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第4話 メイドが可愛すぎる

 私の願いが届いたのか、部屋の扉が開いた。メイド長は頭を下げた後、扉を閉めた。

 

「レナお嬢様は、領主様に最後までカトレアの面倒を見るとおっしゃいました」

「私はカトレアのことを思って――」

「カトレアはお嬢様のため、色んな努力をしてきました。私はそれをよく知っております。お嬢様はカトレアのことがお嫌いですか?」

 

 私はかなり、ムッとした。

 

「好きだよ。大好きに決まってるじゃん!」

「カトレアは、どうですか?」

「お慕いしております……」

「え?」

 

 私はカトレアの方に視線を戻す。

 

「私は誰よりも、レナ様のこと――お慕い申し上げております」

 

 カトレアは目に涙をたっぷりと溜め込み、顔を真っ赤にしながらも、私を睨みつけるように視線を向けてきた。私は何故か怯んでしまい、後付さりかける。

 

「後はもう、レナお嬢様のご意思のみです」

 

 私の視線はしばらく天井を彷徨った後、カトレアの方に視線を戻し、彼女の肩を掴んだ。

 

「カトレア」

「は、はい!」

「後から、やっぱ妹のほうがよかったって言っても、もう遅いんだからね」

「はい、私はもう――レナ様のものです」

 

 いちいち重いなぁ。推したいしてるとか、意味分かって言ってんのか? いや、カトレアは年齢の割にめちゃくちゃお子様だし、多分よく分かっていないんだろう。


 まったくもって、やれやれだ。


 これだから、天然は困ったものだよ!


 この後、薄い本のように――カトレアがめちゃくちゃいやらしいことを私にされたとしても、絶対に私は悪くないね!


 まぁ、そんなことは絶対にしませんけど!

 

 確かに――前世の私は極度の百合好きだった。しかし、自分ではなく、自分以外の女の子が百合百合しているのを見るのが好きなだけだ。


 それは、今だって変わらない。


 ……まぁ、エッチなことにはそれなりに興味はあるけども、私はノーマルのはず――多分だけど!

 

 カトレアは私のぺったんこの胸に顔を埋めた。

 

 おいおい、止めてくれ。ドキドキしちまうじゃないかぁ。

 

 私は救いの目をメイド長に向ける。

 

「カトレア、お嬢様は安静にしなければなりません。そろそろ行きますよ」

「す、すみません、レナ様」

 

 カトレアは慌てたように体を離す。そして、しばらくじっと見つめてくるもんだから、正直気まずい。だが――視線を反らすと、負けた気がする!

 

「私、怖かったんです」

「え?」

「サラ様が大丈夫って言っても、レナ様は全然お目覚めにならなくて、もうお話出来なくなるって思ったら、私――」

「カトレア……」

「そして、レナ様が目覚めて、レナ様の声が聞けて、ホッとしたんです」

「泣き崩れたもんね」

「も、もう、それは忘れてください!」

 

 いつものように、顔を真っ赤にして怒る。本当、可愛い奴め。あぁ、もう――その可愛らしく膨らんだ頬を今すぐにつんつんしたい。いつものようにつんつんしたい〜。

 

「でも――」

 

 カトレアは声のトーンを落とし、自嘲気味に笑う。

 

「レナ様が目覚めて、レナ様の声を聞いたら、別のことが怖くなりました。レナ様は私に失望したんじゃないかって……何もできなかった私を――階段から落ちる原因を作った私を」

「それは――」

「分かってます、今ならちゃんと分かってます。レナ様はそんなことで、私を決して軽蔑したりなんてしない」

「うん、そうだよ。私は決してカトレアを軽蔑なんてしないし、嫌いになったりもしない。それは絶対に、それは永遠にそうだから」

「そうですよね、私――自分のことしか考えていませんでした。レナ様、ありがとうございます。あなたはいつだって、私を救ってくれます」

 

 カトレアは満面の笑みを浮かべる。

 

「それではレナ様、私は一旦、部屋をでます。何かありましたら、すぐにお声掛けください」

 

 カトレアとメイド長が部屋から出ていった。かと思ったけれど、カトレアは再び顔だけ覗かせた。身体は扉で隠したまま。

 

「レナ様」

「何? どうかした?」

「レナ様は――サラ様みたいなのが、タイプなんですか?」

「え、何で?」

「だって……エッチな顔、してました」

 

 まじか!? そんなつもりはまったくないし、あんな卑わいな女、こっちから願い下げだから!

 

「わ、私、その――頑張りますから!」

 

 カトレアは謎の宣言をすると、勢いよくトビラを閉めた。

 

 な、何なんだ? 一体……。

 

 私はしばらくぼーっとした後、ベットの上に倒れ込んだ。なんか、疲れた。

 

 長い時間、気を失っていたはずなのに、急に眠気に襲われ、私は眠りにつくこととなった。

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