表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです  作者: tataku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/42

第39話 あなたの笑顔を見て、私は嬉しい気持ちとなる

 足音。


 メリエーヌ様と、女王様がこちらへと歩いてくる。


 だから、私はお母様の頬から手を離した。


 メリエーヌ様は私の前で足を止めると、顔をじっと眺めてくる。


「頑張ったわね、レナ」


 その言葉と共に、私の意識は遠のいた。




 * * *




 暗い。


 だけど、光を感じた。


 意識が、ゆっくりと浮上していく。


 重たい瞼を少しだけ開くと、ベッドの天蓋が見えた。


 ぼんやりとした頭。


 何をしてたんだっけ?


 上手く記憶を引っ張ってこれない。


 何だか、物凄くふわふわとしている。


 それは、異常なぐらい肌触りのいい布団のせいだろうか?



 ふと、気配がした。



 何だか、視線を感じたため首を左に回す。



 すると、人。


 人がいた。



 私は布団を跳ね除け――慌てて上体を起こす。


「な、何なの、一体!?」


 私は絶えられずに、叫んでしまう。


 だって、六人もの人間が私の顔を覗き込んでいるから。


 特級貴族であるセリアルとデルタは、少し離れた場所で私を見下ろしており、その前にマーガレットの姿がある。


 そして、ベッドの端にしがみつき私の顔を眺める三人の姿。


「レナ様〜、大丈夫ですかぁ?」


 カトレアは、今にも泣き出しそうだ。


「カトレア、姉様なら大丈夫に決まってます!」


 とか言いかながら、妹も不安そうな顔をしている。


 何だろ……もしかして私、愛されてる?

 


 私は部屋を見渡す。

 

 カーテンは閉められ、魔法の光が部屋の中を照らしている。


 ここ――もしかして、姫様の部屋?


 こんな武器庫みたいな変な部屋、姫様以外にありえない。


 ――と言う事はこの布団、もしかしてアリシア様の?


 ……。


「レナ様、顔が赤くなっておりますよ?」


 え、まじ?


「レナ様!」

「姉様、風邪引いたんですか!」


 カトレアと妹は、悲鳴のような声。


 なんでこの二人、こんなにも反応が大げさなんだろ?


「失礼いたしますね」


 そう言って、アリシア様はベッドの上に膝を乗せ、私へと近付く。


 そして、私の両頬に――姫様の冷たい両手が絡みつく。


「少し――熱い、かもしれませんね」


 アリシア様が、少しだけ首を傾ける。


 姫様の可愛らしい仕草と、予想外の行動に――私の心臓が高鳴って落ち着かない。


「だ、大丈夫ですから」


 だから、早く離れて欲しい。そうしてくれないと、やばいことになりそうだ。


「身体に、なんの異変も感じませんか?」

「何も、問題ありません!」

「そう、ですか――それなら、よかったです」


 アリシア様の――ほっとした顔が、あまりにも美しすぎて、頭がおかしくなりそうだ。それなのに、彼女は私から離れようとしない。


 姫様は私を見つめる。


 そして私は、目を逸らせそうにない。


「姉様――何を、見つめ合っているのですか?」


 妹はむすっとした。


「す、すみません」


 と、アリシア様は謝罪し、すぐに私から離れてしまう。


「い、いえ、アリシア様は何も悪くありません。悪いのは、姉様だけですから」

「はい? なんで私だけ?」

「それよりも、姉様――」

「ちょ、無視するんかい」


 ラナが、鼻で笑う。


「アリシア様が離れて――何だか、残念そうですね」

「う、うるさい」


 妹を、軽く睨みつける。


 すると、ラナは"べー"と舌を出した。


 くっ!


「可愛いではないか、こんちくしょう」

「な、なにを、馬鹿なことを言っているんですか、姉様は!」


 妹は顔を真っ赤にして、怒り出す。


「この、シスコン」


 その言葉に、私とラナはほぼ同時にセリアルへと顔を向けた。


「どっちも反応するとか――あぁ、やだやだ。やっぱりどっちもシスコンか」


 セリアルは大げさに肩を竦めてくる。


「シスコンで何が悪い」


 と、私は正当なる抗議を行った。


 なのに、妹はいい顔をしない。


「セリアルちゃん、もう諦めたら?」

「何でよ」

「運命の相手はね、身近にいるものだと思うの」

「一体なにが言いたいのよ、あんたは」


 その言葉に、デルタは笑みを浮かべたまま、ため息を吐く。


「何よ、喧嘩でも売ってるわけ?」

「まさか、そんなことはありえないよ。私はセリアルちゃんとのより良い未来を常に考えているもの」

「あんたは時々、本当わけ分かんないこと言うわね」

「セリアルちゃんは私に会うたび、ラナちゃんのこと——鈍感鈍感言うけども、人のこと言えないなぁーと思うの、私」

「そんな陰口みたいなこと、言ってたんですか?」


 ラナは不満そうに呟く。


「い、言ってないから!」


 セリアルは焦った感じ。


 確かに、デルタの気持ちに気づかないセリアルは鈍感だと思いますねぇ。


「ちょ、レナ! あんた何、ニヤニヤしてんのよ。気持ち悪いわねぇ!」


 え? そんな、ひどい。


「セリアルちゃん、レナちゃんに当たるとか駄目だと思うの」

「そうですよ、セリアル。姉様に当たらないでください」

「ぐぬぬぅ、レナぁぁ」


 セリアルは、憎々しげにこちらを見てくる。


 いやいや、私は何も悪くないと思いますけど?


「マーガレットも黙っていないで、何か言ったらどうなの!?」

「何か――とは、なんでしょうか?」

「このシスコンぶりを見て、あんたは何とも思わないわけ?」

「セリアル様、私はおふたりが小さい頃から常に側におりますの」

「だったら何よ」

「――であるならば、この程度のシスコンぶりで心動かされては、ラナ様のメイドなど全く以って務まりませんわ」


 と、何故かどや顔。


 セリアルはぐぬぬと悔しげな顔。


「マーガレット!」


 と、ラナに叱られ、彼女のメイドはすぐに落ち込んだ。

 


 そんな私たちを見て、アリシア様はくすくすと笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ