合、カトレアは私に失望するはずだ。


 そんな彼女の姿を想像し、不安になった。足がソワソワとし、居ても立ってもいられなくなった。

 

「カトレア!」

 

 私はベットから起き上がる。


「どうしましたか?」


 彼女は不思議そうに、首を傾げた。

 

「もしもだけど――もし私に、まったく魔力がなかった場合、カトレアはどう思う?」

「魔力がなかったら――ですか?」


 私が頷くと、カトレアは下唇の下に人差し指を置き、少し唸った。


 早く――早く答えて、早く私を、安心させて欲しい。


 もしかしたら私、カトレアに捨てられたなら――生きていけないのかもしれない。


「魔力があってもなくても、私にとってレナ様はレナ様です。なので、私の中では何も変わりません」

 

 そう言って、口元から指を離した。


「ですけど――魔力がなくて、レナ様が悲しければ私も悲しいですし、魔力があって、レナ様が喜べば私も一緒に喜んでしまいます」


 そう言って、カトレアは花のように笑った。


「ねぇ、カトレア」

「はい、何でしょうか? レナ様」

「ちょっとだけ――抱きしめてもいいかな?」

「えぇ〜!? まだ、早朝ですよ!?」

「やましい気持ちは一切ありませんけども!」



 

 * * *


 


 ダイニングルームに入ると、ラナは姿勢よく席について待っており、その後ろでマーガレットも静かに立っている。


 貴族らしく、20人は座れる長テーブル。


 部屋の奥、中央の席はお母様、右斜め前が私の席、左斜め前がラナの席となっている。

 

「おはよう」

 

 私はラナとマーガレットに挨拶をし、自分の席に座った。

 

「お母様は?」

 

 私が自分の席に着くと、メイド達は私に挨拶をし、食事の準備を始める。

 

「おはよう御座います。お母様なら、もう先に出ましたから」

 

 目を閉じたまま、返事をする。

 

 いつも以上にピリピリとしている。まぁ、気持ちは分かるよ?


 だって私も、内心は気が気じゃないし。だけどね、そんな姿を見せるわけにはいかないのだ。


 そんな私は、本当――姉の鏡だ。

 

「もしかして、緊張しちゃってる? リラックス、リラックス〜」

 

 明るい私を心がけたら、何だか馬鹿っぽい感じになってしまった。


 私の名誉のために言わせてもらうけれど、私は馬鹿じゃない。むしろ、天才だ。

 

「何でそんなに呑気にできるんですか、姉様は!」

 

 広い部屋の中、ラナの声が反響する。

 

 メイド達の動きが止まったのを見て、ラナはすぐに平静を取り戻し、謝罪した。

 

 メイド達は再び動き出したが、何とも言えない空気は留まり続けた。

 

「姉様も、ごめんなさい」

 

 妹は律儀に頭を下げる。

 

「いや、私のほうこそ――ごめん」

 

 ラナが色々気にしていることを、私は知っていたんだから。


「……怖いんです。私と姉様も、もし精霊様に認められなかったらって――そう、考えると……」


 お母様は気にしなくていいって言うけれど、千年の歴史を終わらせた――と後ろ指さされるのは、予想以上にきついと思う。


「でもさ、一人ではないよ?」


 そんな、何の慰めにもならない言葉で、ラナは少しだけ――笑ってくれた。

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