表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです  作者: tataku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/42

第17話 前進

 女王様と姫様、お婆さんと私たちブロード家以外の人間が玉座の間から出て行った。


 扉が閉まると、婆やさんが口を開く。

 

「後でそれとなくフォローはしときませんとな。面倒事は勘弁ですぞ?」

「ふん、そんなものは必要ない。先程、娘が頭を下げた。それ以上の何が必要だ?」


 お婆さんはため息を吐くと、それ以上は何も言わなかった。


 女王様は再び椅子に座ると、あぐらを掻く。


「皆、適当にくつろいでくれ」


 お母様が立ち上がったため、私と妹もそのようにした。


「ラウラ、こちらへ近寄り、その綺麗な顔をこの私に見せてくれ」


 お母様はため息を吐いた後、言われるがまま、女王様の側に寄った。


「やはり、お前は相変わらず美しい。どうだ? 今夜――私と子供を作らないか?」

「娘達の前で止めてください」

「ほぅ、娘達がいなければ良いのか?」

「もう2度とここには来ませんよ?」

「冗談だ、冗談」


 百合だな。


 と、私は思った。


 ん?


 婆やさんが、私の方へと近寄って来る。


「レナ様。精霊様に会ったというお話、シスターサラからは聞いておるのじゃが、もっと詳しく儂に教えてくれぬか?」


 シスターサラから、あまり余計なことは言わないほうがいい――と言われていたため、説明できるほど覚えていないと、そう伝えた。


「覚えていないと?」


 そんな馬鹿な! という顔をされる。

 

「夢とかもそうじゃないですか。覚めた瞬間は覚えていても、徐々に記憶が薄れていくものです」


 私が真っ赤な嘘をつくと、婆やさんは勝手に納得し、ブツブツと独り言を言い始めた。


「ただ、メリエーヌ様に会えと伝えられたことだけはしっかりと覚えています」


 その言葉に、女王様が反応した。

 

「ああ――シスターサラからは、そのように伝え聞いておる。そのサラの話をメリエーヌ様が聞いて、大変そなたに興味を持った。普段は、何事にも関心を示さないと言うのに……」


 なんだ?


 女王様は明らかに困ったような顔をされる。


「何か……問題でもあるんですか?」

「いや、まぁ――そういうわけではないが、あの御方は中々――我々とは、違う時間軸で生きているものでな。だから何――というわけでもないのだが……」


 何だか、歯切れが悪い。


「陛下は、メリエーヌ様が苦手なのじゃよ」

「婆や」


 女王様が不機嫌そうな顔をしたため、ヒヤッとした。しかし、婆やさんはヘラヘラと笑っている。


「これはこれは、失礼した」


 女王様は、ふんっ、と鼻を鳴らす。


 何だ?


 もしかして、拗ねたのか?


 お母様より年上だが、不覚にも可愛いと思ってしまった。


「あの御方と、気楽に話せる者など婆やくらいなものだよ」


 と、女王様は言った。


「あのー」

「何だ? ラウラの娘、レナよ」

「メリエーヌ様って、怖い方なんですか?」

「別にそういうわけではない。ただ、我々にとってあの御方は、神に等しい存在だからな」

 

 神。


 そう言われると、なんだか緊張してしまう。


 その人が、クロノス様みたいに可愛ければなんの問題もないのだが。


「何百年――もしかしたなら、何千年も生きたあの御方は――まさにこの国の生き証人であり、この国の母のような存在だ」

「しかしあの御方はいつだって、肝心なことは何も教えてくれぬのじゃ」


 と、婆やさんは不満げに呟いた。


「あの御方に対して、そのように言える婆やが末恐ろしいよ」


 そう言って、女王様は苦笑する。


「まぁ、話を戻すが――メリエーヌ様への謁見は早くても明日になるだろう。婆や、メリエーヌ様には一度お伺いを立ててくれ」

「分かり申した」


 お婆さんは、女王様に向かって頭を下げた。


「……姉様」


 話の流れが止まったあと――妹は、口を開く。


「姉様は――ここに残るつもりなんですか?」


 その言葉で、皆の視線が私へと集まった。

 

 一瞬、言葉が詰まる。

 

 どうしたいか? それを――先ほどから、考えてはいた。


 私はお母様も、妹も大好きだ。だからずっと一緒に居たい。

 でも、赤い髪で産まれるのが当たり前の家で、私だけが黒い髪で産まれ、勝手に疎外感を感じていた。


 歴史ある家に産まれたのに、努力することを放棄した。努力して、自分の限界を知ることが怖かった。親類の――私を嘲る姿が、なかなか消えてくれない。

 

 外へ出ると、私は後ろ指を指された気分となる。

 いつも息苦しかった。他人の目が怖かった。だから、殆ど外にでなくなった。


 そしてお母様も、私を過保護に、大事に、籠の中に入れ、見守った。

 

 そんなの、このままじゃだめなんだって――そんなこと、ちゃんと分かってた。だから、切っ掛けを貰えるのなら、私は――。


「ここに残りたいと、そう思う。ここで、私は変わりたい」

「私……私も、ここへ残りたい。外に出てみたい。姉様と、一緒なら」


 う、嬉しいこと言ってくれるでないか!

 

「ラウラ、娘達はこう言っておるが?」


 お母様は少し、思案した後――私達の方へと近寄ってくる。


「辛いことが待っているとしても、あなた達は行くの?」

 

 私は、少しだけ迷う。


 この決断は、本当に今の私のもの?

 

 妹が――私の手を握る。


 少し、震えていた。


 それは一体、どちらのものなのか。

 

「……行くよ。だって、私達はお母様の娘だもの」


 震えながら、涙しながらも、前に進んだあなたの背中を――私たちは見てきたんだから。

 

 お母様は、寂し気に笑う。


「そう、あなた達はもう――あの頃とは違うのね」

「で、どーするのだ? ラウラよ」

「陛下、レナだけでなく、ラナもよろしいでしょうか?」

「ラウラの願いを、私が断るわけがないだろう?」

「ありがとう御座います。ただ、ラナはしばらくだけよ。しばらくしたら、戻ってきて貰うわ。あなたは、ブロード家の当主とならなければならないのだから」

「分かっています、お母様。これ以上我儘はいいません」

「そう――なら、いいのだけれど」

「レナ、ラナ、今は外の世界を知り、自分を知れ。自分の肩にあるものを考えるのは、その後ですることだ」


 女王様は優しげに笑う。


「それと、2人がこの王国にいる間は、私の娘――アリシアに護衛をさせる。まだ年若いが、剣と魔法どちも天才だ。色々教わるといい」


 え?


 姫様と視線が会うと、彼女は微笑む。


 えぇ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ