表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです  作者: tataku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/42

第27話 メリエーヌ様

 普段のメリエーヌ様は、お城での生活よりも外へ出て、各地を渡り歩くことの方が多いらしい。


 だから、こうやってメリエーヌ様に会える私は、運がいい。


 王都へ滞在するときはお城の別棟にて生活をしているらしく、私たちはそこへ目指して歩いている。


 その別棟とお城は長い渡り廊下により繋がっていた。


 その廊下を歩きながら、美しい庭園を眺める。ここはメリエーヌ様ただお一人のための場所とのこと。


 何とも贅沢なことだ。




 別棟は、長い塔だった。


 入り口の扉には複雑な模様。近づくと、それは自動的に開いた。


 中は、大図書館。


 タイルの床上に本棚がびっしりと敷き詰められており、高さは5m以上。まるで敵の侵入を防ぐための壁だ。


 少し中に入ると扉は再び、自動的に閉まる。


 アリシア様が足を止めた。


 私は辺りを見回し、上を見上げる。


 高い、凄く高い天井。


 螺旋階段は天を目指す。


 メリエーヌ様のお部屋は、ここから見える天井の上なのかもしれない。


 今、確認できた人の姿は婆やさんのみ。彼女は本棚と本棚の隙間から顔を覗かせたあと、こちらに向かってきた。


「皆様、メリエーヌ様はこちらですぞ」


 そう言って、手招きをしてくる。


 私たちは婆やさんの後を追いかけた。


 並んだ本棚のすき間により道が作られている。しかしそれは、まるで迷路のようだ。単純な一本道とはなっていない。そのため、部屋の全体像が掴めない。だって、本棚で視界が遮られているから。


「何でこんなに、道が複雑なんです?」


 私は、素朴な疑問を投げかけた。なんか、本棚のすき間めちゃくちゃ狭いし。


「それはもう、メリエーヌ様の好み――としか言えませんなぁ」


 と言われれば、なるほど、と頷くほかにない。




 本棚を抜けた先は、少しだけ広けた空間。


 そこで婆やさんも、アリシア様も足を止めた。


 ふかふかの白い絨毯。そしてこれ又、ふかふかしていそうな一人用のソファが、丁度真ん中に鎮座している。


 そこに、人がいた。


 大きな本を広げ、優雅に寝そべっている。


 美しいと思った。


 美しすぎると――そう、思う。


 そのだらけた姿を見ても、神々しい――と思わせる何かを、彼女は持ち合わせていた。


 その姿を見て、私は感動している?


 金色の髪に金色の瞳。


 アリシア様よりも、女王様よりも、誰よりも濃く輝く金の色。


 そして、驚くぐらい白い肌。


 絶世の美女ではなく、絶世の美少女。


 身長も、私と同じぐらいに感じられるし、年齢も同じぐらいに感じられる。


 顔のパーツが全て完璧であり、動きがなければひとつの完成された芸術品。とても、生きた人間とは思えない。


 細く流れるようなしなやかな髪はかなり長く、おそらく膝下ぐらいまでは伸びている。そんな髪から覗く尖った耳は、私が思い描くエルフそのものだ。

 

 シンプルなノースリーブの白いワンピースに、白いサンダル姿。そんなラフな格好に違和感を感じながらも、それ以外ありえないと思う矛盾。

 

 彼女を見ていると――身体に違和感を覚え、何だかソワソワとしてきた。

 

「メリエーヌ様、お客様ですぞ」

「そんなの、分かってるわ」


 メリエーヌ様? は、本から視線を逸らすことなく、言葉を紡いだ。


 美しい声が、脳を震わせる。


「でも、少し待って。今、いいとこなの」


 妹の身体がふらついた。


 私が動こうとしたときには既に、アリシア様が妹の身体を受け止めてくれていた。


「す、すみません」


 と、ラナは謝った。


「気にしないでください。今のメリエーヌ様にお会いした人は必ずこうなりますから」


 アリシア様のその言葉に、私の口から疑問がこぼれ落ちた。


「それって、どう言うことなんですか?」

「あの方の魔力は膨大であり、それは常に外部へと漏れ出しています。慣れない内は、あの人の魔力にあてられ、脳がやられます」

「え? それ、やばいじゃん」


 私の開いた口が、塞がらなくなりそうだ。

 

「大丈夫です、害はありませんから。お二人なら、直ぐに耐性ができるかと思いますよ?」


 と、アリシア様は言った。


 ラナはゆっくりと、アリシア様から身体を離した。が、まだ少し足元がおぼつかない。


 手で頭を押さえ、身体がまだふらふらと揺れている。


「だ、大丈夫ですか?」


 アリシア様の両手が、不安そうに宙で揺れている。


「大丈夫です」


 と、妹は手で制止しながら答えた。


 私もアリシア様と一緒で不安なため、ラナの方に気持ち身体を近づけた。妹は勘が鋭いため、近づき過ぎると私の意図に気づいてしまうだろう。気づかれたなら、絶対に不機嫌となる。間違いなく。


「それにしても、レナ様は何も問題がなさそうですね」


 アリシア様の感心したような声。


 つい、ニヤけかけたが――妹からの視線に気づき、シャキっとした。


「そんなことないですって。だって私、脳がグワングワンと揺れている感じありますもん」

「大したものだと思います。何せレナ様は、しっかりと自分の力で立ち、自分のことだけでなく――ラナ様がいつ倒れても大丈夫なように、目を走らせているのですから」

「……姉様?」


 妹が、ジロリと、私を睨みつけた。


「ち、違うからね!」


 と、私は必死に否定した。


 アリシア様は首を傾げられる。


「何故、否定をするのですか?」


 それは今の妹が、ツンツンデレ、だからですね!


 普段は、ツンデレデレ、なのにぃ。


「そ、それにしても、このような状態で外とか出ても問題ないんですかね?」


 確か、旅に出るとか言ってたけど――これでは、軽いテロ行為では?


「この塔の外へでるときは、ちゃんと魔法道具を装備し、魔力が漏れないようにはしているので問題ありません」


 なるほど、それなら大丈夫かもしれない。


 だけど、あのような美少女が旅に出ている姿――とても想像できませんね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ