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百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです  作者: tataku


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第36話 私はあなたの期待に応えたい

「別に――ひざまずく必要性などないと、何度も言っているのだけどね」


 と、メリエーヌ様は"ぽつり"と呟かれた。


「それはもう諦めてくだされ。あなたは――我々が信仰する女神様にもっとも近しき存在。そんなあなたへの敬意が、我々をへりくだらせるのです」


 メリナさんは、頭を下げたまま発言した。

 

「なんの遠慮もなく私の後をついて回ったあなたが、そんなことを言うのね」

「それはもう――大昔の話ですぞ、メリエーヌ様」

「あなたにとっては、そうかもね。だけど私にとっては、つい最近のことよ」

「それはそれは、恥ずかしきことですのぉ」

「そうね、あなたは恥ずかしい子だわ」

「その言い方、少しおかしくないですかのぉ」

「ただの事実よ、メリナ」


 そう言ってメリエーヌ様は、杖を取り出し、軽く床に叩きつけた。


「皆、顔を上げ――立ち上がりなさい」


 その言葉は"ぼそり"と口にされたが、耳ではなく脳? に直接響いた。もしかしたなら、言葉に魔力が込められていたのかもしれない。


 全員が、一斉に顔を上げ、勢いよく立ち上がる。


「昨日、レナは私の弟子となったわ」


 その言葉で、にわかにざわつきだす。


「私が彼女を育て、精霊が承認したとき、ひとつの家が再興され、特級貴族の椅子がひとつだけ増える」


 メリエーヌ様が再び話始めると、すぐに静まり返った。


「それを、世界も祝福する」


 そう言って、メリエーヌ様はメリナさんの方へ視線を向けた。

 

「レナとラウラ、そしてアリア以外は全員、この場所から距離を離して貰える?」

「そんなの、お安い御用ですぞぉ」


 そう言って、メリナさんは素早く動き回った。すると、左右にいる貴婦人の方々が後ろへと下がっていく。


 アリシア様やラナ達、そして特級貴族の現当主まで移動を始めた。


 後に残ったのは、私とメリエーヌ様。


 そして、女王様と――お母様がこちらへと近づき、足を止める。


「アリア、結界を張ってくれるかしら?」

「仰せのままに」


 女王様は右手を胸元まで上げると、印が光り、小さな透明の箱が形成された。


 おお、と感心したとき――その箱は四方八方へと急速に拡大した。それは私の身体をすり抜け、長さ10m幅3m以上のメイン通路を覆い尽くす。


「さあ、ここで思い存分――語り合うといいわ。ちゃんと、防音の効果もあるみたいだし」

「ちょ、ちょっと待ってください。今、この場でする意味があるんですか!?」


 正直、私は焦っている。


 結界が透明でないならともかく――こんな、人の目にさらされた状態で、一体なにをしろというのか。


「逃げ場はない方がいいわ。それはお互いに」


 と、メリエーヌ様は言った。


「申し訳ありませんが――私には、メリエーヌ様の意図が理解できておりません」


 と、お母様。


「レナは今から、あなたを認めさせるわ。皆の見ている前で」

「それは一体、何をでしょうか?」

「力よ」

「力?」

「そう、力。あなたの不安を取り除くだけの力と思いを、今からレナはあなたに見せつけるわ」


 おいおい、まじですか?


 お母様が私の方に視線を向けたため、表情を引き締めた。


 どういうことなの?


 といった顔。


 うん、そのような顔になる気持ち――よく分かるよ。


 だけどね、正直な話――私にもよく分かっていません!


「レナ」


 メリエーヌ様が私を見つめる。


 そんな綺麗な顔で見つめられると、なんだかドキドキしてしまいますね!


「今からあなたの中に眠る力を使わせてもらう」

「え?」


 それは――どういう、意味ですかね?


「今から、5年後のあなたを引っ張り出すわ。それで、ラウラを分からせればいい」

「それって――」

「つまり、5年後のあなたに全てを丸投げするってことよ」


 それはまた――なかなかに卑怯な話?


「あなたはこれから負債を抱えることになる。それも、とびっきりのね」


 その言葉に、私は唾をゴクリと、呑み込んだ。


「どうする? 止めるのなら、今のうちよ」


 止める?


 こんな、大勢の前で?


「誰も、今から何をするか分かっていない。だから、このまま終わったとしても大した問題ではない」


 大した、問題ではない?


「そう――これは、あなたとラウラの問題よ」


 そう――確かに、その通りだ。


「やりますよ――やってやりますよ!」


 私は、握り拳を作る。


 アリシア様と、同じように。


「本当に、いいのね? 先程も言ったように、あなたはこれから負債を抱えることになる。それも、未来の自分に」

「大丈夫です」


 多分――だけど。

 

「それは、何故?」

「だって、私――」


 無理やり、笑顔を作る。


「メリエーヌ様の弟子ですから」


 と、私は言った。


 メリエーヌ様も皆の前で、わざわざ言ってくれた。


 私がメリエーヌ様の弟子だということを。


 実はそれ、めちゃくちゃ嬉しかった。


 ずっと、目立たずに生きたいと思っていた。


 だけどそれは、自信がなかっただけ。


 どーせ、誰も私のことを認めてくれる訳がない。


 だから、ずっと逃げていただけ。


 だけど、メリエーヌ様は私を弟子にしてくれた。


 私を――認めてくれた。


 それが、凄く嬉しかった。


 嬉しかったんだ。


 アリシア様だって、私に期待してくれている。


 それならば――ガッカリさせるわけにはいかないでしょ?


「やはり、馬鹿な子ね」


 と、メリエーヌ様は溜息を吐いた。


「いいわ、あなたの覚悟を私は認める」


 ははははは。


 と、私は心の中で笑う。


「足の震えは、減点だけどね」


 あらら。


「でも私は、そのような人間の方が好きよ」


 わぉ。


 なんだか、顔が熱くなってしまうじゃないですか!

 

「レナ、右手を私の前に」

「え? あ、はい」


 印が見える手の甲を胸の高さまで上げた。


「その印により、時の大精霊とあなたは繋がっている」


 メリエーヌ様は私の目を見ながら、話す。


「それに釣られるよう、あなたの周りには小さな精霊が集まっているわ」


 おぉ、そうなんだ。


 是非とも、見てみたい。


 きっと、精霊は美少女に違いない。そんな彼女たちに、私は囲まれている訳だ。


「いずれ、あなたにも見えるようになるかもね」


 え? まじですか。


 つまり、大精霊様と精霊様の百合百合な姿を見られると言うこと?


「レナ、始めるわ」


 メリエーヌ様の杖の先端が私の精霊印と触れる。


 その瞬間、光が溢れ出し、その光は――大きな魔法陣を宙に浮かび上がらせた。


 そして、何かと繋がったのを――私は、理解した。

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