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百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです  作者: tataku


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第21話 この百合は喜べない

「もしよろしかったら、ラナ様もどうですか?」


 そう言って、アリシア様は妹に向かって手を差し伸べる。


 ラナは少し悩んだ顔をした後、おずおずと姫様の手を取り、街の外へと足を一歩踏み出した。


 アリシア様はラナの様子を伺い、一度だけ頷かれると、ゆっくりと妹から手を離される。


 ラナは自分の足元をしばらく見つめた後、辺りを見回した。


 緊張しているのは、傍から見ても明らかだ。


「大丈夫?」


 私は、彼女に声をかけた。


「何を言ってるんですか?」


 と、妹は言った。


「大丈夫だって――姉様は言ってくれたじゃないですか」


 そう言って、妹は腰に手をやった。


「もしかして、それは違った――とでも言うつもりですか?」


 やれやれ、といった感じの顔。


 その姿に、私は苦笑してしまう。


「そんなことないよ」


 と、私は言った。


 妹のその態度は、きっと――彼女なりの精一杯の強がり。


 だけど、きっと大丈夫。


 だって――。


「ラナの隣には私がいるし、なによりアリシア様だっていてくれるんだから」

「そうですよ、是非ともこのわたくしを頼ってください」


 そう言って、アリシア様は自信満々に自分の胸を叩いて見せる。


 私はラナと顔を見合わせると、自然と笑みがこぼれてしまうのだった。




 * * *



 

 私とラナは、アリシア様に街の案内をお願いした。

 

「分かりました。しかし、まずは少しずつです。無理はしたら駄目ですよ?」


 と、アリシア様は人差し指だけをぴんと空に向け、言い聞かせるように言葉を紡いだ。


 その姿を可愛いと思ったけれど、なんだか子供扱いされているみたいで、あんまり面白くない。


 そこで、ふと疑問に思った。


「そう言えば、アリシア様って年いくつなんです?」

「年齢ですか?」

「はい」


 私は頷く。


 初めて会ったときは、ものすごく大人! って感じがしたけれど、今はそうでもない。大人っぽく感じるのと同じぐらい、子供っぽくも感じる。見た目はまぁ――大人の女性って感じだけど。


「少し前に、21となりました」


 おぉ、前世の私より年上だ。


 しかし、前世の記憶を引き継いだ私よりは経験年数が少ないですなぁ!


 計算上、私の最大の精神年齢は16+15となる。


 ふふふふふ。


 つまり――私のほうが、お姉様なのさ!


 とはいえ、そんなことを言えるはずもない。


 そもそも、私の1年は姫様の1年と比べてあまりにも薄っぺらすぎる。だから、精神年齢に大きな差がでていてもおかしくない話だ。


 となれば、アリシア様の目には私なんて、ただのガキンチョにしか見えないんだろうなぁー。


 そう考えると、あんまり面白くない〜。


「ち、因みにですが、レナ様にとって、6歳も上の女はありえないですか?」


 そう言って、姫様は何故か指をもじもじとさせた。


 どういう意味だ?


「別に、そんなことはないですけど?」


 あまり意味は分からなかったけど、6歳年が離れてるぐらいでありえない――ってほうが、ありえない話だ。

 

「そ、そうですか」


 アリシア様は恥ずかしそうに――でも、嬉しそうに笑ってくれた。


「と、とりあえず――そこの屋台で食べ物でも買って、噴水前のベンチで、軽食でもいかがですか?」


 と、素晴らしい提案をしてくれる。


「いいですねー、それ」


 私は指を、ぱちんと鳴らした。


「はしたないですよ、姉様」


 え? なんで?


 何か、急に不機嫌になった?


 さっきまでは、そうでもなかったはずなのに。


 なんでだ?


 私は、首を傾げたい気分だ。


 


 * * *



 

 アリシア様が買ってくれた食べ物を持って、ベンチに座った。


 右側には姫様が、左側には妹がいる。ベンチは正直せまい。そのため、美少女たちの感触が両腕にじんわりと広がっていく。


 これはまさに、百合に挟まる女!


「さぁ、是非召し上がってください。私のお気に入りですから」


 アリシア様は、むふーっと、鼻息荒くしている。


 きっと、自信があるのだろう。


 食べて貰いたくて仕方がない――と言った感じだ。


 アリシア様の視線に見守られながら? 私は口を開いた。


 少し硬めのパン。そして香ばしいお肉に甘辛いタレ。これは――中々に美味だ。


「どうですか? どうですか?」


 近い。


 姫様のお顔、かなり近い!


「お、美味しい、ですね」


 私の言葉に、アリシア様はものすんごく嬉しそうな顔をしてくれた。


 たとえ美味しくなくても、美味しくない――なんて、誰も言えないと思う。こんな美女から、こんな期待に満ちた目を向けられてはね!


「ら、ラナ様は、どうですか?」

「凄く美味しいです、アリシア様」


 と、妹は笑顔で肯定した。


「そうですか? うふふ、本当によかったです」


 アリシア様は嬉しそうに笑われると、ラナとしばらく笑顔で見つめ合った。


 うん、百合だな。


 と、私は思った。


 しかし、素直に喜べない。


 何故だ?


 しばらく考えたけれど、その理由が検討もつかなかい。


「ずっと夢だったんです。このベンチで、お友達と一緒にこのパンを食べることが」


 と、アリシア様は口にした。


「あ、すみません。なんか――変なこと、口走ってしまいましたね」


 そう言って、照れくさそうにちょこっとだけ舌を出して笑った。


 か、可愛い!


 なのに、美人で美しくもある。


 ここまで可愛いと美がうまく融合している人間を、私は知りませんよ!

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