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百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです  作者: tataku


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第35話 彼女は美しい

 セリアルは"こほん"と、再び咳払いをした。


「とにかく、これでようやく私のこと――意識してくれた?」


 妹は、返事を返さない。


「ラナ?」


 セリアルは、背けていた顔をラナの方へと傾ける。


「そんなこと、急に言われても――よく分かりません」

「ラナは私が考えていたよりも、ずっとずっと――子供のままなのね」

「そんなことは、ありません。私はもう、れっきとした大人ですから」

「そうなの?」

「それより――勘違いされても嫌なんで言いますけど、私――シスコンじゃないですから」


 と、何故か私を睨みつけながら、ラナは呟いた。


 そんなはっきりと二度も否定されると、なんだかショックなんですけど!


「……ふーん、告白したばかりの私より、姉の方を意識するんだ、ラナは」


 そう言って、何故かセリアルまで私を睨みつけてきた。


「べ、別に――姉様のことなんて、まったく気にしてませんから」


 恥ずかしげに頬を染める。


 あー、なんて可愛らしい表情!

 

「……まぁ、告白しただけで勝てるなんて、別に思ってなかったけど」


 と、セリアルは鼻を鳴らした。

 

「――思ってなかったけど、何だか悔しいわね」

「私の話、ちゃんと聞いてましたか?」

「聞いてたわよ。ちゃんと聞いた上での発言ね」


 その言葉に、妹はむすっとした。


「レナだけでなく、ラナもしばらくこのお城の方で過ごすんでしょ?」

「え? はい、そうですけど」

「それなら――私もそうしようかしら」

「え!?」


 皆が、一斉に声を上げた。(カトレアひとりだけ、ポカンとした顔)


「うん、決めた。お母様の方から陛下にお願いして貰うわ。私もここでご厄介になれるようにね」

「せ、セリアルちゃん、それは流石に――」


 先程までずっと黙っていたデルタは口を開くと、前のめりとなる。


「ちゃん付けは止めてって、前から言ってるでしょ」

「……ふたりっきりのときは、別に何も言わないくせに」


 と、デルタは"ぼそり"と口にした。


「そ、そんなことないわよ。何言ってんのよ、あんたは」

「セリアル様!」


 と、今度はマーガレットが口を挟む。


「なに?」


 と、面倒くさそうに言葉を吐く。


「これは忠告ですわ。そんな風に無理やり押しかけたなら、絶対に嫌われてしまいますから」


 その言葉に、セリアルは鼻で笑う。


「マーガレット、あんたがそれを言うの? あぁ、なるほど――経験者は語るってやつか」

「ど、どういう意味ですの?」

「メイドになってまで無理やり押しかけたあんたは、ラナに嫌われてたってことね」

「なっ――そんなこと、あるわけ――」

「ないっていいきれるの?」

「当然ですわ。そんなことで人を嫌うようなお嬢様ではありませんもの!」

「じゃあ、いいじゃない」

「え?」

「そんなことで、人を嫌うような子じゃないものね、ラナは」

「うっ……」


 マーガレットは顔を引き攣らせ、勢いがなくなる。

 

「セリアル、うちのメイドを虐めないでください」

「お、お嬢様ぁ」


 妹の言葉に、マーガレットは感動した面持ち。

 

「べ、別に、いじめてなんかないわよ」

「本当ですか?」

「本当よ。それよりも、覚悟しておきなさい。毎日、あんたに愛を囁いてやるんだから」

「ま、まだそのノリ――続ける気ですか?」

「当然よ、絶対に落としてやるんだから」

「わ、分かりましたから。どうか、落ち着いてください」


 ずいっと近づくセリアルを、ラナは困った顔で押しどける。



 突然――空気が変わった。



 入口の扉が開かれ、誰もがその方向へと身体を向ける。


 人が、大広間へと入って来た。


 それは、メリエーヌ様。


 彼女は――アリシア様と、メリナさんを引き連れて、歩いてきた。


 騒がしかった声は、いつのまにか聞こえない。


 音楽隊が奏でる楽器の音も、いつのまにか鳴りを潜めている。


 今、この場は完全に支配されていた。


 メリエーヌ様によって。


 だけど、昨日のような圧迫感はない。


 それは、ラナやカトレアの姿から見ても明らかだ。


 大量の魔力を抑える――例の魔道具を使用しているのだろう。


 だから、この場を圧倒しているのは魔力ではなく――彼女本来が持つ、圧倒的なオーラ。


 彼女は美しい。


 彼女はあまりにも、美しすぎた。


 昨日のラフな格好ではなく、ちゃんとした衣装を着た彼女はまさに鬼に金棒。


 白と金を基調としたローブスタイル。


 眺めの丈がゆらゆらと揺れる優雅なシルエット。


 これまた白を基調とし、金色の刺繍が施されたショートブーツ。


 あぁ、あまりにも神々しい!


 そんな彼女がこちらへと近付いてくる。


 そして、私たちの前で足を止めた。


 あ、やべ。


 私たち、メイン通路である赤いカーペットの上に立ったまま。


 つまり、私たちは通せんぼ中。


 ラナも――セリアルですら、その事実に気づかないまま、放心したかのように突っ立っている。


 流石にこのままでは不味いと思った私は、皆に声をかけようとした。


 だけど――。


「レナ、そのままでかまわないわ」


 と、メリエーヌ様は口にした。


 その瞬間、周りにいる貴婦人の方々が一斉に膝をつき頭を下げた。それは、女王様や――お母様、アリシア様や、メリナさんまで。


 デルタとセリアルはすぐにメイン通路から離れ、ひざまずいたが、ラナたちは遅れての対応。


 私なんか、どうしたものかと立ち尽くしたまま。


 だって、そのままで構わない――と言われてしまいましたからね!

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